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勇者、凱旋

勇者たち視点のお話。閑話みたいなものです。



俺は勇者。


選ばれし存在だ。

だから讃えられ、欲しいものは何でも手に入る。


そんな俺と同じ存在が賢者のこいつだ。


俺たちは今たくさんの女に囲まれている。

全員俺たちを讃え、媚びてくる。


やっぱり俺は選ばれし存在なんだ!

あの使えない女と違ってな!




勇者帰還の日。その日は国をあげてのパレードだった。


「勇者様よ!」

「賢者様も!」


魔王を倒した俺たち、()()は大勢の憧れの視線に愉悦に浸っていた。

俺たちは選ばれし人間なんだ。

俺たちより優れているものなどいない!


今はそんなことすら胸を張って言える。


「いいねぇ」

「そうだな。気持ちいいな」


こいつとは一生仲良くやってけそうだ。

色々とな。


気持ちの良くなった俺は下々に手を振り、勇者の剣である聖剣を掲げ、


「魔王は俺たちが討ち取った!」


と、大きく宣言した。


それだけで下々は大きな声を上げて歓喜する。


「ふっ、いいのか?」

「いいに決まってる。魔王は俺たち二人が倒したんだからな」

「二人、そうだな」


二人は黒い笑みを浮かべながらその日のパレードを終えた。



その後、王と謁見をし、魔王討伐の報告、あの女の()()を伝えた。

王は最初の報告で喜ぶが次の報告で悲しんだ。

あんなにも優しく、強いお方が。

と、嘆き悲しんだ。

周りの大臣たちも同じように涙していた。


はっ、あの女のどこにそんな価値があるんだよ。


俺はそんな表情を見せぬように俯く。

それにしても、あいつも演技が上手いものだな。



それからは多額の報酬、名声を手に入れ、俺は何でも手に入れられるようになった。誰でも俺に膝をつくようになった。誰も逆らわなくなった。



「ほら、今晩一つ、どうよ」

「えぇ、いいのですか?!勇者様と?!もちろん行かせてもらいます!」


ほらな、俺が誘えば誰もが喜んで頷いてくれる。


勇者は、この数日、女に溺れていた。

多額の報酬のほとんどを女遊びに使っていた。

賢者も同じように使ってはいるものの勇者ほどではない。


「今日は気分がいいぜ!ほらこれで高いの持ってこい!」


金を湯水の如く使っていっていた。



酔って気持ちよくなりながら、女を抱いて寝た。

最高だった。

これで酔ってなければ襲ったのになぁ。


そんなとき何故か、あの女の顔が浮かんだ。


俺が金を今みたいに使おうとしたら必ず止めに来た。

おかげで肩身の狭い生活をするハメになったんだからな。


思い出したらムカムカするぜ。

こうなったら、いいことで忘れようか、な……。


しかしそれよりも眠気の方が早く、寝てしまった。




今日も遊びに行きたいところだが、今日は会いに行かないといけないやつがいるからな。


「よう?」

「よ、今日はきたな。いつも断るくせに」

「流石に、な」


普段こういうのには出席しない賢者もきた。

それだけ、俺たちには重要なことというわけだ。


「よくぞ参られましたな、勇者様、賢者様」


俺たちを出迎えたのは一人の初老の男。


「こちらへ」


その男の名はパンテル。

この男は、この男こそ、俺たちにあの女の殺害を依頼した、もとい協力者だ。

そして何者かと言うと、


「成功したぜ?パンテル教皇様」


聖教会、トップの男であった。


「それにしても、いいのか?あれでもお前のところの大事な聖女だったんだろ?」


俺がそう聞くと、ニヤリと普段の温厚な雰囲気を捨てて


「聖女は必要だ。だが、あの女はやりすぎた。聖女として私を越える名声を得てしまった。このままでは私はいつか落とされるかもしれない。だったら殺してしまって、別のやつをたてればいい」


そういうことだった。

このじぃさん、欲望丸出しだもんな。

常々耳の痛い噂も聞くからな。

多分それを続けるためだろうな。


「このことが知れたら俺たちは犯罪者だな」

「そうだな、俺たちを巻き込んだんだ。そこはきっちりしてくれよ?」

「わかっている。そこは完璧だ。それにこれは口での話。書類も一切ない。証拠なぞこの世には私と二人の頭の中だけだ」


ちげぇねぇ。


「んじゃ、俺たちも忙しいからな。報酬と今後についてサクッと話そうや」


こうして、三人の時間は流れていった。



一方その影で。


「ふぅん。そういうことね」


一人の女性が聞き耳をたてていた。


「あいつがあの程度のやつにやられるはずがない。魔王ってのがどれほどのものか知らねぇがあの二人が生きてるんだ。それはないな」


彼女は独自に動いていた。

理由とかそういうのは特にないが、膿を掃除するためだ。


「さてと、私がいくら訴えてもこれじゃ駄目だな」


厄介だな。あのじじいも面倒なことしてくれたな。そしてあの二人は大馬鹿だな。


書類が残ってなきゃ、確かにそんなことなかった、と突っ張れば通ってしまうし、万が一露見しても知らぬ存ぜぬで通せてしまうのか。


「さて、これは本格的に一度くらい帰ってきてもらわねぇと」


恐らくどっかでのんびりしているだろう聖女様を考えながら酒を飲んだ。






凱旋の要素よ。と思いながらサブタイトル見てた。

ちなみに勇者賢者の二人の名前はなしにしてます。強いて言うなら勇者、賢者。

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