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聖女はお亡くなりにならない



「今、なんと?」


私は一切揺るがない、それなのに信じたくないような声で空色の眼差しを彼らに向けた。


「聞こえなかったのか?魔王がいなくなった今、お前はいらないんだよ」


しかし、現実は変わらない。

目の前の男は私をいらない、そう言ったのだ。


「なぜ、なぜですか!」


声を荒らげ食い下がるように問いの言葉を続ける。


私は何もしていない。

私が何をした。


私は聖女として役目を十分以上に果たしていた。

別に私の自画自賛ではない。それだけのことをしていた。


今だって魔王討伐の帰りなのだ。

魔王討伐でも聖女しか使えない魔法で魔王を弱らせた。

それを目の前の男、勇者と賢者が魔王を倒した。


恐らくこの二人の力だけでは弱体化なしの魔王を倒すことは叶わないはずだ。

何故なら弱体化ありの状態でギリギリ、余裕はなかったはずだ。


そんな私を何故……いや、逆か。

そんな私だからか?


「幸い、ここには誰もいねぇ」


気持ちの悪い笑みを浮かべて、腰の聖剣を抜く。


「その前に、なぜ、こんなことをするのですか」


今は少しでも時間が欲しい。

なるべく長く、話をしなければ。

死にたくない、その一心で。


「なぁーに。お前がいっつも目障りなんだよ。いっつもいっつも後ろからこそこそと逃げてるだけのようなやつが俺たちと同列に扱われるなんて可笑しいだろ?」

「私が逃げてるだけ?」


もしかしてこいつら、回復されてないなんて思ってるの?

確かに勇者にも賢者にも自己再生というスキルがある。

それだけで治せるような傷ばかりじゃなかった。

この二人がずっと全快の状態で戦え続けられたのは私が持続型のもので常時癒やし続けていたからだ。

まさか、この二人は自分のスキルのお陰とか思ってるの?


「わかってないようなら言いますけど、私はいつも二人に常時回復の魔法をかけてました。また魔王戦に限らず、いつも魔物たちの戦いでも有利に進められるように動きを鈍くしていたのも私ですよ?」


事実を淡々と答える。

もしかしたらの心も込めている。


「はっ、嘘つくなよ」


その言葉を聞いたとき、私は諦めた。

というか愛想尽かした。

ついでに準備できたし。

けど、もう少し話を聞こう。


「私を殺して、ただで済むと思ってるの?例え誰も見てなくても、状況がわかってても」

「それに関してはもう手は打ってるよ」


?この二人ができるわけない、確かに名声などは持ってるけど二人にそれだけの能力はないはず。

裏に誰がいるの?


「もう、良いだろ?」

「そうですね。それでは逃げさせてもらいますっ」


事前準備していた魔法、ホーリーランス。

威力は確かに低いが逃走するだけなら十分な魔法だ。


それを放った瞬間に全力で逃走を開始する。


「残念だったな」


しかし、それは破綻してしまった。


「カハッ」


胸の辺りが熱い。

視線を下に向けると聖剣の先が私の胸から生えていた。


「所詮は後ろでコソコソすることしかできない女だったわけだな」

「かぁっ、ぁ」


聖剣が体から抜かれ、私の体は支える力を失くしその場で倒れた。

そしてそこで私の意識は途絶えた。






しばらくして、私の死体となった体を白い光が包み込んだ。


「よし、上手くいった。所詮は強いだけの馬鹿ね」


意趣返しか、意識の途絶える直前の言葉をもらって今ここにいない二人を罵る。

そして、罵ったあとはただ込み上げてくるものだけだ。


「………馬鹿ね、本当に馬鹿」


それは勇者と賢者の二人に言った言葉じゃない。

私自身へのものだ。


思い返してみれば、あの二人が私をよく思わないのは薄々気づいてた。

それなのに、この可能性を考えてなかったなんて。


「さてと、四日かぁ」


一度色々と考える前に今は今のことに集中しよう。


今回、使った魔法は遅延発動型の蘇生魔法。


念の為に二人が到着してから説明とか色々と計算して四日に設定した。


最初に放ったホーリーランスはブラフでこっちが本命。

あのホーリーランスのあと、すぐに遅延魔法を設置、そして肉体の腐敗が進まぬようにプロテクションの魔法と魂を繋ぎ止めるソウルコンバージュをかけたのだ。


その企みはしっかりと成功した。

良かった。


それはそうとして、死んだ場所から対して体が動いてないところ、そして私の装備一式がないことから見るに、二人は私が死んだことを含めて魔王討伐を終えたことを報告しているのだろう。

装備はその証拠にでも持っていったのだろうか?それとも金のためだろうか?どっちでもいいか。


だとしたら、今私が戻るのは悪手だ。

暗殺とかされそうになったり、偽物とか言われて色々言われるのもホントに不味い。

それにあそこにはたいして未練はない。



それならば私は今、何をするべきか。


「……まずは、あの二人に身の程をわきまえさせないといけないわね」


ニヤリと久しく使ったことのない黒い笑みを浮かべた。

そして、その場で宣言する。今の自分とこれからを。


「今の私は自由だ。そして聖女という名もない、家の名もないただのリーリア。責務からも何もかも解放された。だから自由に悠々と生活をしようか」


そのためにまず、私がするべきこと。


「よし、魔王を蘇生しよう」


それは、つい先日倒した魔王を蘇生させることだった。




暇つぶし?のような感覚での投稿です。

更新はぼちぼちやっていくので気長に待ってくれるとありがたいです。


少しでも面白いとか思ってくれると嬉しいです。

よければ評価などもお願いします。


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