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あくまで聖女でも人間でもない



村。

どんなところだろうか。


イメージはこう、近所の人とほのぼの暮らしている感じ。

実際に前に見たのは確かそんな感じのと、強欲爺さんが威張り散らすところや子供の村と名付けた半数が子供の謎の村などなど。


あれ?私ってイメージとかけ離れた村を見てきているのになんでイメージ通りのを期待してるんだろう。


自らの疑問に頭を悩ませながらも私は村のある方へと歩みを進める。



そうして、私は村の近くの道を歩いていた。


「人は見られないんだよね」


さっきから誰もいないんです。いくら魔王が倒されたとかそういうのがあっても誰もいないとは。

なんかあるのかな?


「まぁ、それも行ってみればわかる」


悩んたときはできるだけ明るく前向きな考えを持つべき。

どっかの爺さんが言っていたし。


「さぁてと、そろそろ見えてきた」


あの小さな入り口。

周りは塀で囲まれていて、入り口には人が立って見回りをしている。


……というか、ここ一度きたんだよね。仕事で。畑作りした。


「少しは楽になるかなぁ」


誰か私を知っていてくれるとありがたいんだけどなぁ。

まぁ、そんな都合のいいことあるわけないかな。


「むっ、何者だ!」


そうこう考えてるうちに入り口にたどり着いていた。


「この近くに引っ越してきました。リーリアです。必要なものとかを買いにきました」


嘘偽りなく、今からすることやここにくる経緯をコンパクトにまとめて伝える。


「人間が?この近くに……」

「駄目ですか?」


どうやらこの人は少なくとも私が人間だからと切って捨てるような人ではないみたいだ。


しかし、なんでこんなに悩んでいるんだろうか。


「すまないが、また今度にしてくれないか?」


申し訳無さそうに私にお願いをしてくる門番さん。

その表情や声色を見聞きし、私は何かある。またあったと確信した。


ここで帰ってもいい。

けれど、私の頭の中にはすでに助ける以外の選択肢はゴミ箱の中だった。


「それは、無理なご相談ですね」

「なに?」


私の言葉に疑問を持ち、武器を持つ手に力が入る。

それでも私は言葉を続ける。


「私はね、ここの近くに越してきたって、言ったでしょ?だからここの村を見捨てるとかそういうことはできないし、しないの」

「ッッ、なぜ、困っていると?」


私は笑みを浮かべて、こう言う。


「だって、貴方、優しいでしょ?だから私に帰るように申し訳ない顔をして言った。それなら困ってないと考えるほうがおかしいです。それに、今自分で言いましたよね?」


私は一言も困っているか?なんて類義語も含めて言っていない。

それなのに困っていると言ったのならもう間違いはない。


「うっ………助けて、くれるのか?」


諦めたように、縋るように私を見る。

そして懇願する。


「私ができる範囲は」

「感謝する」


多分彼は誰にも頼れないような状況で心が磨り減っていたのだろう。

少なくとも私にはそう見えた。

相手を知り、理解する。

それが私の師の言い分でしたから。


思い出すのは酒癖の悪い師の姿。

多分、今も酒を飲んで誰かに悪がらみしてそうだな。


「それはともかく、状況は?」


自分の変な方向へ進んだ思考を諌め、本題に移った。


「先日、魔王様が訪ねられた翌日。この村に謎の病が発生した」


病?

しかも魔王様が訪ねた、つまり私たちが帰ったあとに?


「最初は5人程度だった。だけど次々と他の人に感染って行って……もう、村で動けるのは、自分を含めて手で数えられるほどで」


十人未満。

そんなバカな話があるか。

たった数日。

その数日でそこまで拡がるのか?

私もたくさんの病を見てきたけどそんなにも感染ペースが早いのは初めてだ。


「一応、念の為にプロテクション」


自身にピッタリと張り付くように透明な壁を張る。

もちろん門番さんにも。


この魔法はシェルターと違うのは、範囲だ。これは人一人にかけるような魔法で、シェルターは範囲でかける。

範囲を絞った分効果は高くなり自然影響、風の一つも通さない物となった。

今回のも菌だというのならこの魔法が最適と判断した。


「こ、これは」


私の魔法に気づいた門番さんが声を上げた。


「一応ミイラ取りがミイラになるといけないから」

「……ありがたい」


私は門番さんの案内に従い村の奥へと進む。

すると、そこには、地獄絵図のような光景があった。


「な、なに……これ」


そこには、肌をまるでカビのように緑色に染まった人たちがたくさん、死にかけている。血を吐きながら、倒れる人。少しでも早く楽になろうと死のうとする人。

それに何と言っても目立つのは、体からきのこのようなものが生えている人。正直、これが半数だ。


「見たとおり、肌色の変化、またその人のエネルギーを奪い繁殖のようなことをする、あのきのこのような物を生やす症状が主な症状です」


思ってたよりも大規模なものだ。

それにこれはおそらく感染力の高いものだ。

ほっとけば今すぐにでも隣へ隣へ広がりかねない。


ここで止めるしかない。


「それに……」


この苦しむ人たちを、なんの罪もない人たちをこのまま苦しみ続けてほしくない。


「私の魔法が通じると良いけど」


この変化に関しては状態異常と認識していい。

だからまずはそれからだ。


「エリアキュアー」


範囲で味方の状態異常を回復させる魔法。

催眠や混乱、睡眠に麻痺、毒となんでもござれな万能状態回復魔法です。


さて、どうなるか。


「生えていたきのこが消えた………けど」


門番さんの言うとおり、生えていたものは消えた。

けれど


「肌の色も戻らない。それにきのこがまた生えようとしてる」


……どうする。


リーリアは目の前の状況に対して頭を回した。



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