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聖女、少しだけ振り返る



さて、突然だが私の身の丈話をしようか。


私ことリーリアは聖女だ。

それがわかったのはもう二十年も前。


その時、私はただの小さな子供。

貴族とかそういう立場はない、本当にどこにでもいるような女の子だった。


それが変わったのはさっきもいたように二十年前。

その年、私の住む街に魔物の大群が押し寄せてきた。


そこで私は両親を失った。


まだ子供だった私は何もできなかった。

脳裏に焼き付くあの光景を忘れることは未だにできない。


その後、私は行く宛もない。

そこで孤児院に引き取られた。

そこから私は変わった。



「みなさんにはこれからここで暮らしてもらいます。そこでどのようなことができるか、将来どのような仕事に付けるか知るために鑑定をしたいと思います」


孤児院は確かに、孤児を助けるために作られた施設だ。

だが、それだけでは成り立たない。

そこで、創設者が言ったのは、眠っている才能を探すため。という理由だ。


実際問題、魔物が増加していた時期だったため、少しでも優秀な人材を得たかった国はそれを承諾、設立に至った。


そのため、口ではあぁ言ってるものの、実際のところは優秀な人材を探すためだけなのだ。

まぁ、それでも助かる人が出るのだから文句は言わない。


もうお察し頂けただろうか。

そう、私はこのタイミングで


「なっ!?せ、聖、女……ですって?」


聖女となった。



それからは怒涛の展開だった。


急いで神殿に連絡が行き、そこで高位の神官などに色々と問われたり、聞かれたりなど。

鑑定結果が確実とわかったときにはあの人たちは私を崇めるようにしてたし。


「今すぐに、修行を始めましょう!」


大の大人が目をキラキラさせて、顔を見つめてくるのは、普通に怖かった。

まぁ、私にとって悪いことではないし、了承した。



私は神殿で、たくさんのことを教えてもらった。

今まで触れる機会などなかった魔法について。

作法などの礼儀。

そして、聖女となる上での制約。


制約と言っても、淫らな行為などをしないとか、神殿に属するとか色々とあったが、一言言えるのは自由が私から離れた、それだけだ。


それでも生きていけるのだから私はそれでも良かった。


それから十年。

私は努力の結果、自他ともに認める聖女になった。

私は貧しい村を周って人を助けたり、流行病が出たときはそれを収めるために真っ先に動いた。

色々な活動をした。


行く先々で私にみんな笑ってお礼を言ってもらえるから、嬉しかったし、やりがいはあった。

ホントに。


まぁ、同時に疲労とか色々と溜まっていって老後はゆっくりと暮らそうかと考え始めた。


それを続けること十年、私を知らぬ人はいないくらいには有名になった。

『慈愛の癒し手』と、私は呼ばれていたらしい。

それを知ったのは最近だけど。


ちなみにこのときには婚期は完全に逃していた。まぁ、そこら辺は考えてなかったとは言え、なんとも言えない感情があって、来世は良い人と付き合いたいと思った。


そしてきたる、今この年。

魔王を討伐するために、私に応援要請がきた。

そして知り合ったのが勇者と賢者のあの二人。


「よろしくお願いします」


そうして初めて挨拶したときにあの二人はなんて言ったと思います?


「足を引っ張るなよ女」


だ。

ちょっと、いやかなり苛ついた。


本気でグーで殴ろうかなぁって。

まぁ、やめたけど。だってそんな価値ないし。



そうして、この一年、旅をして、そして魔王を倒した。

これで嫌な旅の終わりだと思ってたけど、あんなことになった。



回想終わり。


「とりあえず、魔王を蘇生させましょう」


なぜ、そんな突拍子もないことを言うのかには当然理由がある。


「一つ、魔王自体そんなに悪い存在じゃなかったこと」


ほんの少しの間だけど戦って魔王は悪いやつじゃないとわかった。

じゃないと蘇生しようだなんて思わないし。


実を言うと蘇生魔法には、その体、そして魂の保護が必要だ。

それがなければ蘇生はできない。

勇者がとどめを刺したあのとき、リーリアは魔王の魂を保護していた。

それはたんなる気まぐれだったりするが、それが今はありがたいことだ。


「二つ、魔王がいれば大々的に戦争にはならない」


勇者たちは、というかほとんどの人間が勘違いしているが、魔物と魔族は関係はない。

昔から何故か魔族が魔物を従えてけしかけてるとか言ってるけど全く無関係だ。

だって、本人たちも襲われてるのに、それで使役してるとかないわぁ。(まぁ、私が知ったのも何年か前だけど)


今回の討伐だって、ただの誤解だし、もとを辿れば魔王が人間側の皇帝に色々と言われてたけど、無視したってのが原因だとか言うし。

魔族も人も対して変わらないのにねぇ。


「三つ、私の憂さ晴らし」


あいつらには一度痛い目にあってもらわないとねぇ。

匕ッ匕ッヒィ。


魔女のような笑い声が響いた。

なにもない荒野なのに。



というわけで、私は登録してあった魔王城へ転移を行った。

ちなみにこの転移魔法、あの二人は私が使えることを知らない。

隠してきたわけじゃなく、制限していたのだ。

私は聖女だから魔法に長けているわけじゃないってね?


その制限もさっき私が死んだことになったから外した。聖女らしくあろうとするための制限は私にはもう必要ないから。


三秒ほどの静寂のあと、リーリアの足元が光輝き、リーリアを消した。



景色が変わったそこは禍々しい気配の漂う玉座の前。

そしてそこに横たわる魔王の体。

ちなみにだが今代の魔王は女性だったらしいのだが、鎧を着込んでいて顔とかわかんなかった。

倒して始めて知ったよ。まぁ、それに気づいたの私だけだったけど。


「さてと、リザレクション」


神々しい光がリーリアの周囲を取り巻き、その光はリーリアが手を掲げると、それに応じるように一点に集まる。

そして手をその魔王へと向ける。

その光は魔王の体を包み込む。


「あとは魂を戻してあげてと」


これを忘れるとただの人形なんだよねぇ。

どこからか、夜空のような黒い球体を取り出し、それをその体に入れる。


「う、うぅ」


成功。成功率は今の所百だけど怖いんだよね。

失敗したら悪いし、最悪暴れ出すんだよね。私一人で倒せるかはわからないし。制限はずれてどれくらいの力戻ったかわからないし。


「ね、大丈夫?」


私はとりあえず魔王を覗き込んで意識の確認を行った。


「あれ、我は……っ、お前は!」

「あぁ、ストップ。大丈夫だよ。勇者君はいないから。今この場には私と貴女だけ」


私は微笑むように


「ねぇ、少しお話、しませんか?」


と、魔王を誘った。



 

ブックマーク、ありがとうございます。

たくさんの方々に見てもらえるように努力はします。まぁ、できる範囲で。


言っちゃうとこういうのは初めてだから心配だったりする。

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