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ただ私は私



どうするか?

そんなもん決まってる。


「持てる手段全て使ってやる」


考えつく限り、思いつく限り全ての魔法を試すだけだ。

数撃ちゃ当たる。

それを体現すればいい。


「ヒール」


ただの回復魔法。

変化は少し顔色が良くなったくらいだ。

だが、症状に変化は見られない。


「違うか」


回復が違うの?

状態回復は少し効き目を見せたから一応こっちも試したけどほんの少しの効果しか見られない。

状態回復の効き目もこれよりは大きかったけど、上のきのこ見たいのが一度消えただけ。


「なら次はピュリフケーシヨン」


浄化魔法。

状態回復のキュアの上位に位置する魔法。


白い光が村人を包む。

すると、きのこは先程同様に消え去る。

そして肌の色がほんの少しだけ回復した。


「………」

「や、やった、のか?」


あ、それは駄目ってどこかのおじさんが……


と、思ってすぐ。

きのこがまた生え始めた。


「やっぱりかぁ」

「な、なんかすまない」


さっき私、何も口にしてないのに。

なぜ謝られた?もしかしておじさんの言ってたことって有名だったり……。


「今はそういうのはなしだし、謝るとしたら私」


私はそう言ってもう一度感染した人たちと向き合った。


「回復は効果は薄く、無いに等しい。状態回復については効果はあるがぶっちゃけ微妙か」


呪い系統も考えたがそれならもう少し効果が現れるはずだ。


と言っても残る手段なんて、もう二つくらいしかない。

完全回復の魔法か、聖女の魔法。


前者は欠損から状態異常、呪いまで文字通り全てを完全に回復することが可能。


これは体に対してしか効果はないので外部に原因があると駄目だ。

例えば呪いかなんかで命が繋がっている、ってやつは一度祓ってももう一度繋がってしまうので関係なし。

そんな感じだ。


後者は聖女のみが使うことのできる魔法。

祈りによって、指定なしの完全回復。死以外なら何でも治すことができる。

未知の物も対象となる。

そのため、これで無理ならお手上げだ。


「それにどっちもコスパ悪いんだよね」


消費が大きすぎて連発できない。

魔力が先につきる。

そしてもう一つの理由が私が聖女と呼ばれた由縁である『光の女神』という名のスキルである。


そもそもスキルとは何か。

スキルとは全ての人に与えられる才能が形を取ったものだ。

そしてスキルには二種類あり、一つは生まれ持ったもの。もう一つは生きていく中で開花させた才能の二つである。


どういうものかというならば、例えばあの馬鹿二人組どちらも持っていた自己再生という名のスキル。

あれは後天的なものであり、名の通り再生能力を飛躍的に高めることができる。

他には魔導の意思という歴代の賢者が持っていたと言われるスキルは生まれ持ったもので、それは魔法の意思を知ることができ、自由自在に操れるとか言われている。


私の光の女神もそれで、生まれ持っていたのかは不明だがとりあえず持っていた。


効果は神へと手を伸ばす癒やしの力と意味のわからんものである。


なんだかわからなくて一度使ってみたら、それはそれは酷いことになった。

その地域一帯が私の魔法の対象となったのだ。

あ、勘違いしないでほしいんだけど、一帯にいる人とかじゃなくて土地も空も海も全てが対象。

それを知らずにヒールを撃ったは良いものの、木々が一気に生い茂り、魔物たちは元気になりエキサイトして襲ってくるわ古傷が治った人がバーサークして魔物をバッタバッタとなぎ倒すわなど色々とカオスだった。


それでわかったことは一つ、私が超絶パワーアップするスキルなのか、それだけだった。


と、ここまで説明してどこが問題か、そりゃ当然魔物の活性化、また私の身バレの二つ。

じゃなくて、これが上位の魔法を使うと勝手に発動してしまうことがあるのだ。


「本当にこれは厄介なものね」


ため息を付きながらも私は準備を始める。

なんの?当然、聖女の魔法の準備。


その場に正座で座り、胸の前で手を組み祈る体制を取る。

そして対象に意識を向けて何をするかを決める。


「我は祈る」


そして詠唱を開始する。


「罪なき人の幸せを」


こんなことで亡くなるのは、絶対に違う。

人の最後は、できるだけ多くの人に見送られながら寿命で死ぬのが一番良いと思う。

だからこそこんなことで目の前の人たちの未来が奪われてほしくない。


「光り輝く癒やしの光よ」


何故?

いつも、こうやってたくさんの人を助けるときに聞かれる質問だ。

確かに、私に得などなく、赤の他人のためにそこまで頑張れるのか、なんて私自身が一番理解していると思う。


だけどやめることはできなかった。

何故?その質問に答えを出すとするのならばこう言おう。


そこに、理不尽な理由で生を奪われようとする人がいるから。


私はいつもその答えを口にしていた。


「全てを癒し、再び彼の者に生きる力を」


「パーフェクトリバース」


その村を覆い尽くす光が溢れた。


その光は一人、また一人と人々の病を治していく。


パーフェクトリバース。

回復を超越した聖女のみが使うことのできる聖女の魔法、再生魔法。

これは対象の体を一番正常だった状態に戻すことのできる魔法。

持続時間はなし。再生された体はそれで固定される。それがその者の体になる。固定後にまた病気になれば普通に病気になるし、時間が経てば普通に成長もする。

わかりやすく言うなら若返りの魔法とでも言うべきだろう。


「こ、これは」

「どう?全員治った?」


少しふらつきながらも、門番さんに確認を取ってもらう。

一人、また一人と数えていくうちにその足取りは重く、その表情には感謝と安堵が流れていた。


そして


「全員、完全に治りました」


震える声で私にそう告げるのだった。




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