聖女だった私にできること その3
さてさて、生け贄。
それは差し出す相手がいて成立するものだ。
村の人が生け贄は生け贄になっていると言っていることから、その相手は間違いなく存在はする。
「探知になかなか引っ掛からないから焦ったよ」
どこに隠れてたのかわからないけど、ようやく見つけたよ。
「探知に対して、ここまで引っ掛かりにくいってことは人間はないよねぇ。魔族もない」
もしかしたら人が何らかの研究とかのために人を生け贄として差し出してもらうなんていうものも考えてはいたけど、流石になかったか。
「後は知的生命体か否かだけわからないけど」
話せるようだったら色々としつke…もとい説教をできるのに。
まぁ、どちらでもいいか。
私はその存在の真ん前に到着した。
いきなりだなぁ、おい。
私はそれを見上げるようにして見た。
こりゃすごい。
ドラゴン?いや、ドラゴンに首は三つもないよね。
とりあえず仮称でトリプルヘッドドラゴン。訳してトリゴンで。
…ふふん。可愛く名付けられた。
ネーミングセンスがないって言われてたけど、今回はそうは言わせない。
「トリゴーン!」
とりあえず話せるかどうかを試すためにそのトリゴンに声をかけてみた。
「んん~、反応はないですね。寝てるのでしょうか?トリゴンさーん、ちょっとお話をよろしいですかぁ!」
続けて声を大きくして再度声をかけてみる。
「駄目ね。寝てて確認すらできない」
どうしよう…
……一発かましてみる。
……ぶっ叩く
……待つ
……もう殺っちゃう
どれにしよう。
「……待つはないなぁ」
『イヤイヤイヤイヤ、ごめんなさい起きてるから待って!』
そんな考え事をしてるときに私の頭のなかに小さな女の子の声が響いた。
誰かな?
「誰だか知らないけどちょっと待ってね。こいつさくっと殺ってから話を聞くから」
『ねぇ!?それわざと?わざと言ってるよね!?そうだよね?!』
いや、いたって真面目ですが?
って、あれ?もしかしてこの声って、トリゴン?
『そうそうトリゴン……って、違うわ!トリゴンって誰!?』
先程から頭に鳴り響くこの声はトリゴンのものらしい。
こんなに可愛い声してるの?というか、どれが喋ってるの?
三つ首あると三重奏みたいにならない?
『今は私しか起きてないので……』
へぇ、そうなんだぁ~。
それはいいんだけどさ?さっきから心読むの止めてくんない?
『すみません!止めますので、その手のスパークは…』
ん?手のスパーク?
あぁ、パチパチ言ってるこれね。
「スパークなんてしてないよ」
ただ高速で動く光を可視化させてるだけだから。
フォトンレーザーって魔法なんだけどね。
サンダーとかよりは断然威力高いよ。
『そ、そうなんです、か』
うん。そう。スパークはしてないよ。
『とりあえず、一度話を』
話せるみたいだし、最初の案は成立するね。
話してみよう。
これで解決できるならできるで結構なことだし、難航しそうならしつke…じゃない説得しましょう。
『も、ものすごい悪寒が』
私はとても素晴らしい笑顔でお話の席についた。
目の前でガクガク生まれたての小鹿のように震えるトリゴン。
これじゃあ私がなんだか悪いことしたみたいじゃん!
私、悪いこと、してないよ。
まぁ、それはおいといて、私は話を始めた。
「私はリーリア。流行り病を治すためにこの村に訪れた旅のものよ」
『それでは、私が代表して名乗りますね。私はガンマ。種族はゴールドキングドラゴン』
ふーん。三つ首要素は?
というか、ゴールドキングドラゴン?聞き覚えがある。
確か、ドラゴンの中の最上種で、名前の通りドラゴンを統率する王みたいな存在。
昔、師匠から聞いたことがあるだけで実際にみるのは初めて。
けど、聞いてたのとは姿形が随分違うなぁ。
『えっと、リーリアさんは、何故私のところに?討伐しにきたのですか?』
「まぁ、相手が知識なきものなら殺るつもりだった」
一応あるっぽいのでやらないけどね。
『ホッ。私はこの辺に長い間隠れ住ませてもらっているのです』
隠れる?
『私はかなり昔。それこそこの村ができるくらいの頃。私は一人の男にボコボコにされてしまいまして……まぁ、その頃は人を食ったりしていましたからねぇ』
ふーん。
間違いがある前に……
『今はしませんよ』
私の雰囲気を読み取って察したのか急いで弁解の言葉を述べた。
ドラゴンのクセに。
「それで?」
私は自分の(半分くらい)せいで途切れてしまった話を戻した。
『それからしばらく体を治していたのですが、そのとき変な男が現れまして、そいつに色々とされてしまい、こんな姿になってしまいまして』
変な男?なにその人。
なんかヤバそうな匂いがする。
『もとは首が一つで普通のドラゴンでしたが、こんなになってしまった上に、力もあまり残っていなかったので身を潜めるようにここに住み始めたのです』
うん。まぁ、そこまではわかった。
けど、生け贄云々はちゃんと聞かなければ。
「なら、一つ聞くけど、生け贄を捧げさせてるのは何故?」
それを聞かれると、ふぬけた顔になって
『なんのことですか?生け贄なんて私とってませんよ。数年に一度なんか人を連れてきて、捧げるように置いてくることはあったけど』
……ん?
どういうこと?だって、確かに生け贄にされた人は死んでいる。死体で帰ってきてるのよね。
じゃあ、なに?こいつへの生け贄をかっさらってるやつがいるの?しかもご丁寧に返却までするようなやつが。
それとも、なに?
こいつが嘘ついてるの?……いや、そんなことはない。今の反応や今までの態度は全て演技には見えないもの。
そんな風に頭を悩ませ考えているときだった。
「これはこれは、珍しいお客がいらっしゃいますねぇ」
私の耳元から不気味な、癇に触るような男の声が聞こえたのは。
いつも感想ありがとうございます。
アンサーですが、完結まではちゃんとやるつもりです。書きながら色々と追加させすぎて長くなるくらいのことはあると思うけど。
途中ドSみたいな言動をしてるのは、深夜テンションでやってしまったからです。直すの面倒だった。許容範囲だったのでそのまんま行った。




