〜*第1話-6*〜
ダイニングルームに入ると、公爵家当主の
ライアン・アルベルティとその妻ダリア・アルベルティが既に座って待っていた。
「おはよう。我が子供達よ」
「3人で来たのね。おはよう、エリック、アメリア、アベル」
優しい空気に包まれ、記憶を取り戻してからザワついていた心が安らぐ。
ーあぁ、本当にこの家族は幸せの象徴だ。
「おはようございます、お父様、お母様」
*****
朝食を済ませた後、気になっていたとばかりにライアンが話しかけてきた。
「その、なんだ。今日のアメリアはいつもと雰囲気が違うな…?何かあったのか??」
紅茶を飲む手を止め、うーん、と考え込む。
正直に伝えてみる?昔の記憶が戻ったから、変わったように見えるのよ!
ーいやいや、こんな事言って信じて貰えるわけないし。どこかおかしくなったと思われるわよね
左右に首を振り、その考えを払拭する。
「…別に。なにもないですわ。心配かけてごめんなさい。お父様」
この話題を避けるように微笑み、手に持つ紅茶のカップの縁をなぞりながら訂正する。
「あ、ただそうですわね。報告しておきたい事があるんですの」
そう言って視線を上げると、ここに居る全員が皆一瞬固まっていたようにハッと我に返った。
ーーどうしたのかしら
「なんだ?やっぱりなにかあったのか?」
慌てたようなお父様
「アメリア…私に出来ることがあれば言いなさい」
真剣なお兄様
「お姉様…どうかしたの?」
オロオロとする可愛い弟アベル
「あらあら、家の男達ときたら」
そんな光景をみて笑うお母様
周りの使用人達も何事かと、心配そうにしている
あんなに横柄な態度を取られても心配してくれるなんて。本当に優しいのね。
「ふふっ、そんな心配しないで。ただアルベルティ公爵家には悪い話かもしれないのだけれど…。私はロナルド・エクスタリア殿下との婚約破棄をしたいの」
私が言った言葉に、全員が目を見開く。
それはそうだ…あんなにもロナルド一筋だったのだから。婚約破棄なんて有り得ない話だ。
「何か…殿下とあったのか?」
心配そうに口を開いたのは、お父様だ。
「いいえ…ただ私が疲れてしまったの。王室として生きるのも良くよく考えたら、制限されていい事なんてない。家族と離れるなんてもっと嫌。それに…もう殿下を愛せそうにないの」
ーー仮に結婚しても信用なんて出来ないし。胃に穴が出来そうだし
ちょっと未来を想像しただけで、ゾッとする。
無理無理…そんなのさっさと死んだ方がマシ。
なによりも、今はこの家族を守る事が第一!
二度とあんな仕打ち受けさせる訳にはいかない。