〜*第4話-7*〜
「・・はぁ、疲れたぁ」
帰宅後着替えを済ませベッドに身体を沈める。ハリソンの事が気がかりだし、あの後お兄様にハリソンとの事も聞かれるし。しかも・・怒っていないと言っていたが、確実に怒っていた。
いや、怒っているというより拗ねているような感じだった気がする。
このまま眠ってしまおうかな・・。ウトウトしているとお茶会の事を思い出し、重い身体を起こしてリリィを自室に呼ぶ。
「お嬢様、いかがいたしました?」
「私明後日何か予定入っていたかしら?」
「いえ、特に予定はございません」
「そう・・分かったわ。ちょっとそこで待っててくれる」
テーブルに向かい閉まっていた便箋を取り出し、リーリエ嬢返事を書く事にした。
予定も入っていないし、断るのも悪いしね。
返事をサラサラと書き上げ、封を閉じリリィに手渡す。
「明日中にボルジーア子爵家の、リーリエ嬢に返事を持って行ってくれるかしら」
「かしこまりました。すぐに手配致します」
お礼を言って再度ベッドに倒れこむ。考える事がありすぎて何から手を付ければ良いのか。
殿下は、マグノリア嬢とうまくいくようにしないといけないし
ハリソンは・・言ってくれそうな感じはしない。自分で調べるしかないだろう
なにより、あの夢の言葉がどうにもつっかえている。
裏切り者がいる。ってどういうこと。思い出せていない記憶でもあるのか。
これは、自分で調べるしかないのだろう。
しかし、そんな事出来る人物を私は知らない。
アルベルティ家が収める領地に、今度調査に行ってみようか。
何か分かる事があるかもしれない。
「全く・・。疲れるわ」
意識がどんどん遠くなり、深い闇が訪れる。
意識が遠のく直前、誰かの声が頭に響く。
”ゆっくりおやすみ、愛しい子”子供が眠る前のおまじないの言葉だ。子供の頃母が眠る時毎日言ってくれていた。
・・いつまでも子供扱いをするんだから。優しい声と手の温もりに包まれながら意識を手放した。
◇◇◇
「んー・・」
ふと意識を戻すと、部屋の中は真っ暗だった。
ーどれくらい眠っていたのだろうか。
寝すぎたからか頭痛もする。額を抑えながらベッドを下りて閉まっている小窓のカーテンを開き、外を確認すると夜空を綺麗な星が照らしている。
これは・・確実に寝過ごしたわ。
眠りに落ちる前に誰かの声がしたんだと思ったけど。誰だったかしら。
夕食の時間に侍女達は、呼びに来てくれなかったのだろうか。それとも、熟睡しすぎてて気付かなかった可能性もあるわね。
空腹は感じないけど、家族と食事をする時間は好きだったから残念だな。
小窓の前に設置されている、お気に入りのふかふかの大きめの1人用の椅子に脚を抱え座る。
ボーっと外を眺めながら、ふと湯浴みをしていない事を思い出した。入りたいけど1人で入ったら絶対変に思われるよね。
朝から湯浴みすれば良いかな。リリィにお願いしてみよう。
なんて事を綺麗な星空を眺めながら思っていると
「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける」
ふとこの詩が浮かんできた。
あぁ、七夕の日にあの人が言っていて、妙にこの詩は覚えていた。
・・霧が掛かったような状態は全く改善はないが、ズキズキと心臓が痛む。
恋しい・・会いたい・・切ない・・・
「貴方に会いたい。苦しい程に・・」
どうして、貴方の事を鮮明に思い出せないのだろう。こんなにも焦がれてるのに。




