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聖女、打ち上げのお茶会をする



軽く、まず一口。

味わうようにお茶を口にする。


「はぁ」


こうしてまずホッと一息つくのだ。


「やぁ、今回は疲れたね」

「そうだなぁ」

「そうですねぇ」


席には私、魔王、メリアさんの三人。

この時間はメリアさんも立場に関係なく寛ぐと決めているそうだ。

その証拠に背もたれに体重をかけて、表情がかなり柔らかい。


最初にあったときとは大違いや。

初対面でいきなり殴られたんだけど。


「それにしても、これで今回の流行病はほぼほぼ終わりでいいよね?」

「一応そうだな」


ん?なんか引っかかる物言いだね。

さてはなにかあるな?


「一応って、ことは何か心配事でもあるの?」

「それは……」


ほれほれ、早く言いなさいよ。

別に脅したりはしてませんから。

悪いようにはしないから。


言ってて思った、これは悪い人の物言いだなぁ、と。

しかし私は気づかないふりをする。


「はぁ、この先、馬鹿な人たちが転売やら横領やらをしないかと心配しているのですよ。魔王様は」


なかなか口を割らない魔王のかわりに答えを出したのはメリアさん。


それを聞いて私は納得顔をする。


確かに対応は取ってないわけじゃない。

だけども、どんなところでもそういう悪いことを考える人はいる。

そのために私たちが薬を配って回るわけだけども、ドサクサに紛れてパクる人がいないとは限らない。自分で使わずに売る人が出るかもしれない。

貴族への対応にしたって、まさかとは思うが脅したりして奪い取る人がいないとも限らない。


「難儀ね」

「そうですね。ですがそれを取り締まる術はないんです」

「露見しなければ、証拠がなければ、そんな理由で取り締まれないからなぁ」


魔王がため息をついて、机に突っ伏す。

今までにも同じようなことがあったわけか。

知らぬ存ぜぬ、言い方を変えればバレなければ犯罪ではない、ってところね。

魔王といえど、そこまで全てどうにかするのは難しいからね。


「はぁ、そこら辺の問題はどこも同じだよね」

「リーリア、何かあるか?」


どこも同じ、という言葉を聞いた魔王が対策として何かあるのか?と私に聞いた。

何かしらのヒントにでもなればと思ってのことだろう。


「何かって、何でもいいの?」


言われればいくらでも思いつくよ。

その辺の知識もどっかのおじさんに聞いてるからね。


「何でもいいぞ」

「うーん、それなら」


私は語り始めた。


話すのはできる限りの防ぎ方。先に言うがゼロは無理だ。


まず一つ、予め配布時に注意を促す。

それは全ての人、身分も何も関係なく等しく同じ説明をする。

そうすることによって知らないのは配布されてない人のみ。

つまり、全ての人に対して配るこれには知らない人はいないこととなる。

これで知らぬ存ぜぬはつぶした。


次に配布時と同様に全ての人に検査を行い、それにより投与できていない人の数が紛失した数となる。

明確な数が分かるということは打ち漏らしがなくなる。

全てが見つかるまで徹底的にやらせてもらう。

まぁ、隠蔽とかやられると困るけど、そこは次だ。


次に隠蔽。壊して失くすなどの行為をして隠蔽された場合、それは私がわかってしまうんだなぁ、これが。

薬の制作時に私の魔力を用いているんだ。流石に容器に入ったままじゃわからないが中身が外に出ているならばわからなくもない。

溢したものと間違える可能性もなくはないが、全部をぶちまけることなどはほぼしないだろうし、魔力の量から予想はする。


ドジって落としてしまい〜とかだった場合は調べようがないが。

まぁ、完璧とはいかないがこれくらいすればだいぶ良いだろう。


と、二人に語った。


「なるほど、そうしますか」

「幸い、配るのはリーリアとメリアの二人だからな」


この案の利点はこちらの負担はほぼないこと。

注意を促すのは私とメリアさんの二人がすればいいだけだ。

検査を行うのは一苦労だが、これに関しては簡易的な検査所を作り来てもらうだけでいい。配った数と照らし合わせれば問題ない。

最後のは私がチョチョイと探るだけだから、簡単だ。


負担と言うなら証拠隠滅をしないで横領とかされた場合のみだ。


「まぁ、するのは私たち二人がメインだから、魔王が言えばいくらでも協力するよ」

「無論です」


そうか、と魔王。

その後、魔王は頭を下げて私とメリアさんにお願いをした。

その答えは言わずもがな、だ。



「硬い話も程々に、さっ、落ち着いてティータイムといきましょう」

「それもそうだな」

「そうですね(ワクワク)」


なんだかんだで、話ばかりしていたが、今はお茶会の時間だ。

ゆっくり、のんびり、お茶しましょうや。


「このお菓子美味しいです」

「そうだな。隠し味は、レモンか」


グッ、なんでそうさらっと隠し味を見抜けるんですか、魔王。


私がクッキーを作る際に加えた一工夫をあっさり見抜く魔王に私はなんだか敗北感を感じた。

魔王の舌はとんでもなかった。

やっぱり、魔王は職業間違えてるよ。


「ん?どうしたリーリア!なんでそんなに凹んでるのだ!?」

「そんなことないですよ?私は凹んでなんていません」


明らかに凹んでいるような雰囲気でそんなことを言われても説得力は皆無だ。

その辺の能力も聖女縛りを外してからなくなっているのだろう。


「わかりやすく顔に出てますよ、リーリア」

「えっ!?」


しかも本人自覚なし。


言われて初めて気づいた。

自分の顔は見えないけど、確かにいつものような表情ができないからそうなのだろうか。


「その、なんだか悪かった」


責任を感じた魔王に謝られたが私はそれを否定した。


「私が勝手に落ち込んでいるだけだから、謝らなくていい。それに」


さっきまでの凹んだ表情を消して、力強く笑って


「次までに絶対に見抜けないようなものにしてやるから」


と高々と宣言した。


それを見て、魔王は何か毒気を抜かれた顔をし、メリアさんは静かに笑った。






お茶会ついでに話も進めたからお茶会要素よ。


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