聖女、女神になる その4
その後しばらく悶絶した私は心を落ち着け、話の腰を折ったことを謝ってから話を再開した。
「ともかく、どちらにしても私は見た目を変えないといけないので、見せるね」
このとき魔王は、どう変わるのか予想していた。
髪型を変えて、色を変えて、体格を変えて、それくらいか?
一般的にはそれくらいが限界だ。そもそも自分の見た目を偽るものなどそういない。
だからどう変わるのかをかなり楽しみにしていた。
そして同様にリーリアも自分をどう変えるのか迷っていた。
少なくとも顔は変えて、自分とかけ離れた美人を完成させたいと考えていた。
ついでに昔から憧れの大きめな胸とかやってみたいとか思ってみたりしていた。
「よ、よし、行くよ。チェンジ!」
「その掛け声はいらんだろ」
魔王の呆れたような声が聞こえたが私には関係ない。
一瞬自分が光ったと思ったら次には聞き慣れない声になっていた。
目線もいつもと違う。
体型も違う。
「これぞまさに私じゃない私ってやつね」
「……」
どうしたどうした?もしかして言葉が出ないってやつ?
ふふん、どうよ。
ん?な、なんですか魔王?私を憎々しげに見て。
えっ?胸?あっ、なんかごめん。
「ちょっ?!そ、その炎は仕舞おう?ね?ね?や、やめっ!あ、ァァァァーーー」
その後の私の記憶はほぼ残ってない。
ただ一つ胸のことは魔王の前では禁句ってのがよくわかった。
そう言えばメリアさんも大きかったね。
……ま、魔王がしょぼくれてる。
よっぽど気にしてたんだ……。
私は憧れではあるけどそこまで気にしたことないから理解はしてあげられないよ。だからそっとしよう。
そうして私は再び時間を食うのであった。
ちなみに私の変身は急いで解除した。あの姿のままいると魔王がホントに胸をもごうとしてくるから。
解除したのに胸をもごうとしてきたり、焼き尽くそうとしてきたり、したから今も少し痛い(火傷も一箇所程度)。
解除してしばらくするとしょぼくれたので私はヒリヒリする胸を治しつつ、次の変身を考えていた。今度は魔王の心を刺激しないように。
けど、なぁ。
次はどんなふうに変身しよう。
私の魔法について、今回の変身する魔法は頭から爪先までしっかりとしたイメージがないとおかしくなるのだ。
例えば足の長さを決めてないと足がめちゃめちゃ長くなってその分を胴体からもらってきてるのか胴体がめちゃめちゃ短いとか。
今回は胸も含め理想とするものの形だ。どれか一つ崩せばそれは私の理想とは離れるためイメージが曖昧になる。
というわけで魔王がしょぼくれてる間に急いで新しいイメージを考えています。
それからしばらくあと、魔王が調子を戻したのだった。
「取り乱してすまん」
「いえいえ、私もさっきは取り乱したし」
流石にあの落ち込みかたを指摘するのは無理。
私は笑ってさっきの私のことをだしに使って話を流した。
「さっ、さっきのなしにしたから」
「……すまん。本当にすまん」
なんか、ごめん。ホントになんかごめん。
言わないといけないもん。事後報告大事。
しないわけにはいかないからね?
「じゃあ、いくよ、チェンジ!」
変な空気を断ち切ろうと声を上げた。
先程同様一瞬光り、私の声や目線が変化した。
「おう。いいんじゃないか?」
私の姿はよく教会などに飾られているような女神像をもとに自分らしさを出した姿へ変身。
胸に関しては今とさして変わらない。
髪の色は鮮やかな青色。
身長はいつもの私より五センチ程度高い。だいたいちょっと小さい成人男性くらいだ。
表情に関してはわからないが聖母みたいなイメージをしたのでそんな感じだろう。
魔王も特に反応してないのでブサイクとかそういうのではないだろう。
「いいんじゃないかって、もうちょっと具体的に感想を言ってくれないとわかんないよ?」
「すまんすまん。そうだな。普段のリーリアから活発と非常識を取った感じだ」
ますますイメージできなくなったのですが。
というかなに?私は普段から非常識を身に纏ってると言いたいんですか!?
「うん」
「酷い!」
「はぁ、リーリア、貴女は今自分の魔法の非常識さを知らないだけだ」
どういうこと?
「とりあえず説明するが、見た目を変える魔法はここまで便利じゃない」
魔王いわく、見た目を変える魔法は確かにあるようだ。
だが、触れたときの感触や声に変化が起きるなどありえないことだ。
普通の物なら触ったときにわかるらしい。要は幻覚のようなものらしい。
「リーリアが今使っているその魔法は変身魔法だ。文字通りな」
なんだかよくわからないけど、この魔法も凄いらしい。
うーん。まぁ、幻覚と変身じゃ違うよね。
というかこれ正確には変質なんだけどね。
「ん?なんだか今ゾッとした気がするのだが」
「どうしたの?」
「リーリアのその魔法を履き違えてる感じがして得体のしれないものを感じたのかもな」
……魔王様のその勘?は凄いですね。
「多分それは私が変質って考えたことじゃないですか?」
「……ん?」
魔王が私の言ったことを理解するやいなや表情がおかしくなった。
その表情と目はこう言っている。
へ、変質魔法、だと?と。
多分。
「そんなバカな変質魔法なぞ、失われし魔法だぞ?」
失われし魔法?
なんですかそれは。
「いや、リーリアだからな。うん。そう考えよう」
あ、あの一人で納得しないで?思考を止めないで?
「よし、姿も決まったことだし」
……忘れることにしたのね。
うん、今度メリアさんあたりに聞いてみよう。
「早速リハーサルだ」
若干スッキリしないものの今は目の前のことに集中することにした。
次で女神になるの話は終わるはず。
内容盛り込みすぎて頭が痛くなってきました。




