〜*第1話-5*〜
ダイニングルームに向かう途中、「お姉様!」と可愛い声が後ろから呼び止める。
振り向くとあの光景とは違う、私と同じ薄ピンク色をした髪を揺らし、可愛い笑顔を浮かべた弟が駆け寄って来る。
「アベル!おはよう」
生きていると分かっていたけれど、本当に生きてくれていて良かった。
ギュッと抱きしめ、生きているんだと実感する
「…」
身体を離すとモジモジとするアベル。
どうしたのかしら、とても可愛いけれど
「お姉様...いつもみたいに頬っぺにキスしてくれないのですか??」
んっ!!なんなのこの小悪魔な8歳児は!!
可愛い…心臓を射抜かれてしまった。
心の中でキャーキャー騒ぎながら、平然を装いながら可愛い弟の頬にキスをする。
「えへ、おはよう!お姉様」
ニコニコと天使の笑みを浮かべるアベルに、癒しを感じていると
「おーおー、朝から楽しそうだね」とからかい混じりの声が聞こえる。
振り向くの、艶のある綺麗な銀色の髪をした兄が近寄ってくる。
…本当にこの一族は美形ぞろいね。こんな色気を放つ20歳なんて知らないわよ。
でも、エリックも元気そうで一安心だ。
「私にも是非、アベルと同じようにして欲しい物だ」
ーあぁ。そうか。この家では朝はキスをするのか
記憶がまだ完璧に思い出せていないのかもしれない
ふふっとつい笑みが溢れる。兄だけれど本来の私よりは年下の子にお願いされ、つい可愛く感じてしまう
「おはようございます、エリックお兄様」
そっと頬を包み込み、アベルとは違い背伸びをしてエリックを引き寄せ、額に口付ける。
「……っ!?」
頬から手を離すと、パクパクと口を動かす兄。
…え?あ、額じゃ嫌だったのかな
「ごめんなさいお兄様。頬がよかったかしら」
「違う!そこじゃない!!」
間髪入れず否定されてしまった。
…なんなんだ。希望されたからしただけなのに
顔を真っ赤にして怒っているようにみえる
「お兄様が希望したんじゃないですか」
ムッとして伝えると、盛大なため息をつかれる
「いや、もうよい。アメリア…お願いされたからって、誰にでもするんじゃないぞ。家族だけだぞ」
…家族以外にだれがするのよ。
ぶつぶつと文句を言うエリックに続き、アベルと手を繋いでダイニングルームに向かう。