聖女だった私にできること その1
さて、今の私にできることをしますか。
発生源はわかったし、流行った理由もわかった。
唯一どんなものかまではわからなかったけど、あんな魔物の運んできたものなんて流石に辿れやしない。
方角くらいはわかるかもしれないがそんなの空飛ぶ魔物に対しては大したヒントにならない。
だから私の調べものは一先ず終わり。
今からやるのは私的なもの。
「少しでも被害者を減らす」
それをしたい。
今の私は聖女じゃないけど、人を助けたい。
私に責任の一部もある以上やらないという選択肢はない。
それにすでに少なくとも一つの村が滅んでるわけだしね。
自己満足の偽善かもしれないけど、やらないよりもやる偽善ってやつね。
「そうと決まったら、ちゃちゃっとやりましょう」
まずは広域探索。
魔力探知という魔法があるのだが、それは人の、いや物の持つ魔力を探索するための魔法なのだが、それに加えてこれは形などもわかる、簡潔に言えばその魔力探知の上位互換と言える魔法だ。
これで探るのは人ではなく病原菌という物だ。
そしてそれにより優先度を決めて、そこを先に対処する。
その後、経路を断ち、少しずつ殲滅していく。
細かなところまで辿れはするが、私がするのはあくまでも空気にある菌と危険度の高い場所の浄化だけだ。
全体はさすがに私の身分上難しいので、そこは悔しいが教会に頼むしかない。
まぁ、それはそうと、早くしないと手遅れになるからね。
私は一番病原菌の広がりが大きいところに向けて移動を始めた。
到着。
空飛んですぐについた。
その村は訪れたことのない場所だった。
表面はそこまで他の村と変わりはないが、私の探知にはしっかりと引っ掛かった。
意図的に隠しているとみていいだろう。
「けど、こういうのって会話は難しそうね」
村のしきたりだーとか色々と頑固な人が居てその人が、って感じの。
隠れて治すことは容易い。
けど、再発防止や今後のことを考えると危ない。
今回の件も大丈夫だったからと次も同じことをしたら今度こそ終わりだ。
「会話はどちらにしてもするしかないのか」
気だるい。
何を言われるかわからないから、自分の身分は予め作っておこう。
旅の魔法使いでいいかな?
最近まで魔族の国の方まで行ってて帰ってきたらこの有り様、詳しく状況を知るために都市へ帰る途中、この村に寄った、こんな感じでいいかな?
通用するかはわからないけど。
「ここにでも入ってろ!」
ギャフン。
駄目でした。
普通に正面から行ったら止められてさっきの設定で行ったら、怪しいやつめ!って捕まった。
振りほどくことは可能だったが、流石に職務を全うしているだけの人を倒すのは気が引けてしまい、そしてそのまま牢に放り込まれた。
はぁ。
さてと、出ることは簡単だけど、少し気になることも出てきたし、予定変更かな?
「しばらくはここで探知だよりだけど、様子見といきますか」
私は仕方なしにとは言え、しばらくの牢屋生活を始めた。
三日後。
「出ろ」
「はぁーい」
私は門番に連れられてどこかへ連れていかれた。
ちなみに目隠しをされ、手首を縛られている。
ついでに見えはしないが、何かを被せられたような気がした。というか何かを羽織らされている。
ねぇ、これってまさかとは思うけど、生け贄なんてこと、ないよね?
「ねぇ、どこに連れていくの?」
門番に少しおどおどしたような声色で聞いてみた。
「お前が知る必要はない」
あっそっ。
なら、私も私のやり方をしますよ。
「何をしたいか知らないけど、どうせろくでもないことでしょ?」
「ろくでもない?口を慎め」
よし、食いついた。
師匠直伝(別に直接教えてもらってはないが)会話術。
「無理です、私は何をするか知らないですし、こうやってか弱い女性を縛ってどこかへ連れていく時点でろくなことなんてありません」
実際、これだと盗賊かに拐われたのか何かかと思うし。
「ふざけるな、今から行われるのは神聖な!」
「ププッ、笑えるぅ。神聖な?男性が女性を縛って拉致しているような人が神聖なんて言葉使うなんてね」
クスクス、大袈裟に、そして嘲笑うように笑ってやる。
「貴様いい加減にっ」
「しませんよぉ。なんで見ず知らずの誘拐犯の言葉を聴かないといけないんですか?なんならここで大声で犯されるぅ、とか叫んでもいいんですよ?なんなら一生童貞卒業できない呪いとかかけてもいいんですよ?」
徐々に立場が逆転していく。
いつの間にか、追い詰める側が追い詰められている。
「それが嫌なら早くこれから何をするか教えなさい」
うぐっ、という声が漏れた。
恐ろしいわね?一生変態や犯罪者のレッテルを張られるなんて。怖いわよね?童貞卒業できないなんて?……童貞が何かは私は知らないけど。どこかのおじさんがそれを言っとけば大体の男性は怯む、って言うのは本当だったみたいね。
少し間を空けて、誰にもいうな、そしてそんなことしないでくれ、と小さく私に話しかけた。
「いいわよ」
実はと、男が口を開いた。
「これからお前は生け贄にする」
ふーん、やっぱりね。
しかし次に言葉は続いた。
「そしてお前の亡骸を回収し、そこから薬を作る」
……はい?
もう、何がなんだか私には意味がわからない。
生け贄って死体回収できないよね?
というか回収できたとしてそこから薬なんて発想どこから出てきたし?
ちょっとよくわからないけど、とりあえず、一度色々詳しく知ることが必要だと再確認した。
ちょっとやることがあって一週間空けたら内容とんでしまい、何を書くかわからず一からやり直してたり、なんやかんやでかなり空いた。申し訳ない。




