〜*第5話-7*〜
それからは、マグノリア嬢と極力接触しないように過ごす。
そして、ハリソンが庭園に来ることも少なくなった。代わりに来る年配の方に聞いても、忙しくしており来れない。とだけ言われるし。
あの日から、会う事が出来ていないから少し心配になってしまう。
「アメリア嬢、何か気になる事でもあるのだろうか」
ぼんやりと昼食を食べていると、殿下が心配そうに声を掛けられる。
…最近はこの人と食べる食事も当たり前になってきたな。
「いえ、特に問題はありません。ご心配ありがとうございます」
慌ててランチを口に運ぶ。チラリと殿下に視線を送れば疑いの目を向けられている。
「そうか…?ならいいが。ちなみに、本日の夜は空いているだろうか」
「えぇ、空いていますが……え??」
あまりにもサラッと夜の予定を聞かれた物だから、正直に答えてしまった。
勢い良く顔を上げると、してやったりと言わんばかりの笑顔を浮かべている。
「ではこの劇を一緒に観に行ってもらえないか?」
手渡されたのは、今令嬢に人気の恋愛劇のチケット。
リーリエ嬢達も観に行ったと言っていたわね。とても楽しかったと言っていたけど。
「私より他のご令嬢を誘われてはいかがですか?最近仲良くなっているご令嬢がいると噂話がありますよ。私と行くよりその方と行かれた方が楽しめるのでは」
それに恋愛劇には興味がないしね。チケットを殿下の方向に向かい返す。
「・・それは、妬いてくれているということだろうか?」
「はい??」
一体どんな勘違いをしているのだろうか。自分が放った言葉を反復すると、確かに受け取り方によっては勘違いしてしまう可能性もある?
いやいやいや、私が貴方とどうこうなりたいと思っていないの分かっている筈なのに、どうしてそんな勘違いをすることが出来るのか。
「何を仰られているのか分かりかねますが、私が申し上げたいのは殿下のお気に入りの、好いているご令嬢と行かれてはいかがですか?というお話です」
そう伝えると、顎に手を当て考えこむポーズをしたかと思うと
「であれば当てはまるのは君だし、私は君と一緒に行きたいのだが。申し訳ないが他のご令嬢とは一緒に行きたいとは思わない。」
思ってもみなかった言葉に息を飲む。何も言えずに固まっていると困ったように笑みを浮かべ
「すまない、困らせてしまったな。…でもアメリア嬢には勘違いしないで欲しい。君はどうも思わないと分かっているが、噂話は噂話だ。私の婚約者は君だけだ。これは変わらない」
マグノリア嬢と仲良くなっているとばかり思っていたのに。
「嫌われているのは分かっている。だが…すまない。私は君を手放す事が出来ない」
真剣な表情をし、心を読まなくてもこれは嘘ではないと分かる。
確かに最近は殿下と過ごす時間が増えたとは思っていたけど。まさか、そんな風に想ってくれていたなんて。
「ッッ、私は…申し訳ありません。なんとお答えしていいのか分かりません」
殿下から視線を外し何も言えなくなってしまう。
「もう1度私との未来を考えて欲しい…アプローチする機会をくれないだろうか」
殿下に差し戻したチケットを手に取り、再度手渡される。
そんな言って裏切られたら、そんな邪推をしてこの人を信じる事が出来ない。
それより、怪しいがマグノリア嬢とお付き合いしてくれた方が安心できるのに。
でもそんな事を言ったら、選択を間違えた事になるのだろう。
「ゆっくり考えてくれて構わない。劇も全公演分抑えているから、気が変わったら言って欲しい。気長に待っているから」
え?当たり前のように全公演抑えてるって言った?……この金持ちめ。
だったら先延ばしするほど、期待をさせてしまうだけかな。
「分かりました。…本日の夜同行させて頂きます」
劇の後私の気持ちを正直に話してみよう。
この人を傷つけてしまうかもしれないけど、アルベルティ公爵家の為にも。早く私から興味を無くしてくれた方が早く目的を達成出来る筈だ。




