聖女、家を作る その2
飯を作るためにまずは食材を手に入れないと。
近くに食べられるやついたかなぁ。
きたばっかりだからそればっかりはわからないなぁ。
「まぁ、上から見ればいいか」
というわけでアイキャンフライ!
私は飛んだ。
何かいるかなぁ。
しばらくその辺り一帯を見回しているが、木々があって上手いこと見つけられない。
見つけてもすぐに逃げられる。
補足する術は持っているものの毎日このようなことをするとなるとある程度慣れておかないといけないから今回はそっち系の魔法はなし。
「……んん?いた!」
そして粘ること数十分。
リーリアの目に一匹の猪が写った。
それに一気に上空から迫りながら魔法を発動させて地面に着地する寸前に猪と入れ違うようにして、魔法をその首へと放つ。
使った魔法はホーリーカッター。
光の刃。
それはなんの抵抗もなく猪の首を切断した。
「綺麗に斬れたね。ふぃ」
なんだかいつも普通に、してないけど、いつも食べるときとか特に疑問を持ってなかったけど、こうやって命をもらって私たちは生きているんだよね。
なんだかせつなくなった。
「でも、私が何を思っても、どうにかなるようなものじゃない」
そうして私たちは生きているのだから。
「……さて、あとは山菜とかも取れば丁度いいかな」
そんなことを考えても何にもならない。
なら、私は私らしくやるだけ。
しっかりといただく。それくらいしか私は弔う方法を知らない。
山菜を手に収まる程度見つけ、私の土地に戻った。
肉と山菜。そして秘密道具シリーズが一つ調味料を使い、美味しく調理しようと思う。
「と言ってもこれは丸焼きが美味しい手合だ」
料理じゃない?いいや、立派な料理さ。
というわけで始めようか。
「ファイヤ」
まずは火を起こします。
「血抜きは済ませてあるので全体に均等に焦げ目がつくまで焼きます」
近くの蔓を使い、太めの木の枝に縛り付けてクルクルと回しながら火を通していく。
「んん、もうちょっとかな」
その間に山菜を洗い、葉の上によそう。
「そろそろ、頃合いだね」
そうして焼けた肉をその上に移動させる。
「そして塩胡椒を適量かけて完成です」
いい匂い。
お腹をちょうどよく刺激するね。
「それじゃあいただきま……ナイフとフォークの用意がまだだった」
チョチョイと魔法で作る。
流石にナイフは持ち歩いていません。
サバイバルナイフはあるけど。
「今度こそいただきます!」
ナイフを入れると皮がパリッと音をたてる。
そして肉汁が光を反射させながら流れる。
それを口の中にいれる。
「うぅん!おいひい!」
塩胡椒が肉の味を引き立ててより肉肉しさを出して美味しい。
少し油っぽいところもこの山菜が中和してくれる。
この山菜も山菜で、味がしないわけじゃなくて、甘みがありつつも水々しさがあって食べやすい。
これは最高だ。
「いやぁ、これなら料理が楽しくなりますなぁ」
さっき、猪を狩ったときの感情はどこへやら。
リーリアはその美味しさをひたすらに噛み締めた。
「ごちそうさま」
食べ終わった。
美味しかったよ。流石に魔王のやつには劣るけど十分に美味しい。
けれど毎日は飽きる。
これからは自分で毎日作っていくからね。
「さて、家を作り再開」
ナイフとフォークをおき、代わりに作業道具を持ち、作業を再開した。
それから数時間。
形が目に見えてできていた。
「けど、ここまでかなぁ」
空を見ると、雨雲が近づいてきている。
雨自体防ぐことはできるけど、作業は時間的にも止めるべきだろう。
ということで今日の作業はここまでとなった。
「えっと、シェルター」
雨に濡れないように、私は周囲にシェルターという魔法を張る。
これは名の通り、周囲に壁を張る魔法だ。
特にシェルターは物理や自然に対しての効果が高い。代わりに魔法には効果が薄い。
とりあえず、これならば雨の一滴通すことはないだろう。
「というわけでおやすみ」
テントに入り布団に潜り、私は意識を落とした。
翌朝。
「おはよう。って、誰もいないか」
ふわぁ、いい天気。
時間がどれくらいかわからないけど、昼前くらいかな。
「とりあえず、飯は少し置いとこう」
今は完成させるべきだろう。
もう少しで外は完璧に完成する。
そちらを完成させてからのほうが区切りもいいから。
というわけで家作りに取り組んだ。
「完成!」
そうして黙々と作業を続けてから2時間程度。
ついに、ついに!
「私は家を完成させたぞぉ!」
まだ内装は終わってないが屋根の下で寝ることはできる。
青空天井もいいけど、やはりちゃんとした屋根の下で寝たいし、休みたい!
まだテントみたいな感じだけどもね。
「でも、ここまでできたらもう時間は対してかからない」
家具やら何やらを作るのは本当に一瞬だから。
何なら買ってくればいいわけだし。
……あれ?買ってくれば?
ここでようやく、買ってくるということに気づいた。
「あぁ、確かにそうだよね。全て手作りにする理由なかったよね。というか食料もそっちのほうが良かったよね」
今さら気づいても……いや、まだ遅くないか。
家具は今から作る予定だったからまだできてない。
なら、買いに行くのも問題ない。
それに食料もそっちで買えばいい。
幸い私にはお金がある。
「ただ一つ問題があるとしたら」
……私が人間ということだろうか。
毛嫌いされたりしてるかとか私は知らないが、あまり良い感情を持っていないのは確かそうなんだよね。
少なくとも人間は魔族たちを苦しめる害悪だから。
さて。どうしたものか。
いつまでも自給自足をやっていけるほど甘くはない。
そのためにも行くべきだろう。
「ま、最悪魔王を頼ればいいか」
魔王を頼るのは最終手段だけどね。
自分で言っててそりゃないわぁ、とは思うけどね。
だって、王様を呼んでくるとか、平民とかからしてみれば恐怖でしかないよね。
乾いた笑いを上げるのだった。




