〜*第5話-13*〜
声がした方に顔を向けると、可愛らしい婦人と一緒に兄が居た。
…誰かしら。会った事はないよね?身なりは平民に見えるけれど、本当可愛らしい方ね。ショートカットが良く似合っている。
「楽しそうに会話が弾んでいたようだけれど、逢引き中だったかい」
兄と一緒に居る女性に気を取られていて、気付くのが遅れたが、笑みを浮かべているがどこかトゲトゲしている気がする。
ロナルドと一緒に居る事が気に食わない…のかな。今までの私に対する態度の他に、2人は幼い頃から仲がよろしくないものね。
「ふふふ、面白いご冗談を。学友としてお話をしていただけですわ。お兄様こそ、そちらの素敵な女性とデートですか?それでしたら、家族でも話しかけるのは無粋ですわ」
兄は女性関係は奔放だが、令嬢がそれでも途絶えないのは、権力や貴族とのしての学、異性を楽しませる話術も勿論だが、1番はきっとこの顔面よね。
こんなに綺麗な顔から、素敵な声で甘い言葉を言われたら抗えないもの。
私にはただのブラコンにしか思えないのだけど。
「いやぁ、美しい女性には声を掛けないと失礼だからな。先ほど出会ったのだけれど、散歩に付き合って貰ったのだよ」
優しく手を握られた女性は頬を赤く染め照れている。猫かぶり中の兄は本当に最高の紳士だけれど、女性の敵と言ってもいいと思う。
「全く…。ご婦人、兄の相手をして下さり感謝致します。何かあれば逃げて下さいね」
その言葉にわざとらしく肩をすくめ「私はそんなに信用がないのか」と言っている兄を無視し、殿下に視線を向ける。するとバチっと視線が合う。
「エリック殿との話は大丈夫なのか?」
「はい。もう大丈夫です。本日はお付き合い頂きありがとうございました。ロナルド様もゆっくり休まれて下さい。…お休みなさい」
「あぁ、おやすみ。アメリア嬢。また明日昼食時に会おう」
自然な流れで、手の甲に口づけをすると馬車に乗り込みその場を去っていく殿下の馬車を見送る。
ふぅ…なんだかとても疲れたわ。
口づけをされた手を握り締め、私も自身の手配した馬車に乗り込み、扉が閉まる前に兄に声を掛けようとするとすると、「直ぐにだしてくれ」と御者に伝えながら、私の後ろから乗り込んでくる。
「え、ちょっと、え?」窓に視線を向けると、兄と一緒に居た女性は頭を下げ見送っている。
困惑しながら兄に視線を向けると、腕と足を組んで俯きこちらを見ない。明らかに不機嫌な様子。
…どうして怒っているのかしら。デートの邪魔をしたから?確かに妹に見られたくないよね。
「あの、相手の方はよろしいのですか?夜も深くなりますし危ないのでは」
王都が近く、他の場所に比べ治安が良いとはいえ、女性1人でいるなんて危ないと思うのだけど。
「心配しなくてもいい。彼女は弟があの劇場で働いており、迎えに行くのをエスコートしただけだ」
あぁ、そういう事だったのね。確かに兄が女性1人残すわけないか。
「そうですか…良かったです」
ホッとして背もたれに背を預け外に視線を向ける。疲れからか、若干眠くなってきた。
明日は…サーシャとあの子の身辺調査の続きをする予定だ。
今寝るときっと起きれなくなるわね。意識が飛ばないようにしないと。
眠気覚ましに兄に声を掛けたいが、無視をされないかしら。
「あのー、お兄様?」意を決して声を掛けると「なんだ」と簡単だが返事が返ってきた。
良かった。無視されなかった。
「何か怒ってますか?」
「…どうしてそう思う」
「だって私の方みてくれないですし、冷たいですもの。…何か私しましたか?」
拗れたくなくて直球に聞くと、はぁとため息をつき、漸くこちらに視線を向けてくれた。
「別に、婚約破棄をしたい。と豪語していたのに、最近は王太子と仲良くしているようだからな。今日だって他者からみれば、仲睦まじい姿だった。勘違いされても仕方がないぞ。何か噂話をされて困るのはお前自身だというのに。ただでさえ家から出て監視の目が届きにくくなったというのに…」と次々と口を開く。
心配な気持ちと、寮生活にまだ納得いっていないから、鬱憤が溜まっていたのね。
剣術の指導と、公爵家の仕事と、マスターとしての部下の指導に、私の心配と…、兄の仕事量を考えると申し訳なくなってきた。
「お兄様…その、ごめんなさい。殿下とは友人?のような関係になってきたけど、もう婚約者としては居れないという話等をしていたんです」
と本日のいきさつを説明するも、納得はしていないようだ。
今回の更新で書き溜めした分の最後になります。
次回更新は未定ですが、10月中頃には1度更新したいと考えています。
時間をみつけて、もう少し早めに更新するかもしれませんが…
お待ちいただけると幸いです_(._.)_☆
緑茶




