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聖女は自分の家が欲しい




「家を建てるための土地、ありますか?」


城に戻ってそうそう、私は考えていた通りに魔王に話をし始める。


「えっ?」


……なんでそんなに悲しそうな顔するの?


「我、なにかしたか?」


えっ?何もしてないよ?


「我のところは嫌か?」


嫌なわけ無いじゃん。

ん?なんか話が噛み合わない……もしかして


「ここが嫌になったから逃げようと考えてるわけじゃないよ?」

「そう、なのか?」


逆にここ自体居心地は良いし。

ただの私の矜持。


「いつまでもここにいるわけにはいかないからね」

「そんなことないぞ?いつまでもいても」


………なんか寂しい。

けどね。


「それはね、魔王が良くても、周りがいい気分はしない。今の私はただの人間でしかない。それにこれは私の矜持なの。だから、ね?」


なんか懐かしいなぁ。この感じ。

小さな子供と別れるときとか、親しくなった人たちとの別れのときとか、よくこんな感じに話したんだよね。


「……確かに、そう、だな」


魔王も馬鹿じゃないし子供じゃない。

理屈も理由も全部理解している。

だからこそわからないんだろう。何をしたら良いのか。


「それにさ、もう私たちは友達なんだよ?いつでも会えるよ。それどころか毎日だって遊びに来てあげるよ?」


転移あるし。


「そうだな。友達………」


もしかして、魔王、初めての友達とか言う?

だとしたら今の気持ちとかよくわかってない?

そりゃ、難しいよね。


「わかった。今のことはできれば忘れてくれ」


さっきまでの悲しい気配はなくなり、いつもみたいな威厳のある雰囲気に戻った。


「えっと、土地だったな。どれくらいの広さがほしい?」

「えっと、そうだね……畑を作れる、鶏くらい飼える、ガーデニングができる、これくらいの広さかな」

「わかった。他に希望は?」


そうして私は土地の広さ、作りたいものを事細かく相談し、後日その土地の権利をもらえるということになった。


本当にいい人だよ。魔王様は。

けど、料金はしっかりと払わねば。


……と決めたのに


「あぁ、ここの権利はリーリアの給金から一部引いて購入するから金を払う必要はないぞ」


えっと………それならいいかな……あれ?待てよ給金の()()

一部でいいの?

土地って結構するよね?


安い土地なのかな?それとも……


「それと、給金は流石に量が多いから明日支払うぞ。期待して待っていろ」


それともの方でした。

私の給金が途方も無いという。



何はともあれ、土地の目処はたった。

今はそれについて喜ぼう。

うん。それがいい。


私はその日は特に何もすることがなかったため、極上のご飯を食べて湯船に浸かり、眠りについた。




翌日。


「これが、リーリアの給金だ」

「え、えぇ……」


私も見たことのないような金貨の量。

これだけで十年は普通に暮らせる。


「えっと、ここから土地代が引かれる、んだよね?」

「いんや、もう引かれている」


気が遠くなりそうだ。

こんな大金、どこから?

いや、そもそもこんなにもらってもいいのだろうか。


超がつくほどの大金を突然得てしまい、私は同様を隠しきれない。

始めてこんなにも自分のお金を得たのだ。仕方ないでしょ?


「えっと、もらってもいいんだよね?」


やっぱり聞かずにはいられない。

こんな量だよ?


「これはリーリアが働いた分のお金だ」

「こんなにもらえるだけ働いてなんか……」

「いるぞ?リーリア、貴女自身理解しているだろう?食料の大切さ。そしてそれを作り変えるということの凄さが」


……否定はしない。

作り変えることはいまいちぴんとこないけど。

けど、確かに食料難、それがなくなることを考えれば、この額は妥当なのかな?


「まぁ、全部は理解しなくてもいいが、これだけは理解してくれ。このお金は貴女への感謝の形でもある。食料を作れるようになって救われる命がたくさんある。理不尽な死が減る。それを考えれば、これだけでは少ないくらいだ」


……救われた命、か。


私は、それを理解した。

だからあれこれ言うのはやめた。考えるのはやめた。


「わかった。ありがたく受け取るね」


これを受け取らないと、受け取ってもらえなかった人が傷つくかもしれない。

受け取らないと他の誰かも受け取れなくなるかもしれない。

かもしれないばかりだけど、今はそれでいい。


私は初めて抱えるほどのお金を持ち、その重みを体に感じた。



「あぁ、それと、土地に関してだが」


感慨にふけっていたところに、魔王は思い出したように声をあげた。


土地?後日もらえるって言ってたやつね。

それがどうしたのかな?

もしかして駄目とか?


「別に悪いことじゃない」


私の不安そうな顔を見てか、そんなことを言った。


「それどころか嬉しいことだ」


嬉しいこと?

なんだろ?


「ほれ」


どこから取り出したのか紙を私に投げ渡した。


それに書かれた内容を見ると……


「えっ!?」


そこには権利書、そう書かれていた。


「ま、魔王?早くない?」

「いや、お金さえもらえればこんなもんだろ」


そう、なんですか?

私、そういうの知らないんで。

何分聖女とは世間には疎いものなんですよねぇ。


「ということで、今日からそこに書かれた場所はリーリアのものだ」


魔王はその可愛らしい顔で私に笑いかけるのであった。



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