聖女、ヤクソクマモル
ふんふん。
あのあと、私は門番さんの家に戻り、少し話をしたあと、すぐに作りかけの家のあるところに戻ってきた。
「家具も買ったし、早く完成させたい」
そういうことだ。ぶっちゃけあとは内装だけなので早めに済ませたい。
それにしてもただ作りかけを終わらせてくるって言っただけなのに、めっちゃ必死に止められたなぁ。
お茶いかがですか?とか、お菓子はいかがですかとか……我ながらなんて食に弱いんだろうか。子供なのだろうか。
私は自分で言って、静かに膝をついた。
結局夜には帰るからで納得してもらった。
まぁ、それはともかくとして、今はこれを完成させなきゃね。
その後、口笛を口ずさみ、着々と家を完成させていく。
時間のことなどとうに忘れていた。
「ふぅ、あと少しかなぁ」
いい汗かいたなぁ。
まぁ、額に薄っすら程度だけど。
「さて、もう夜遅いし、野宿でもしよ、うか、な?」
な、何か大事なことを忘れている気がする。
………あっ。
ここで思い出した。とっくに夜になっていることを。
「やっべ」
急いで戻りまーす!
綺麗なクラウチングスタートを決めて走り出した。
ちなみにクラウチングスタートって言うのはって、そんなこと言ってる場合じゃないかな!
リーリアは全力疾走で村へと駆け抜けた。
「言い訳を聞こうか?」
辿り着くと早々に、いい笑顔の門番さんが私の肩を掴み、問いかけてくる。
正直怖い。
その後ろに控えてる方も怖い。
「ち、」
「ち?」
「ちょっと忘れてただけ、だよ」
シーンとなった。
無言の圧力が放たれた。
額が大量の汗が流れ出る。
「ちょっとお話、必要みたいだね」
あっ、これ、あかんやつや。
悟るも逃げられるような空気でもなく
「はい」
大人しく説教を受けることとなった。
そうしてかれこれ2時間超えの説教となり終わった頃には涙目でヤクソクマモルゼッタイと片言の言葉で呟いていた。
私は夕飯をご一緒させてもらった。
家庭的な味は美味しかった。
「さてと、明日一度自分の家に帰りますね」
改めて切り出した。
「もう帰るのかい?」
「まぁ、そんなところですね」
実際はただ魔王に会いに行くだけだけど。
家を完成させて一段落したら、と決めていた。
今回の件もあり、優先度は更に上がったし。
「家はできたのかい?」
「はい。完成はしました。家具は届けてもらうように手配済みですし、家の中なので何もなくとも生活は可能ですから」
そのへんは抜かりなしと。
言いながら自分の確認としていた。
ここでミスするとちょっと格好悪いことになっちゃうから。
行ってきます→ちょっと足りなくて帰ってきました。
恥ずかしいに決まってる!
それを避けるためにしっかりと確認しないと。
「………いいよ」
「その代わりに、ちゃんと顔出してよ?」
おかんか!って、ツッコミはグッと飲み込み、笑顔を作り出した。
「はい。お世話になりました。と言っても近所なのですぐに会えますけどね」
「それもそうか」
三人の笑う声が家に響いた。
それから、軽い世間話を挟み風呂に入り、寝た。
次の日、朝起きると二人は既に見送る準備は万端といった感じで出迎えてくれた。
「いや、気が早すぎるでしょ」
朝ご飯もまだなのに?
二人は私を子供か何かと思ってるの?
私はもう成人済みの女性!
ま、まぁ、確かに子供っぽいところもあるけど?私大人だし?聖女だし?
何の言い訳だよ。
自分で考えててバカバカしく思えた。
多分それが子供らしさだよ、とは誰でも思うだろう。
そんな感じで他愛ない話をして、勝手に色々考えて、朝食は終わった。
「じゃあ、私は帰るね」
「あぁ、嬢ちゃん、ありがとな」
そういえば二人はなんでこんなに私を大切な子供みたいな扱いを?
疑問は抱いた。けど、それは多分聞いちゃいけないことなのだと思う。
「んじゃ、お邪魔しました。またくるね、門番さん、ユキネさん」
私は手を振り、別れを告げた。
うーん、永遠の別れでもないのになぁ。
随分盛大な感じだなぁ。
確かに家に泊まるのはもうないかもしれないけど。
確かにこうやって生活するのもないのかもしれないけど。
「…少なくとも、楽しい時間だった。そう考えると惜しくなるね……」
……私もつられてしまったようだ。
さてと、ここなら誰も見てない。
歩いて帰るのは疲れるから手っ取り早くー、転移!
景色は切り替わり、私の家の前についた。
昨日完成させて、私はこの家に住む。
「設備は整えてあるから使うのは容易い。キッチンもあるし、水道は完備しているから洗い物は楽になる」
ちなみにその辺の知識はどこかのおじさんが教えてくれた。
「さてと、今はちょっと忙しい時間かな。なら、私は一休みと行きますか」
起きたらちょうど魔王の仕事が終わった頃にはなるだろう。
さっきまで寝てたから寝れないかも、しれ、な………。
寝た。どこにも寝れないような雰囲気は一つもなくお休みになった。




