聖女、潜入
はい、というわけで、早速調べていきましょうや。
何を調べるかはだいたい決まってる。
なにが知りたいかって?これからの行動で理解して!
「……私は誰に話しかけて、誰に理解させようとしてるの…」
何なら、これを誰かに理解されたら調べ物もなにもないじゃない。
…気を取り直して、さっ、調べ物の時間。
「ん?なんか騒がしいような」
多分町の外のほうかな?
まぁ、今は気にしない。むしろ都合が良さそう。
私はフードを深くかぶり、調べ物のため動き始めた。
まず一つ目。
細かな発生日時の特定。
もしかしたら、これはそもそも人間のものじゃないかもしれない。
魔族側のもの発生日時は把握してるので前後関係を調べよう。
それと治療するに当たってどれくらいがタイムリミットかも知るためにはその情報が必要なのだ。
「これは多分、教会にでも知ってる人がいるでしょ」
知ってる人がいるからと言って話が聞けるとは限らない?
そんなもの誰が決めた?というか私は話を聞くなんて一言も言ってませんが?
というわけで隠蔽魔法を使用。
この魔法は主に暗殺者方が使う、自身の存在を隠蔽するための魔法である。
この魔法は細かく説明すると、これは見えなくするのではなく存在感を消す、気配を消すという魔法である。
相手の視覚に影響を与えるのはまた別の魔法だ。
なのでそちらも使います。
同化魔法。
これは自身の周りに薄く膜を張り、それにより私を視覚では捉えられなくなるのだ。光の屈折が云々という難しい話になるので説明は割愛だ。ちなみにどこかのおじさんが情報源だ。
この二つを並列して使用することにより、私は完全に透明になるのだ!
ぐふふ、これがあればあんなこともこんなことも調べられちゃうよ?
……しないけど。
一度どこかのおじさんがこの魔法で私の着替えを覗きに来まして、その時はたまたま気づけたから良いけど、気づかなかったらそのまま脱ぐところだった。
後で取り調べたところ、師匠に私のお胸を測ってこいと脅されたらしい。後で師匠をシバいておじさんをフルボッコにした。
ちなみに後で師匠に聞いたところによると、自分はまだ負けてないかと心配になったそうだ。子供と比べる大人って…。
思い出すとうちの周りにはそんな感じの人多いですねぇ。私は普通だからあんまり考えたことないけど。
一部の人の烈火の如き怒りを買いそうなリーリアだった。
まぁ、それは置いといて、さっ、教会に侵入でもしーよぉっと。
私は透明なまま転移を行い、懐かしの教会に降り立った。
ここからは喋らないようにしないと。
私はまず、情報をまとめてある場所に行く。
資料室くらい勿論ある。
そこへ足音を殺して忍び寄る。……魔法で消えてるけど気分の問題。
部屋にたどり着いたらその辺の資料を読み漁る、なんて効率の悪いことはせず、その部屋にいる人の背後に立つ。
顔は知らない人だが、かなり高位の身分のみが羽織れる服を着ているので、間違いなく中枢に関われている人ということがわかる。
この部屋は一部の高位の人しか入ることはできない。
私は入れたが、知りたいことも調べる時間もなかったので入ったことはほぼないが。
それはともかく、私はその人の背後を取り、眠らせた(魔法で)。
「よし、成功っと」
あとは催眠の魔法を使って、知りたいことを吐かせるのみ。
魔法の説明はまぁ、いいよね。
そうして、私はまんまと知りたい情報を獲得した。
ついでに私のことなども聞かせてもらったり、ね?
「さてと、帰りは転移で一発だね」
そうして教会から転移しようとしたとき、部屋の外から妙に騒がしい音が聞こえた。
気になり、聞き耳をたてる。
するとこんなことが聞こえてきた。
「あぁ、くそっ。あの勇者め!聖女様を派遣しろとかふざけたことをっ」
「仕方ないさ。魔王討伐に行かれるのだ。派遣しないわけにはいかんだろう」
「そうですが、それも前回の討伐に失敗したのが原因と聞きますし、しかも前代の聖女であるリーリア様も失っておきながらっ」
「リーリア様のことは残念でしたが、名誉な死です。勇者と賢者を守ったのだから。それよりも今は聖女様が抜ける穴をどうするかだ」
「そうだな。ホントにこんな時期に、ふざけやがって」
ふむふむ。
魔王の生存がバレたみたいだね。
ざまぁ。
そして私の後継者の聖女とともに討伐に行くけど、その聖女は流行病の対処に追われている中で引き抜きされて、教会は慌ただしくしてるみたいね。
「さぁて、どうしたものかね」
私としては正直どうでもいい。
救える命は救うし、助けられる手は助ける。
けど、今の私はあくまでただのリーリア。
他人を最優先にする生き方はしない。
でもなぁ、勇者たちは本気でどうでもいいとして、流行病のほうはどうにかしてあげたいな。
けど、私は姿を見せられないし、教会に関わりたくない。…あの老害がいる限りね。
「旅の魔法使いで通せるかなぁ」
流行病を治す薬は使えない。ストックはほぼないからだ。
聖女の魔法も使えない。わかる人には百でバレるからだ。
あとは……
「シレーナはまだか!?」
……この声は
「申し訳ありません、まだ戻られてません」
「んだと?このままじゃ出発できねぇだろうが!」
この人の神経を逆なでするような声はっ
「とにかく、急がせろ!俺たちは明後日に発つんだからな!」
クソ雑魚イキリ勇者!
私は先程までの考えを彼方へ送り、その声の持ち主にどういうことをしてやろうかと頭を回し始めた。




