聖女、家を作る その1
土地をもらった。
芋づる式に私は家を手に入れた。
まだ、作ってないんだけどね。
「えっと、早速行ってみていい?」
「送るぞ」
早く、早く行きたい!けど、今は我慢。
そういうのは家を作ってからだ。
だから今は声を大にして喜んだらいけない。
それをしたら気が抜けそう。
今すぐに動きたくなくなる。
そう考えてはやる心を押さえて、馬車に乗り込みその土地のある場所に向かった。
お、おぉ、ぉぉ!
広がる自然、ある程度開けた土地、そして買い出しとかに便利な位置!
完璧ですわぁ。
「これは勝つる。いや、もう勝った。人生勝ち組!」
「喜んでくれて何よりだ」
本当にありがとうございます、魔王様!
これを紹介して買ってくれた魔王様には感謝感激雨あられってやつですな。
「じゃ、我はこれで」
「うん、ホントにありがとね。家できたら遊びに行くね」
「うむ。………突然目の前に転移は止めてくれよ」
しないって。
転移はするけど。
たまたま目の前にいたらどうしょうもないけど。
「……するなよ?」
そんなに念を押さなくても
「大丈夫、だよ?」
少し確信はできないけどね。
「まぁ、今はそれでよいか」
あっ、絶対信用してない。
けど別に悪いことじゃないからいいか。
「じゃあまたね」
私はそこで魔王と別れる。
さてと、家、作りますか。
「まずは基盤。ある程度できてるけど、これじゃ心配だから……アースクリエイト」
土を作る。ただし元からあるものを補強する形で。
大雨とかで流されたり地震で家が崩れたとか洒落にならん。
「……よしこれで大丈夫かな」
地盤は完成。
次は……木造にしようかな?
燃えるとか怖いけどそこはエンチャントで不燃とかでなんとかなるでしょ。
「じゃあ、木はこの辺のをもらうとして、設計図を作るか」
完成予想図はあるけど設計図を使ってやる方が便利、というか楽。
失敗も少なくなるしね。
「簡易的な机を出して」
椅子も作り書こうとして、紙がないことに気づく。
「じゃないな。地面にでも書くか」
なんのために作ったのよ。
いやなんかせっかくなのに消すのはあれだから取っておこう。
ということで机と椅子はその辺によせといてさっそく書いていきましょう。
私は木の枝を持って地面にスラスラと設計図を書いていく。
書きながらも、修正や変更点を見つけては書いていく。
そうすればいつの間にやら立派なものが出来上がっていた。
「よし、ちょっと大きくなったけど、十分いけるね」
ただここまで大きいとちょっと木造は無理かなぁ。
魔王城の半分くらいの大きさだ。
なんのためにこんなに大きくするんだか自分でも途中からわからなくなっていた。
けど削るところやいらないところもないので結局変更はなしで作成に入った。
木造建築だと、この大きさを支えるのは、現時点での材料では無理だ。
だから石材に切り替える。
「石材なら私がちょちょいと作れるからね」
ちょちょい、よし、完成。
使った魔法の名前はクリエイトブロックだ。効果は今のとおりだ。
「あとは、これを繋ぎ合わせて組み立てていく」
ぶっちゃけこれが一番難しいけど、二日あれば行けるね。
流石にこの工程に使う魔法はない。
そのため全て手作業だ。
まぁ、身体能力の向上くらいはするけど。
「今日はここでおしまいかな」
だいたい三分の一。
それくらいは完成した。
けれど今日は暗いし眠いのでここで打ち切り、私は就寝する。
寝る場所はウィンドカッターで草刈りなどを済ませておいた場所にテントを張りそこで寝る。
ちなみにこのテントは私の持ち物の一つである。
服の裏に隠してあった秘密道具ですわ。
「あいつらもこれには気づかなかったらしいし」
ぶっちゃけこの秘密道具シリーズがあれば私は結構本気で一二年は生き残れる自身がある。
「まぁ、どうでもいいこともこれくらいして寝ますかぁ、フワァ」
欠伸をしながら私はテントの備え付けの布団に潜り就寝した。
翌朝。
「朝ぁ?」
寝癖をボサボサに立てて、よだれの残る口元を拭いながら起きる。
私は寝相は悪くはない。
けれど髪や口元など姿勢以外が悪い。
その辺は旅をしている間は隠し通していた。
「クシ……ない。髪を直すの面倒なんだけどなぁ」
そうは言いつつもさくさくと髪の寝癖を直していく。
「よし、直った。あとは、着替えっと」
って、ないんだった。
手持ちの服は着ているこれだけだったわ。
「仕方ないか。クリーン」
汚れを落とす魔法。
簡単そうに見えて実はかなりの難しさ。
詳しい説明ははぶくけど、これは汚れだけを指定しそれを浮かし取る、そんな魔法だ。
大体の人はこの指定ができずに失敗するのだ。
それをリーリアは平然と使っている。
「まぁ、本当はしっかりと洗いたいけど、仕方ないか」
お金はあるけど、今は家が優先だし。
昨日の続きといきますか。
私は昨日と同様にどんどんと組み立てていくのだった。
日が真上を過ぎた頃。
私は作業を一度止め、食事の準備にかかった。
「お腹ペコペコです。秘密道具の一つに万能調理器具を持ってるけど食材はないから、今から取ってこないと」
買ってくる。その選択肢は今のリーリアに存在しなかった。




