聖女の復讐は楽しみながら その8
私はその足を証言台にのせた。
「お久しぶり。勇者と賢者。どう?殺したと思った雑魚女が生きててビックリした?」
そして開口と同時に二人を煽り始めた。
「なっ、なん、で」
「あらぁ、口をお魚みたいにパクパクするくらい驚いてくれたんだ。これまで我慢したかいはあったね」
勇者は口を鯉のようにパクパクさせて、目を見開いて私を見ていた。
そんなにガン見しないでよ、気持ち悪いから。
「リーリア。証言を」
あっ、グランに怒られた。
「そうですね。私、リーリアは魔王討伐の最中、背後から二人に襲われました」
魔王討伐の最中。先程の話と追い詰めた内容との矛盾を生まないように、しっかりと証言を曲げている。
しかし、嘘ではない。何せ魔王はまだ生きているのだから。
今なお、魔王討伐は、続いているのだから。
「んなっ!」
「どうした?勇者何を驚いているんだ?」
その証言に驚きの声を上げたのは勇者。
そして咄嗟に小突くように諌めたのは賢者。
そんな勇者の反応に疑問を浮かべたのはグランだ。
勇者が驚いたのは、私の証言の一部の本来のものとの相違だろう。
しかし、口を出してみろ。それは悪手だぜ。
これで終わればよかったけど、賢者が気づいたか。
勇者が何かを言えば、それはやったと言う自白になるわけだからそれが一番楽に終わる方法だったのにね。
賢者が気づいて小突かなかったら勇者は自爆しただろうに。
邪魔だなぁ、賢者。
まぁ、いいけど。だって、もう詰んでる状態から抜け出す方法はないからね。
「リーリアよ、証言の続きを」
「はい。殺される理由はわかりません。ですが道中私は疎まれていることは察していました」
それを皮切りに、たまった鬱憤を吐き出すかのように、今までの道のりのことを事細かく告げていく。
その一つを言う毎に、周りの勇者と賢者を見る目は冷めていく。
そして極め付きは
「今流行り病のもととなる魔物の存在も倒したのは私たちです。適切な処理をしたかったのですが私にはその能力はなく、二人に処理をするように頼んだのです。ですが私はこの短い間ですが、それについて調べ、わかったことがありました」
そして、カースワイバーンのことを、その近隣の村のことを、事細かく話した。
そして話終えた時に、私はすぐ頭を下げた。
「私も管理が甘かったこと、直接的ではないにしろ元凶になってしまいました。今回の流行り病に対して、お亡くなりになられた方や苦しんだ方々に対して深くお詫びします。申し訳ありませんでした」
誠心誠意の謝罪を行う。
自分の罪はしっかりと認めた上で、頭を下げる。
当然、言っていることも、この感情も本物だ。
しかし、汚い話、私はこの謝罪を先に行うことで勇者たちへの印象を悪くしているのだ。
「そうか。しかしその話についてはまた後でするとしよう。そのときは協力してくれるな」
「勿論です」
そこまでのやり取りを終えると、周りからは優しい言葉の数々が聞こえてくる。
それを聞いていると、胸が苦しい。
嘘は言っていないとはいえ、騙しているような、利用しているような気がしてしまって。
「さてと。勇者、そして賢者よ。ここまでの話に異議や反論は?」
「ふざけんなよ!何でその女は信用して、俺を信用しねぇんだよ!俺は選ばれし人間だ!その女よりも優秀なんだぞ!」
要約すると、何で格下の私がそんなに信用されているのかわからないってことですね。
「優秀とかそういうのはどうでも良いです。信用って言うのは、普段の行動の積み重ねがものを言うの。勇者、あなたはやりすぎた。今まで特別だと思い込んで、周りを格下だと侮って、好き勝手し続けた結果よ」
特別だから、何をやっても許される。
周りは格下だから、逆らうことはない。
だから、自分は好き勝手にやり続けることは当然。
そんなのが積み重なって、そして最後の砦である名誉を失った今、あなたを信用する要素は一つもない。
「賢者よ。貴様も良いな?」
ここから何を言っても覆らないことを理解している賢者は何も言わず、唇を噛んでいた。
「それでは判決。勇者は無期限の強制労働。賢者は魔力の一部を封印した上で五十年の奉仕活動だ。及び両名から称号と魔王討伐で得た資産を剥奪するわかったな!」
勇者と賢者に罪の大小がわかれているのには理由がある。
勇者は間違いなく主犯。というかほぼ全て勇者がやった。賢者はただ見ていただけである。
さらには日頃特に何かをしているわけでなく多少の女遊びはしているが特にそんな問題もなく、賢者はそういう観点から減刑されている。
しかし止めなかったことや、虚偽の報告をしていることから有罪だ。
「連れていけ」
こうして、二人はあまりにもあっさりと、そして一瞬で全てを失い、最低辺に落ちた。
しかしまだ終わってない。
「続いて、パンテル教皇前へ」
行くぞ。
老害。
絶対にお前もここで落とす。
忙しくしていて更新がなかなかできませんでした。ってな訳での一ヶ月ぶりの更新です。
これで復讐は楽しみながらは終わり。
ラストトドメをさして、障害を排除する。
 
 




