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聖女の復讐は楽しみながら その7



その日が来た。


「ずっと、この時を待ってた」


勇者と賢者に復讐するこの時を!


「楽しそうだなぁ」


そりゃね!あいつらにやられた仕打ちは倍々にして返すと決めたのだから!


私はすり寄るように玉座に座る魔王の隣に座った。


「……きたな」


みたいだね。


「いやぁ、本当に事前に知っといて良かったわ。じゃないと死んじゃうもんね」

「そうだな。知らなかったら、後が面倒だっただろうし」


後処理や、次の勇者の問題とかね。


死んでもらったら後々が面倒。しかし、今回に限り、私が後を受け持つことで軽くなるのだから、魔王としては儲けもんだ。

殺さないってのは条件ではあるけど、相手との格差が圧倒的にある場合ならそれほど難しいことじゃない。


「んじゃ、魔王様、頑張ってくださいね」


頑張って殺さないように、手加減をして、逃がすように仕向けてくださいね。


言った本人も、言われた側も、苦笑するしかない、茶番劇の開幕だった。



・・・


弱い。

弱すぎる。


我は戦い?ながら、呑気なことを考えていた。


正直な話、全く負ける気がしない。というか傷一つ受ける気がしない。

それくらいの差をリーリアは埋めていたんだなぁ。

つくづく非常識なやつだ。


「前は凄まじい風がそよ風に。全てを切り裂かんとする剣はただのなまくらに。全くつまらんな」


相手に聞こえないように呟く。


しかし、殺さないようにダメージを与えるのは少し難しい。

この弱さだと、初級とかその程度しか使えん。


だがまぁ、リーリアと戦うよりは数段ましだ。


それから魔王は、地道に地道にダメージを与えて、作戦通り撤退させることに成功した。


「あぁ。疲れた!」


疲労感が漂う魔王は、玉座に戻ろうとした。

しかし、その場にいたものと目があった。


「あ、はへ?」

「……何でお前は残ってるんだ?」


置いてけぼりにされた女。

これ、どうしよう。


・・・


影から観察してたけど、勇者たちは弱い。

勇者は私よりも低い身体能力と剣技。賢者は私の足元にも及ばない魔法。あの女は私の小指にすら及ばない回復と支援。


こいつら、前回勝てたの奇跡じゃね?私のバフデバフも込みでも前回よく圧勝なんてできたよなぁ。

そのレベルで弱い。


「いや、いくらなんでも弱すぎじゃ……もしかしてこの短時間で弱くなったり?」


流石にそんなことは、ないよね?


リーリアは忘れているが、勇者には嫌がらせとしていくつかの呪いをリーリアにかけられている。

そのなかに、剣を触る度に静電気が走る呪い、水虫になりやすく治りにくいというのがあった。

それが原因で、剣を握り直す度静電気が流れてたり、水虫のせいで踏み切りを思い切りできないとか、あったりして全力なんて出せちゃいない。


さらに言うならば、勇者はあの後女遊びをし続ける毎日で、まともに剣なんて持っちゃいなかった。

そのせいで剣技は下がり、そういうテクは上がったが、身体能力は低下。

結果、ここまで雑魚に成り下がったのだ。


「まっ、馬鹿の強さなんてどうでもいいか。魔王も上手いこと仕事してくれたし、私も仕事をしますよ」


転移の魔法。

それを持っていることを私は知っている。

二人は隠しているつもりだったらしいが、同じ魔法を使える身としては、使えるかは一発で看破できた。


「よっと」


転移に干渉。

行き先変更。


「んじゃこれで終わり」


二人の姿はその場から消えた。


その後を追うように私は転移をした。




転移先では、呆け顔の二人が広場の中央で座り込んでいた。

広場には多くの一般市民。そしてグランを初めとした高貴なる人や教会の人間もいた。


「それではこれより、勇者並びに賢者の裁判を行う」


追求の席にグランが立ち、威厳のある声をあげる。

それを始まりに、勇者と賢者は手錠を繋がれ、魔力を封じる首輪を付けられた。

武器は当然没収。


「な、てめぇら!なんの真似だ!」

「我々が何をしたと言うのだ」


当然激昂する勇者。

反対に静かに怒りを見せる賢者。


「言い訳はいい。お前たちは聖女リーリアを殺害しようとした嫌疑がかけられている」


それを言われると、勇者はあからさまに声を潜めた。


「な、なんのことだ!あいつは魔王との戦いで!」

「笑わせてくれる。お前たちがいつリーリアと共に魔王と戦ったのだ?」


そう、ここからがでっち上げの話。


素直に罪をポロってくれるほど甘くはないし、完全なる自白をさせなければバックは逃げてしまう。

だからここからは完全な黒にするための喜劇の始まりだ。


「い、いつって、当然最初に倒したときーー」

「最初?それはいつのことだ?お前たちは()()()()()()()()()()()()()()()ではないか」


そう、まず一つ。

私が殺されたと言うのを切り口に崩していくのだ。


私は魔王が倒された後に殺されかけた。

しかし、魔王は私が蘇生したせいで死んではいなかった。


勇者は魔王を倒していなかった。

ならばいつ私は殺されたのか。勇者たちは私は魔王との戦いのなかで死亡したことになっている。

しかし、倒していないのに倒したと報告したのはどういうことだ、その際に死んだとされる私の説明どうすんの?ってことだ。


「それは……あの女、元聖女が相討ちで弱らせたところを攻撃して!」

「で?」


こうなると、どうしようもない。

相討ちで、と言っても相手側は生きているのだから説明がつかない。

倒せてなかったと認めれば、虚偽の報告をしたことになるのだから。


今までなら影武者や別の魔王になった、などの別人説を使えたが、それを封殺するための今回の戦闘だ。


「いや、確かに倒したがそれは偽物だったんだ。そいつと聖女は相討ちになって……」

「それならばなぜ今回おめおめと逃げ帰ってきたのだ?」


そう、この場に逃げてきたのだ。この二人は。


「手も足も出ずに、やられて帰ってくるとは」

「っ、惜しいところまでいったんだ!」

「これのどこが?」


そうして指差した先には


「な、何でっ」


そこには先程の魔王城での戦いが映っていた。


「ずいぶんと無様だな。で?これだけの無様を晒す貴様らがどうやって偽物を倒したんだ?」


偽物はどれだけ弱かったのか。

仮に強かったとして、そんなやつを倒せたのか?

こんなに弱い奴らが?

追加で言うなら、私と相討ちで倒したと思ったが仕留め損なったってのもここで消えた。なぜならここまでの力量差があってどうやって?ってことだ。


「っっぅ。でも確かに倒したんだ!そのときに聖女も死んだんだ」


確かにそれでごり押せるかもしれない。

けれど勇者と私の差は


「リーリアは貴様らが倒せる程度の相手では死にはしない。何せ後にも先にも彼女を越える回復の使い手はいないとされるほどに回復に優れているからだ」


実績と、信頼だ。


私には病を治して回った実績や、救いの手を差しのべ続けた信頼がある。

さらには私の回復魔法の力は認めている人が多い。


「お前らが生きているのならば、リーリアが生きていないのはおかしい」


今回は、私の実績と信頼と、勇者たちの弱さを使って追い詰めるのだ。

己の弱さが原因で少しずつ逃げ道を失っていき、己が侮っていた人間の力と実績と信頼に潰される。


「ぐ、っぅ。あの女ぁ。死んでも苦しめるか!」


そしてトドメは


「これらの証拠を元に貴様らを要人殺人未遂の罪を問う」

「……待て。未遂?」


賢者はすぐに気づいた。

そして悟った。


なぜ自分たちのしたことがばれたのか、ここまで自分たちが追い詰められたのか。


「証人、リーリア=ブルーム」


さて、この茶番に終止符を打ちましょう。


私は証言台にその足を乗せた。



二人を追い詰めるのは弱さ。

これを中心にぐうの音もでないように追い詰めていき、トドメのリーリア。

ってな感じに落ち着いた。


ちなみに広場は公開裁判みたいな感じになっている。観客は大勢いるが、予め説明や嫌疑を読み上げられているため(ついでに映像も見ているため)リーリア視点では静かだった。


前回の勇者視点のやつの魔王視点をちょいと書いた。どうなったかは知ってるんだから飛ばした。


色々と簡潔にやったので補足の説明が一杯になりました。気になるところも多いのでそのうち改稿で直すか。


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