〜*第1話-3*〜
ーNo side
部屋に入ってきた人物は、僅かに身体を硬直させた。
まだ朝日は登りきっておらず、僅かな明かりだけが薄暗い部屋を灯す。
その視線の先に、椅子の上で子供のように身体を小さくして、外に目を向ける人物から目が離せずにいた。
「アメリアお嬢様…??」
こんな朝早くにもう起きていらっしゃるなんて。
それに…顔は見えていないけれど、なんて悲しそうなお姿なのだろう。
普段は家の中でも我儘で、天真爛漫なお嬢様。
使用人達には横柄な態度を取られることがあっても、公爵家の皆様からは愛されていらっしゃる。
そんなお嬢様が私の呼び掛けにも反応がみられない
どこか調子でも悪くしていらっしゃるのか
途端に不安になり、少し近付き声をかけようとしたところで、勢いよくこちらに顔を向けられた
「あ…エミリー??」
私の存在を確認すると、お嬢様は体から力を抜き、ゆっくり椅子に寄りかかる。
「どうかしたの?まだ日が昇る前よ」
ふっと、顔に笑みを浮かべ柔らかく微笑む姿にまた身体が硬直する。
ーーなんて、美しい人なのだろう。
手を焼くことが多く、アメリアお嬢様が美しい事は理解していたが、つい横柄な態度に目がいっていた。
ただ、今日は普段とは違う。
こんなに美しく笑う方だったのだと、改めて知った
「エミリー?」
呼び掛けに我に返り、お辞儀を返す
「申し訳ございません。アメリアお嬢様。長期休暇が終わり、本日よりロータス学園に通われるため準備に参りました。」
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