赤ちゃん生活
暇ー!!!!
赤ちゃん、すっごく暇!!
ふぅ、失礼しました。
でもホントのことだもん!すっごく暇でしょうがない。
だって、赤ちゃんのすることって寝る、飲む、排せつするのほぼ3択じゃない。
せめて音楽もプラスして!!別に楽器じゃなくてもいいから!!鼻歌でもいいから!!
って思ってたら!!なんと、一番私の部屋に遊びに来てくれるシェルフィアードお兄様がお歌を歌ってくれた!!
いや、初めて歌ってくれたときは感動したよ。この世界にちゃんと音楽があるって思うと、それはもう泣けるほどよ。
おそらく私はシェルフィアードお兄様がお歌を歌ってくれたとき、それはもうすごくニコニコしてたと思う。なぜか側仕え達が頬を赤らめてたけど。
私の顔を見たお兄様が嬉しそうな顔をして、その日に3曲も歌ってくれて本当に幸せだったよ。
その日以来、毎日誰かが私の部屋に来てお歌を歌うようになった。
やっぱり一番多く来てくれるのは歳の近いシェルフィアードお兄様で、男の子だけど子供特有の高い声で沢山のお歌を歌ってくれる。シェルフィアードお兄様は今まで上の兄弟しかいなかったから、妹の私の存在が特に嬉しいらしい。私もシェルフィアードお兄様のお歌が大好きなのでとっても嬉しい。
あ、シェルフィアードお兄様自身のことも大好きだよ。
家族みんな大好きなのである。
もちろんリタルディーノお兄様の低い声のお歌も、ルイズバルトお兄様の力強い声のお歌も大好きである。お母様の綺麗な歌声もお父様のリタルディーノお兄様とは違う低い声のお歌も聴き惚れちゃうくらい大好きである。
結局家族みんなのお歌が大好きなのだ。
ある日、シェルフィアードお兄様のお歌に合わせて私も歌ってみた。何回も聴いた曲だったから覚えたのだ。ただ赤ちゃんだから、あうあう言っているようにしか聞こえなかっただろうけど…。
そしたらお兄様がびっくりして歌うのをやめてしまった。側仕え達もフリーズ状態になってしまって、どうすればいいのかわからず泣きそうになっていると、シェルフィアードお兄様が私の頭を撫でながらまた歌ってくれた。
この日を境になぜか一緒に歌うことを強要されることがしばしばあったよ。
どうでもいいことだがこの身体はちょっと困る。すぐに感情が表に出てしまうのだ。真琴のときは絶対に涙を見せるようなことがなかった場面でも、すぐに視界が歪んでしまう。これは中身が大人である私にとって結構辛いことなのである。
そんなことを続けてしばらく、誰も部屋に来てくれない時間があまりにも暇すぎて、私はハイハイの練習をすることにした。こちらの世界に来て約5ヶ月、そろそろいい思う。何かの本で読んだけど、赤ちゃんはだいたい6ヶ月からハイハイし始めるみたいだからね。それでも少し早いけれど。
なんだかんだ言って難しいのよ、これが。なにせ頭が重い、腕の筋肉がない、脚の筋肉もないのだから。もう一日目はすぐにぐったりして寝てしまった。赤ちゃん体力なさすぎ!!
二日目も一日目同様すぐにばてた。五日目くらいでようやく少し動けるようになった。十日目で私の円形ベッドの直径を往復できるようになった。十五日目でやっと円周が一度もこけずにはいはい出来るようになった。もともと歩けてた身としては長く辛い道であったよ…。
そうそう、少し動けるようになった頃、お父様とお母様が部屋に来たときにはいはいで近寄ってみたらすごく喜ばれた。抱き上げられてぎゅーって抱きしめられた。本音を言うのであれば少し痛かったよ…。
力の強さもあるけれど、お父様とお母様の服の装飾が痛いよ。
前にも言ったけど、私はかなり偉い地位の貴族の子供である。つまり両親もかなり偉い地位の貴族なのである。
これは偉さとか地位の高さとかの象徴なのだと思うけれど、お父様とお母様は豪奢で装飾がたくさんついた服を着ている。
もちろん綺麗な刺繍がしてあったり、薄い布を何枚も重ねていたり、鮮やかな色で模様が染められていたりするのだけれど、中には金具のようなものもある。
それらは多用されてなくても、どうしても前身にはよく使われていることが多い。
それがあたるとかなり痛いよ。
赤ちゃんの体はむちむちでぷにぷにだけど、皮膚はかたくないのである。
今は関係ないが、私も将来あれを着ないといけないと思うと少し憂鬱である。
…だって重そう…。
そりゃ、真琴のときは色々な楽器のコンサートに行ったり自分が出てたりしたから、ドレスとか着物とか着ていたけれども…。
それでもあんなに重ね着したり装飾をつけたりしなかったよ。
真琴でも滅多に着ることがなかったような服なのに、それが毎日だなんて。
はぁ…。
今のこの赤ちゃん向けの服をそのまま大きくしたのでいいよ。
この服もかわいいよ。レースでふりふりのひらひらだし、リボンも付いてるし。
無理なのはわかっているけども、やっぱり諦められないよ…。
話がそれてしまったけれど、あぁ、やっぱり早く歩けるようになりたいよ…。