〜*3話-10*〜
「悪いね。お前が嫌がっている訳じゃないなら、放置しようかと思ったが、嫌がっているように見えてね」
私だけに聞こえるように、耳元で囁かれゾクゾクッとしてしまう。この人、声も良いなんて反則よね。
「いいえ、ナイスタイミングでしたわ。お兄様」と平然を装いつつ、お礼を言って身体を離す。
殿下と向かい合うと、エリック兄様を睨んでいた。
「...王太子殿下?」
呼びかけると視線は私に移り、悲しそうな瞳で私を見つめる。
「もう...そなたの意思は変わらないのか?陛下もアルベルティ公爵家令嬢との、婚約破棄をそう簡単に許すとは思えないんだが」
...ん、まぁ、確かに。それを考えなかった訳じゃないんだけど。エクスタリア王家とアルベルティ公爵家の付き合いは長いからね。
「頼む...時間をくれないか?半年...私の誕生日を迎えるまでは、保留にしてくれないか?それまでは、さっきのような事もしない、友人としてでも良い。もう一度チャンスをくれないだろうか」
叱られた子供のように、普段はあんなにも堂々としている、殿下とは思えない。
参ったな...こんな姿を見せられたら断りにくい。
ーー 仕方ない。どうせ近々あの女が現れるはずだ。
それまで、我儘に付き合ってあげれば満足するだろう。
「分かりましたわ。殿下の誕生日まで保留という形に致しましょう。」
意思が弱いと言われても反論出来ない。いや、でもこれは1種の慈善活動よ。そう開き直っていると
嬉しそうな顔で近付いてきて、私の手を取り、手の甲に口付けをする。
「ありがとう。アメリア嬢。今日はこれで失礼する。...エリック殿にも迷惑をかけたな」
そう言って去っていく姿に思わずため息が漏れる。
張り詰めていた気が、一気に緩んでいく。
「.....父上から、陛下にも伝わっているかもしれないのに、今更保留にするなんて。何を考えているんだい?」
その声にギギギと機会の音が付くように、ゆっくりと後ろを振り向く。
「だって...あんな姿みせられたら断りにくくて」
呆れたような顔をするエリック兄様。
また迷惑をかけてしまうわね。
「ごめんなさい...エリック兄様。でも、本当に助かりましたわ。私の騎士様」
昔言われた...俺はお前だけの騎士でもあると。
それを思い出して、ご機嫌を取るために言うと、クシャりと頭を撫でられる。
「全く...都合の良い妹だ。分かったよ...なんとかしよう。私のお姫様の願いだからな。その変わり、何かあれば必ず私に言うように」
本当に私に甘々なんだから。多分、家族の誰よりも私に甘いわよね。この人
「はぁ、それにしても、どうしてあんなに執着されてしまったのかしら。今までこんな事無かったのに」
「...さぁ、どうしてだろうね」
少し低くなったのに声に気付き、視線を向けると、ロナルドが去って行った方向を、冷たい視線で睨む姿。
馬が合わない2人なのね...きっと。
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