〜*第4話-11*〜
馬車に揺られる中、一行に心臓が落ち着く事はない。
リリィが心配そうにこちらを見ているのが分かるが、気に掛ける余裕がない。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。
このまま家に帰ったらまた何か言われるかな。
外に目を向けると、丁度街中に来たようだ。気分転換にお土産を買おうか。
「リリィ。ちょっと買い物をして行きましょう。止めて貰える」
「はい!すぐに」
機敏な動きで御者に声を掛け止めさせた。外の空気を吸えば落ち着くかと思ったが、焦燥感が拭えずフラフラと街中を散策し、お土産を選ぶ。
使用人が多いから、沢山入ったお菓子とかが無難だろうか。
「ねぇリリィ、家族と使用人達へのお土産はお菓子でいいかしら」
「え!?私達にもですか!?」
「え!?そうだけど、駄目だった?」
もしかして迷惑だったのかな。侍女の仕事も忙しいよね。
気分転換に付き合わせて申し訳ないな。
「ごめんね、付き合ってもらって」
「あ、そういった意味ではないのです。申し訳ございません。ご体調悪そうでしたので、つい心配になってしまいまして。とても嬉しいです」
慌てて否定され少し安心した。心配を掛けてただけか。
リリィにアドバイスを貰いながら、お土産も無事買うことができた。
散策し過ぎたせいか、日が傾きかけている。
遅くなりすぎると心配を掛けてしまうわね。早く帰らないと。
「リリィ、そろそろ…」
後ろに居るリリィに声を掛けるため、振り返ると背後の景色に目を奪われる。
フラフラとフードを被った男が人にぶつかりながら、歩いている
「痛っ」「何なんだ」と声が上がっているが、異様な雰囲気に誰もその人物に声を掛ける事が出来ずに居た。
…あれは一体何なんだろうか。男の周りを黒い霧が回りを覆っている?
とても嫌な予感がする。急いで離れないと。
「リリィ、行きましょう」手を掴み急いでその場を離れようとした瞬間に、男が異様な速さでこちらに向かって走って来た。
良く良くみると、手には今まで持って居なかった刃物が握られている。
それに気付いたのか、周りから悲鳴が上がっている。明らかにこちらを狙っている。
その騒がしさにリリィも気付いたのか、振り返ると状況を把握し小さく悲鳴を上げるが「お嬢様、急いでお逃げ下さい」と私をドンっと押すと、守るように前に立ち塞がる。
もう守られるだけなんて嫌だ。リリィだけでも守らないと。
「リリィ!!駄目よ!!貴女が逃げなさい」
「そんな訳にはいきません!私はお嬢様の侍女です。私が盾になりますのでお逃げ下さい!!」
もう私の目の前で誰も失いたくない。私は死んでも良いから守る力を私に。
そう願った瞬間『思い出せ・・我が力を』と突然声が頭に響いたかと思うと、今まで感じた事の無い頭痛が襲う。
『呼びなさい、我が名は』
痛い…目眩で今にも倒れてしまいそうだ。
「サーシャ!私に力を貸しなさい!あの者を払いのけて。エアロ・ブラスト!」
そう言いながらリリィの腕を掴み守るように抱きしめると、身体から光が溢れだし突然強力な突風吹き荒れ男だけを吹き飛ばす。
少し呆然とした後、我に返り腕の中に居るリリィに声を掛ける。
「リリィ。大丈夫!?」
顔を除きこむと、堪えているが涙が溜まっている。
怖い思いをさせてしまった。私が買い物に寄らなければこんな事にならなかったのに。
「ごめんね、怖い思いをさせてしまったわね」
「そんな事どうでも良いです!・・どうして逃げなかったんですか!!私なんかどうでも良いんです。貴女は、アルベルティ家唯一の公爵令嬢なんですよ!こんな侍女の命なんかと比べ物にならないんです!」
ガシッと腕を掴まれながら説教をされるも、リリィが怒っている姿を見たことなくて少し感動しつつ、あぁ…守れたんだ。と安心したら力が抜ける。
『なぁ、さっきの風は何だったんだ!?』『あの子がやったのか!?』『あれは、アルベルティ家の公爵令嬢ではないか?』
ザワザワと騒がしい中、そんな声も聞こえ始める。まずい。早くこの場を離れなければいけない。
警備隊が到着したのを見届けた後、急いで馬車に戻る。
「お嬢様・・先ほどは取り乱してしまい申し訳ありませんでした」
馬車の中でリリィが落ち込んだ様子で謝ってくるが、それどころではない。どうしたものか…どんどんと体調が悪くなってきた。
家までバレないようにしないと。
「気にしないで、貴女が無事で本当に良かった」
あぁ、でも我慢できないかもしれない・・。
「お嬢さま・・先ほどの風はお嬢様がされたんですか?」
「……それは、」
否定しようとしたが、声は続かず意識が混濁する。
そして、リリィが何か叫んだのを最後に意識が途切れた。




