聖女、とある再開、ある出合い その2
「どうどう」
「おぉ、よしよし」
私たち二人は全力で泣き止ませにかかるが、私たちは子供を育てたことはおろか、普段人とほとんど関わらない人種だ。
そんな人間が泣き止ませる、しかも初対面の少年だ。
もっと小さい子ならもっと楽だったのに。
その後、結局、私とおじさんは泣き止ますことはできなかった。
私の護衛の人が先程の落ちてきた音に心配して来てくれたから助かったよ。
と言っても実はもっと前に家の前まで来ていて、泣き声が聞こえた辺りから中に入るか入らないか悩んでいたそうな。
既婚者で子持ちの護衛の人は見事に一瞬で泣き止ますことに成功した。
二人して拍手して褒めまくった。
護衛の人は恥ずかしそうに仕事に戻っていった。
何はともあれ、これでようやく話が聞ける。
「と思ったのに!」
私の目の前では、おじさんと少年が私の知らない言語で何かを話しているのだ。
なんて言ってるか全然わからない。
「これでも結構勉強頑張ったのになぁ」
今や、この世界にある言語のすべてを習得したとまで思っていたのに、知らない言語で話されると心が……。
「まぁ、おじさんに教えてもらお」
今はその存在を知れたことに感謝しましょう。
あとから聞くと、少年はよくわからないうちにここにいたらしい。
ここに来る前最後の記憶は家に帰る途中で、馬車に轢かれかけたというもしい。
よくわからないけど、少なくとも少年に怪我の痕跡はないので、轢かれてはいない。
けれど轢かれかけたまでが最後の記憶。
考えられるのは、それが夢だった、記憶喪失する原因のことを言っている、魔法か何かによる転移の三つだ。
「まぁ、それはおいおいだね」
「そうだな」
さて、今決めないといけないのは
「この子をどうするかだね」
「俺が預かろう。それで教えられること教えて、その後は好きにしろ」
まぁ、それが妥当だね。
おじさんはいつまでも少年を養えるわけじゃない。
だから教えられることを教えたら自立させるべきだ。
というか、話を聞くと、少年は一般常識からからっきしらしい。
記憶喪失なのか、それともそんな常識のない遠い田舎から出てきたのかどちらかわからないが、流石にそんなんじゃ独り立ちさせるなんて流石に無謀だよね。
私は立場上引き取るわけにゃいかないし。
ま、おじさんに任せとけば大丈夫だよね。
「任せた!」
「任された」
こういうときはこんなふうに言えとおじさんに教えられた。
流石にもう私もそれがなにか違うということくらいわかってるからおじさんにしか使わないよ。
「お姉ちゃん、名前、教えて」
うぁ、少年が話しかけてきてくれた!
しかも私がお姉ちゃん?なんか、こう、胸にくるものが。
「リーリア。困ったことがあれば何でも言って、これでもそこそこな立場にいるから助けられることもあるかもしれないからね」
不自由な立場だが、その立場だからこそできることもあるので少年のためならどんどん利用しよう。
「リーリアお姉ちゃん……僕はソウマ。よろしくお願いします」
か、可愛い!
なんというか、守ってやりたいというか、保護欲を掻き立てられるのですが!?
「よろしく、ソウマ君!お姉ちゃんが守ってあげるからね!」
あれから見た目は変わって、可愛いって感じじゃなくなったけど、その面影は残ってる。
泣き虫が変わることもないし、私がお姉ちゃんだってことも変わらない。
「うぅ、なんで連絡をくれなかったの?」
あれ?なんか、口調まで幼児退化してる……まっ、いっか。
「ごめんね、色々と忙しくて、それにここまで送れるものがなかったから」
魔族と人間の国を繋ぐものはない。
手紙を一通送るだけでもかなり難しい。
使者が何日もかけて届けてくれることはあるが、基本的には手紙は送れない。
「でも、生きててくれて、良かった」
うん、私も頑張ったから。
生きてるって感じがする。
「それは良いけどソウマ君、そろそろ離れよう?」
いつもならボディタッチ拒否するのに。
今日は幸せだ。
けど、話もしないといけないのでこのままじゃダメだ。
「はっ、ごめんなさい」
ようやく、退化から戻ってきたよ。
「リーリア、何をご所望ですか?」
ソウマ君は先程までとは正反対な態度で私に今回の要件を聞いた。
さて、私もサクサク本題ってところだね。
「最近、この国で流行り病って出なかった?」
「うん。確かに流行ったね。というか流行ってるね」
なるほど、こちらは沈静化できてないと。
「それってどうやって治してるの?」
「リーリアの代わりの聖女を始めとした神官たちが動いてるけど、治し方はわからない。けど、少なくともそれが効果的じゃないのは間違いないね」
効果的じゃない?
「流行病の患者は今も増え続け、ついには王都まで広がりを見せたから」
わぁ、それはしんどそう。
治してあげたいところだけど、その前に、やらないといけないことがある。
「とりあえず一般的なものはわかった」
私がここにきた理由は挨拶もあるが、私は一般的な情報が欲しかった。
特別な情報はいらない。
「……リーリア。心配してるから、無理をしないで」
「なぁに悲壮感漂わせてるの?大丈夫。私もう聖女じゃないから」
そう言って、笑ってみせた。
感想をいただきましたので、返信に関してのお知らせです。
基本的にはこの作品の返信はなしとさせていただきます。理由は色々と語りすぎるところがあるから「作者(自分)のせい?ごめんなさい」
質問はできる限り後書きに書かせていただきます。答えられないものもあるのでご容赦を。
ちなみに今回の質問はイエスです。誤字報告は今回が初めてです。重ねてお礼を。ありがとうございます。




