〜*第5話-11*〜
それから彼女は、公爵家の令嬢にも関わらず横暴な公爵令嬢等と陰口を言われるようになっていた。
元々の美貌から、地位のある令息等から好意を寄せられる事も多かったが、陰口の影響か言い寄られる事は監視をしていた限り、あまりなかったように思う。
あったとしても彼女の知らない内に、俺かあの男が対処していたが。
彼女は私を好いてくれている。私が何をしても彼女は側にいてくれる存在だ。
そんな傲慢な気持ちが心を支配していった。
◇◇◇
それから数年後、突如あの日を迎えた。
「殿下が以前より仰っていた、婚約破棄の件ですけれど。私も同意致しますわ。婚約破棄致しましょう」と、冷めきった表情で別れを告げて来た。
気持ちを試すような行為をしていた事を、婚約破棄をしたいと捉えてしまったのか。
別れる気など毛頭ないというのに。
今後、義兄になる予定の男の存在に嫉妬し今までの行動がこの結果だ。
今更後悔をしたところで、手遅れなのは分かっている。それでもなんとか君を繋ぎ止めたい。
無責任だと、身勝手だと、そう言われたとしても・・。
やり直す時間を与えてくれて、一緒に過ごす中で少しだけ柔らかい表情を浮かべてくれる事も増えてきた気がする。そんな時、彼女が襲われて倒れたと知らされた。
時間が許す限り見舞いに行ったが、会う事は公爵閣下とあの男が許してくれる筈もなく。
それでも良かった。彼女が生きていてくれるだけで安心していた。
数日後意識が戻ったと知らせを受けて、本当は直ぐにでも駆け付けたかったが、出来なかった為会えるのが本当に楽しみだった。
会えただけで嬉しかったが、観劇に誘って本当に来てくれるとは思ってもいなかった。
本当に嬉しくて、準備をする際側近に呆れられてしまった程だ。
時間をかければ許して貰えるかと勘違いするほど、2人の間には穏やかな時間が流れていたと思う。
だが現実は甘くなかった。今度は私から婚約破棄をするように頼まれてしまった。
そんなこと俺がするはずがないと分かっているだろうに。
『すまない、俺は君を愛しているんだ』
神に願うかのように、彼女の手を握り済め自身の額に彼女の手を当てる。
あぁ、本当になんて無駄な時間を過ごしてしまったのか。
後悔の波が押し寄せるが、時間は戻らない。
アメリア嬢。俺は君以外は何も要らない。だから、どうか・・どうか
いくらでも罵ってくれてもいい。お前のせいだと。お前なんか嫌いだと。
心の奥底の感情まで暴いて、その先に俺と一緒に居ても良いと少しでも思ってくれるのならば、俺はこの世で一番の幸福者だ。




