〜*第4話-5*〜
あまりにも痛々しい姿に胸が締め付けられる。
何が彼をあんなに苦しめているんだろうか。そもそも相手は一体何者なのだろう。深くフードをかぶっているが、制服を着ているからこの学園に通っている事は間違いないんだろうけど。
仕方がない、ここは私が・・
意を決して動こうとした際、突然身体を引き寄せられる。
一瞬硬直してしまったが、ふわりと嗅ぎ慣れた香りがし、その人物に目を向ける。
「ビックリするじゃないですか。お兄様」
「ほう、どうして私だと分かったんだい」
いたずらっ子のような顔をして笑う兄。全く・・本当にビックリしたんだからね。
そう思いながら、隠れている事を思い出し兄の口を塞ぎ囁く位の声で話す。
「お兄様静かにして下さい。死角になっている場所で私の友人が揉めているんです。今から助けに行く所ですから邪魔をしないで下さい」
その言葉にピクリと眉を動かし、口を塞いでいた私の手を退かし握りしめる。
「どうして私が居るのにお前が行く必要がある。危険な事はしなくていい。」
・・公爵家の跡取りが行く方がダメでしょう。何かあればどうするつもりなのか
「それこそ駄目です。お兄様に何かあったらどうするんですか。私が見る限り生徒同士のようなので大丈夫です。私は大丈夫ですから、ここを離れて下さい」
私の手を握り締める兄の手をそっと解き、死角の戻りハリソンの様子を伺う、
彼の事が気がかりで、背後に居る兄の異変に気付けずにいた。
・・あれ?女生徒が居なくなっている?もしかして気付かれたのだろうか。
でもハリソンは座り込んだままだ。辺りを警戒しながらハリソンに駆け寄る。
「ハリソン、大丈夫?何かあったの?」
肩に触れるとビクッと身体が跳ねる。まるで怯えているようだ。
顔も真っ青になっており、いつもの穏やかなハリソンからは想像出来ない。
「大丈夫?気分が悪いの?」
何も知らないフリをして、背中を摩りながら俯く顔を覗き込む。
「、どうしてアメリア様がここにいらっしゃるんですか・・。今日は来られない筈では」
「えっと、、戻る前に花を見たくなって立ち寄ったのよ。そうしたら貴方が気分悪そうにしていたの。立ち寄って良かったわ。歩ける?医務室に行きましょう」
嘘と真実を織り交ぜて話すと、納得したのか「そうですか」と言って視線を私から外す。
「自分は大丈夫ですから、アメリア様は戻られて下さい。授業に間に合わなくなるかもしれませんよ」
そんな消え入りそうな声で、大丈夫と言われても信じられる訳がない。
「駄目よ。医務室までは付き添わせて、ね?ほら私に寄りかかって良いから」
体格差はあるが、立ち上がる補助くらいは出来るだろうと、ハリソンの腕を引きながら立ち上がろうとした所逆に腕を引かれ、バランスを崩し抱きしめられる形になる。
「どうして、、こんな俺の事を放っておいてくれないんだ、、」
苦しいくらいに抱きしめられ、困惑してしまう。一体どうしたっていうんだろうか。
それに、”こんな俺の事”って。頭の中は混乱するばかりだ。
混乱する中私が隠れていた所から足音が聞こえてきて、ハリソンもそれに気付いたのか私を開放する。
「申し訳ございません。・・取り乱してしまいした。失礼致します。」
まるで拒絶するかのように、足早に去っていく後ろ姿を見送る事しか出来なかった。




