〜*第5話-10*〜
これはきっと罰なのだ。あの子が私から離れて行ってしまったのは。
◇◇◇
私は、彼女を一目見た瞬間から惚れたというのに。ふわふわとした可愛い子。
この子が僕の愛しい妃になるんだ。と幼いながらに思った。
運命の出会いから、成長するにつれて彼女には妃教育が始まった。これからの為に必要な事だと割り切って、勉強や作法、その他にも妃になる為には、毎日厳しい時間を過ごしていた。
それでも、私と同じ気持ちでいてくれているものだと思っていたのだが、
顔合わせが出来た日は、暗い表情を浮かべる事も多くなっており、
「大丈夫か。疲れた顔をしているようだが」
「申し訳ありません。大丈夫です」
その言葉を鵜呑みにして、言い訳にはなるが私は私で忙しくしており、彼女を気がけてあげる事が出来ていなかった。
日に日に、張り付けられた完璧な笑顔。作法
幼い頃私が愛おしいと思った無邪気な笑顔は見る事が無くなった。
私も、執務や国交の場以外でも兼ねてより行っていた、剣術の大会には出来る限り出場していた。
そこには、彼女の兄が毎回同じように出場し、決勝で戦うも私は全敗していた。
「くそっ!どうしてあいつに勝てないんだ。」
手に持つ剣を床に叩きつける。毎回毎回負けてしまう自分が情けなくて、自分の好きな子の兄…公爵家嫡男の俺をみるあの冷めた眼差しの男が不愉快で憎くてたまらない。
「お疲れさまでした。ロナルド様。とても素敵でしたわ」
笑みを張り付けて差し出されるタオル。俺を応援していたのか?本当はあいつを応援していたのではないか。本当は何を思っているんだ。
出会った頃は4歳だったが、もう8歳の女の子になっている。
8歳にしては周りの子供よりも落ち着きがあり、まるで大人のような振る舞いをする事も多々ある。
妃教育が原因か、元々がこんな性格なのか。
俺が3歳年上だというのに、まるで自分のほうが幼子のような錯覚に陥る時もあった。
兄妹で並んで居る姿をみると、劣等感にさいなまれてしまう。
傷つけたくないのに、大事に大事に思っているのに、思ってもいない言葉が溢れる。
「笑いに来たのか。こんなみっともない俺を」
「そのようなことはありません。みっともないなんて思っておりませんわ。殿下」
悪態をつかれても、表情1つ崩さない。
それが悔しくて、みっともなくて『可愛げのない、お前とはやっていけない』と酷い言葉を浴びせてしまった。
◇◇◇
あの日以来、国王陛下に他にも妃候補を募って貰い、彼女の他に3人の令嬢が婚約者候補として王宮に集まったが、そのいずれも半年と立たず妃教育から逃げ出した。
それほど過酷な事をこなしている、彼女を尊敬はするものの、変なプライドが邪魔をしてあの日以来彼女を避けていた。
そんなある日、彼女が高熱を出し倒れたと聞いた。
心配にはなったが、言い訳をして見舞いの品を贈ることしかしなかった。
それから1ヶ月後久々に会った際、本当にビックリしたのだ。綺麗な所作はそのままだったが、私に近づくご令嬢達に嫉妬を露わにしたり、他に従者達にも今までは考えられなかったが、横暴な振る舞いをするようになっていた。
あの日から一体何が彼女を変えたというのだろうか。
もしかして、彼女を傷つけた私のせいなのか。
最初は戸惑いこそしたが、その状況にも徐々になれ、それに伴い彼女が嫉妬する姿をみたくて、他のご令嬢達と仲睦まじい姿をみせつけるようになった。




