表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/50

聖女だった私にできること その2



その後、男は私と会話をすることなく静かに、けれど私を恐れるように連行をして行った。


生け贄ねぇ。

そして人の死体から薬を作る……その薬は間違いなく今回の病の薬。


でも、何故に生け贄の死骸から作るって……ヤバい思考が堂々巡りしてきてる。


まぁ、今のところ考えられるのは、生け贄=薬の材料になる。ということなのか、それとも普通に生け贄にされた後にそのまま死骸が残り、それを使って作る。

最後の可能性として、かなり確率は低いが、生け贄に捧げる生物か何かが特殊なものを持っていて、それが人の身体に対して何らかの効果を及ぼす効力を与える代わりにその生け贄の人が死にその死体に宿った効力が薬の材料になる、なんていうあり得ない話。

後はその他だ。


「私の体ならもしかしたら薬の材料になるかもしれないけどね」


アハハ……そんなわけないよね?

自分で言ってて否定できない辺りが余計に怖い。


そんなことより、とりあえず、私がすることは逃げる、そしてさっき調べたこと、流行り病にかかって隔離されている人を助けること。この二点!


「でも、プラスワンかな」


この村に何かあるのだとしたら、そっちもどうにかしないと、今回みたいなことが起きると、その度に人がこうやって生け贄にされるのはちょっと不味いからね。


「さっきから一人で何を言っている」


あっ、忘れてたよ、君。

そして思い出してすぐだけどごめんね?


「スリープ」


眠ってて。


「えっ?ぁ」


私は魔法で男を眠らせた。

そして縄を火の魔法で焼ききった。


「よしっ。後は」


この男の人に騒がれるのは面倒だから、地面に埋める。

もちろん殺したりはしないよ?


こう、人一人はいれる空間を掘って(魔法で)そこに男の人を入れる。

そして空気孔を少し開けて、中が空洞のままになるように地面を塞ぎ、遮音結界を張って、完成。


「これでよし。んじゃ、治しに行きますか」


ちなみにこれ、もっと前にどうにかできたのでは?と思われるがここが一番良いタイミングなのだ。

私が、いやあの男の人がいつまでもこないとなれば、ここの人は逃げたと思い探しに行くだろう。

ここ大事!人を探しに行くとなると人は外へ外へと意識が向く。

つまりその間は隔離された場所に人が来る確率は減る。

更に言えば、判明までのタイムラグが生まれる。このタイムラグは後々色々と有利なものとなる。


その二つを満たせるのはこのタイミングしかなかった。

牢の中だと不定期の見回り、そしてこのタイムラグが上に人がいるので短い。

魔法でなんとかできなくはないが、牢にいる間ずっと調べものをしていたので、結果的にこのタイミングとなった。


「それにしても、結構人数がいたのよね」


調べた限りではかなりの人数が感染していた。

隔離措置の限界と言うやつだ。

そもそも隔離したところで、元を絶てなければ意味はない。

それができなかったこの村は被害の拡大を続けたと言うわけだろう。


「っていうか、忘れてた」


目隠しを取る。

あってもなくてもあんまり変わらないから忘れてたよ。


「ふぅ。そういえばなんか羽織ったよね」


なんだろう?って視線を下げると


「なにこれ?」


なんと言うか、とりあえず変なものだった。

確か、どこかのおじさんが言ってた着物ってやつ?

けど、それにしては服としての機能が一部悪いのよね。

だって、色々と露出しちゃうし、下に服着てなかったら色々とアウトな格好よ。


「アマゾネスが無理して服を着たけど結局邪魔になって剥いだ感じ?」


とりあえず良くわからないことは確かだった。


これは…まぁ、捨てる。

私が持ってたくない。

カモフラージュに使わせてもらおう。うん。


そう決めて私はそれをその場に投げ捨てるように捨てた。


この後、しっかりその服はカモフラージュの役割を果たし、捜索を遅らせたそうな。



「到着。隔離されてるとはいえ……これは酷い」


患者のいる場所に到着した私は、その惨状を目の当たりにした。

現実は情報よりも酷いとはよく言ったものだ。

私の探知にわからないものがよく見てわかる。


手入れの入ってない部屋。

最後に看病されたのがいつかもわからないような、人々。

そしてすでに死を悟り、絶望する顔。


これを地獄と呼ばずになんと呼ぶ。


「本当に、後悔してるわ」


あのとき私が馬鹿二人をちゃんと見てれば、そう何度も後悔して何度も謝って、それでも変わることのない現実を見て、苦しい思いを抱く。


「だから、償いをさせてほしい」


これは今の私にしかできないことだ。

身分に、環境に縛られた聖女ではできなかった行為。


今になって、遅いとは思う。

けれど、これは自分勝手な自己満足だとしても。


「我は祈る」


この人たちの未来を。

失くなった人の行く先を。


私は詠唱を開始した。


そして詠唱が終わり、一息付き、


「パーフェクトリバース!」


その魔法を使った。


前と同じ全てを癒す魔法をその人たちへ発動した。


途端に寝込んでいた人たちの顔色や、外的変化が全て治っていった。


「ふう。今回も上手く行った。そして今回は倒れずに済む」


前は久しぶりだったからね。

二回目は大丈夫!


「……よかった」


私の目の前には、先程のような地獄は広がっておらず、突然元気になって、病が消えたことを喜び合う姿があった。


そして私は誰にも気づかれないうちにその場を立ち去った。




「けど、まだ終わってない」


この村を助けると決めたからには、最後までやりきらないとね。


私は最後のこの村のあり方を、未来を変えるための行動を始めた。


月を跨いでしまった……忙しかった。ホントに。試験とかあって、ね。

年始年末あって、もう少し忙しい時期が続くので、次回更新は未定です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ペースはゆっくりでも大丈夫ですよ〜 (内容を忘れなければ)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ