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死にたがりな悪役令嬢  作者: 緑茶
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〜*第5話-12*〜

震える声、手から彼の感情が伝わってくる。『すまない、俺は君を愛しているんだ』って。

感情が高鳴ると、一人称が変わるのも相変わらずだ。


「俺がエリック殿に嫉妬し、幼稚な行動をした事等、色々積み重なって君を傷つけた。だから捨てられても文句は言えない立場だと分かってはいる。だけど、俺…私はアメリア嬢を手離せない」


演技だとは思えない。本心から言ってくれているのだろう。

跪いて冀うように、それはまるで神に懺悔しているかのような。私の両手を自身の額に当てている、この人のこんな姿を誰が想像できただろうか。


「…殿下。私は先ほどの言葉を撤回する気はございません。申し訳ありません」


いつの間にこんなにも、私を想ってくれていたのだろうか。

『そうか、正直に話してくれてありがとう』と弱々しい笑みを浮かべて立ち上がる。

どうしたら正解だったのか。私の選択は間違ってはいない?

この数カ月、この人の人柄に触れて嫌いなままではいられなくなった。しかしそれはこの人と未来を共にするという意味ではない。


殿下とあの子が付き合って、結婚してくれればこの罪悪感も薄れるかな。

でも不幸にしたいとは思ってはいないから、あの子の裏の顔を徹底的に調べ上げて問題がないかだけは、私がしてあげたいと思う。


◇◇◇


こうなる事も予想して、私は別の馬車を手配していたため、馬車に乗り込む殿下を見送る。


「最後までエスコートはさせて欲しかったのだが。君はぬかりないな」

呆れたような、寂しいような顔を浮かべられて、良心がグサリと痛む。

きっと今は何を言っても傷つけてしまう。謝罪をして頭を下げていると、優しい手付きで頬に触れて、顔を上げさせられた。


「少し冷えているな。寮に帰ったらゆっくり休むと良い」

私が泣いたら駄目なのに。酷い事をしたのに、傷つけたのに。どうして優しく出来るの。

グッと言葉が詰まり、泣かないように目に力を入れる。


「こんな事するのも、君を困らせるんだろうな」

頬から温もりが離れたと思ったら、身体を抱き寄せられ頭がパニックを起こす。


「悪いね、アメリア嬢。私は諦めが悪いんだ。…だから泣かないでくれ。私は大丈夫だから。友人の1人として思ってくれてもいい。私はその間にアプローチを継続するから。婚約破棄の話は、ダンスパーティーが落ち着いてから・・また話をしよう」

殿下の爽やかな香と温もりが私を包み、穏やかな声が耳に届く。

最初は嫌いだったのに、今では随分慣れ親しんだ香だ。触れられる事すら嫌悪感があったのに。


「私は泣いていません」

とん、と胸を押すとすんなりと離れる温もり。この人はあの日以来本当に私が嫌がる事はしない。

私の感情を最優先してくれる。この国の全てを手に入れている王太子とは思えないわね。


「本当…諦めが悪いですね。でん…ロナルド様」

いつぶりか分からないが名前を呼ぶ。友人としてなら付き合いたいとは思うから。

こういう事を考えるのも、ズルいのかしらね。


「……」

あまりの無反応ぶりに怖くなり、殿下の顔を覗きこむと顔を真っ赤にしていた。

え?顔を真っ赤にする要素がどこにあったのか分からないだけど。


「君は私を翻弄するのが本当にうまいな。…名前は二度とプライベートでは呼んでくれないと思っていたのに。諦めさせたいのか、諦めさせたくないのか分からないぞ。私以外の人間には」

ー以前名前を呼んで欲しいと言っていたから呼んだのに。それだけでこんなに動揺するなんて。

顔を赤くして、チクチクと小言を言うロナルドが面白くて、つい笑ってしまう。

でもロナルドのおかげで、あの冷え切った空気が無くなった気がする。


「楽しそうだな。アメリア」

そんな呑気な事を考えていると、少し冷めた、聞き慣れた声が私を呼んだ。

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