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喋りたい

みなさんこんにちは。ウエストリンギアです。最近喋る練習を始めました。


いや、喋れることは喋れるんだよ?喃語なら。つまり「あー」とか「うー」とか「ばー」とか「あい」とかね。全部声帯を震わせてるだけだけどね。



でも赤ちゃんになって改めて思うこと。それは意思疎通の大切さ。

つまり言葉が通じることの重要性である!




皆一度は言葉が通じないことを、経験したことがあると思う。例えば、小学校でのALTの先生との英語の授業とかね。もちろん小さい頃から英語に触れている子はある程度理解できるだろうから、それ程苦労はしないのだろうけれど。



しかしこの、言葉が通じない、ということはとてももどかしい。

さらに私の場合、ほんの少し前までちゃんと喋ることができて、自分の意見を相手に伝えることが出来ていたのに、それが急にできなくなったのである。

伝わらないことが、余計にもどかしくてしょうがない。



だからこそ、私は喋る練習を始めたのである!!

もちろんお父様やお母様、お兄様達を驚かせるために内密にね。またハイハイのときやお歌のときのように、家族を驚かせたい。




……そう思っていたのに…………。


即効でバレた。リタルディーノお兄様に。何故?




ときは遡って数日前。私は側仕え達がお部屋の掃除をしている間、掃除の邪魔にならないように、自分のベッドにいた。

いつもはお昼寝の時間に掃除してくれているのだが、あいにくその日は全く眠くなかった。そこで前から考えていた、喋れるようになる練習を始めることにしたのだ。


私が考えるに、赤ちゃんは舌がうまく回らないので、さ行・た行・な行・ら行の発音は難しいと思う。逆にま行・ば行・ぱ行の唇も使う発音、そしてあ行の母音の発音は難しくないと思う。


ということで、その四つの行から練習を始めることにした。それはそれは何も考えずに、適当に声を出すところから。

私は生まれたときから真琴の記憶があったため、泣くことがあまりなかった。それ故、肺活量に少し心配があったので、喋って喋って肺活量も共につけるために適当に声を出していた。




そんなことを数日繰り返していると、何故か今日、リタルディーノお兄様に喋る練習をしていることをバレた。



「やぁリン。今日も練習しているのかい?」



なんて言って、ベッドに座っていた私に近づいて来た。

驚きすぎて声が出なかった私に、リタルディーノお兄様は、



「今まで静かだった子が、最近よく声を出していると聞いてね。もしかしたら喋る練習をしているのではないか、と思ったんだ」



と答える。



えっ、それだけで!?

どれだけ考察力が凄いのですか、お兄様……。

我が兄ながら少々怖いよ。



そんなことを考える私を他所に、リタルディーノお兄様は私のベッドに腰掛け、私を手招きした。ハイハイで近づくと、リタルディーノお兄様の膝の上に抱き上げられる。

最近よく思うのだけれど、皆私のこと膝の上によく置くよね。自分で言うのもあれだけれど、赤ちゃんのふわふわした抱き心地がいいのかな?





「さぁ、リン。私と一緒に練習しようか」



私の意識を引き戻すように、リタルディーノお兄様が声をかけてきた。


もうここまで確信を持たれているのなら、驚かそうとしても無駄だろう。


そう思い私は、リタルディーノお兄様の方を向いてコクリと頷く。私の反応を見たリタルディーノお兄様は、ニコリと微笑んだ。



「じゃあ、まずは一緒に歌って練習してみようか」



そう言ってリタルディーノお兄様が歌いだしたのは、この世界の神様についての歌。


創世神が造ったこの世界に時・重力・空間のそれぞれを司る神が生まれた。その後、火・水・風・土・雷・氷・光・闇・命・天のそれぞれを司る神が生まれる。しかし何千年もたったある日、創世神は長い長い眠りについてしまう。その創世神は未だ眠ったまま。それでも、創世神によっては生まれた他の神々は、今でもずっとずっと創世神の目覚めを待っている。


この歌はこの世界に生きる人ならば、必ず知っている神話の歌らしい。

喋る練習に私が大好きな歌を用いて、さらに勉強を混ぜてくるところに、リタルディーノお兄様の聡明さが伺える。


流石に初めて聞く曲をすぐには歌えないので、リタルディーノお兄様に三回ほど歌ってもらってから、一緒に歌い始める。

それ程難しい言い回しもなく、また、幼い子供が歌えるように作詞されているので、少し聞いただけでもある程度歌えるようになった。




それからおよそ一時間ほど、休憩を挟みながら歌い続けた。まだまだ舌は回っていないが、ある程度発音するときの口の形が出来てきている気がする。



「そろそろ終わりにしようか。だいぶ上手になったね」



微笑みながらリタルディーノお兄様は、頭を撫でてくれた。



「あいっ!」



私も両手を上げて、成長の喜びを精一杯表現する。

そんな私を見てクスッと笑ったリタルディーノお兄様は、私を膝の上からベットに移動させる。そして、私に目線を合わせながら



「本当に一日で随分上手になったね。喋れるようになったら一番に私の名前を言ってほしいな。……そうだな。リタルディーノだと難しいだろうから、リタお兄様と呼んでほしいな」



と要望を言い、さらりと私の頭を撫でて部屋を出ていった。


その時の私は訳がわからず、リタお兄様なら呼びやすいな、なんて考えていた。



そしてこれは後々気がついたのだが、リタお兄様が私の喋る練習を一緒にしたのは、最後の要望が理由だったのではないだろうか……。

お久しぶりです。

前話からかなり日数が経ってしまい、申し訳ございません。何とか今年中に投稿できました。

これからもこのように遅くなってしまうことが多々あると思いますが、楽しんで読んでいただけると幸いです。

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