表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

童話とか児童ジャンル

"にょろにょろ様"のおはなし

※挿絵があります。不要な方は表示をOFFにしてください。お手数おかけします。

 太陽にほど近い場所に、その島はありました。

 どこまでも青い海、白い砂、命あふれる緑の森。


 島に住むラキとサーリは、仲良しの男の子と女の子。

 ふたりはいつも一緒に遊んでいました。


 村の守り神、"にょろにょろ様"といっしょに。





 "にょろにょろ様"は、大きな大きなヘビでした。

 とても陽気な神様で、村の大人たちとお酒を飲んで騒いだり、村の子ども達と笑いあったり。

 皆と、いつも楽しく過ごしていました。


 深い森に囲まれた村は、森の怪物たちに(ねら)われましたが、いつも"にょろにょろ様"が助けてくれていました。

 広い海に囲まれた村は、海の怪魚たちに(おそ)われましたが、いつも"にょろにょろ様"が守ってくれていました。


 だけど、ある日のこと。


 "にょろにょろ様"は、何万回目かの脱皮(だっぴ)に、失敗してしまったのです。


 皮がうまく脱ぎ切れず、皮膚(ひふ)に穴が()いて、そこから病魔にやられました。


 "にょろにょろ様"は、いなくなってしまいました。





 それからです。

 村は、いろんな脅威(きょうい)にさらされるようになりました。


 木の実や獲物(えもの)を求めて入った森で、怪物に追われ、魚を()りたい海で、(あば)れる怪魚に(なげ)く。


 困った村人たちは、"次の神様"を探すことにしました。



 そして、大きなカエルの神様を選びました。


 けれど、カエルの神様は、"にょろにょろ様"とは違いました。


 "村を守るかわりに、人の子を差し出せ"と言いました。



 村では話し合いが(おこな)われ、カエルの神様に守ってもらうお礼には、可愛(かわい)いサーリが指名(しめい)されました。



「そんなのダメだ!!」


 サーリが大切なラキは、強く反対します。

 けれど、大人たちは聞く耳を持ちません。



 ラキは、"にょろにょろ様に帰ってきてもらえたら"と、思いました。



 そんなラキには、昔、村のおばばから聞いた話がありました。



 "島の奥地(おくち)()き出る七色の綺麗(きれい)な水には、イノチを(あた)えるフシギな力がある"。



 ラキは、仲間の子どもたちに手伝ってもらい、植物の(つる)()んで、大きな(なわ)を作りました。

 その縄に、"にょろにょろ様"が最期(さいご)(のこ)した皮を(かぶ)せました。


 まるで、"にょろにょろ様"が戻ったようです。


 この(なわ)(かわ)に、"イノチの水"を使えば、きっと"にょろにょろ様"は生き返るに違いありません。



 村からそびえるように頭を()き出した"にょろにょろ様"の人形に、森の怪物たちが(おのの)いている(すき)に。


 ラキは森に分け()りました。


 "イノチの水"を探しにいきました。










 ラキがやっとのことで、"イノチの水"を()んで戻ると、村は大変なことになっていました。


 "にょろにょろ様"の人形に気づいた大ガエルが、怒って村の家々を(こわ)し、人々を追いかけていたのです。

 大ガエルは、"にょろにょろ様"のことがずっと(きら)いでした。だから、人形を作った村人に、腹を立てたのです。


 なんということでしょう。

 村を守ってくれるはずの大ガエルは、森のどの怪物よりも、海のどの怪魚よりも、おそろしい存在(そんざい)でした。



 大ガエルの目の前には、サーリ。




 サーリが飲み込まれる!!




 サーリを守るために大ガエルの前に飛び出したラキは、簡単に吹き飛ばされてしまいました。





 そして。


 手に持った"イノチの水"ごと、"にょろにょろ様"の人形の口に、すっぽりと。

 入ってしまったのです。






 次にラキが気がついた時、ラキはとても(おどろ)きました。


 だってラキは、大きな体の"にょろにょろ様"になっていたのですから。




 "にょろにょろ様"になったラキは、暴れる大ガエルを(おさ)さえつけ、()()げ、やっつけました。






 村は、静けさを取り戻しました。


 "にょろにょろ様"が生き返ったと、村人たちは大喜びしました。


 だけど、ラキは困ってしまいました。


 どうやったら、元の姿に戻れるか、わからなかったです。






 悲しむラキに、そっとサーリが近づきます。


 (すべ)てを見ていたサーリには、かえってきた"にょろにょろ様"が、ラキだとわかっていたのです。




 

 サーリは、"にょろにょろ様"になったラキの(ほほ)に手を当てて、言いました。



「ラキ、ラキ。あなただけを"にょろにょろ様"にはしない。私も一緒にヘビになる。さあ、私を食べて」


挿絵(By みてみん)



 ラキはびっくりしました。

 サーリを食べるなんて、そんなこと出来(でき)るはずがありません。


 大ガエルからサーリを助けたのは、自分が食べるためではないからです。


「そんなことできないよ」


 サーリ、君にはずっとずっと生きてて欲しいんだ。これからも、幸せに笑っていて欲しいんだ。




 ラキはそう言って、ポロポロと涙をこぼしました。




 すると。

 涙は、ラキの、"にょろにょろ様"の体をつたって、お腹の近くに()()んでいきます。



 ペリ


 ペリペリペリ……





 涙が流れ()ったその場所から。


 "にょろにょろ様"の皮がめくれ、(やぶ)れていくではありませんか。




 お腹の部分は、"にょろにょろ様"が脱皮(だっぴ)失敗(しっぱい)した場所でした。



 ほころびた部分から、皮が()け、"にょろにょろ様"の皮は、花びらのように細かく、()()りに千切(ちぎ)れていきました。



 皮が、なくなった後には。



 ラキが立っていました。

 元の、人間のままの姿で。



 植物の(つる)で作った(なわ)が、ズドドンと地響(じひび)きを立てながら、うしろに(くず)れ落ちます。





 ラキとサーリは抱き合いました。


 固く()まれた(なわ)よりも、強く、きつく。





 遠巻きに見ていた村人たちが、そろりそろりとふたりを囲み……。

 何が起こっていたのか、すべてを知りました。





 その後、村には、魔物よけとして、大きな縄が飾られるようになりました。

 縄は、神様の縄として、今日も村を守っています。


 でも、本当に村を守るのは、人々の想いです。



 ラキは村長になり、サーリや村の皆といっしょに、"にょろにょろ様"のお話を伝えながら、頑張(がんば)りました。



 島の村は、末永(すえなが)(さか)えたということです。





 <おしまい>

お読みいただきありがとうございました\(^▽^*)/


企画のお題を聞いた時から書きたかったのに、「5/22に間に合わない」と思って、ほぼ諦めてて……でもやっぱり諦めきれずに、朝起きて何とか仕上げました。いつもの童話と感じが違うけど、お気に召していただければ幸いです。


カエルで海の守りはどうするつもりだったのか……。


注) お星様の下にイメージ・ラフがあります。

お星様、もしよかったら少しでもどうぞポチってやってください♪ 

よろしくお願いします(*´・∀・*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5f766f7b-s.jpg
ご感想たくさんありがとうございました\(^▽^*)/
お察しの通り、作中の縄は「しめ縄」イメージ
だけど舞台は南の島;;; えへっ
太陽にほど近い場所にある島にすることで、
「ひだまり童話館」の"ひだまり"部分を何とかフォローしようとしたという……。
それじゃ、ひだまってないね?!
― 新着の感想 ―
[一言] 大好きな女の子を食べられるわけがなーい!! ラキ、人間に戻れてよかったです〜。°(´ฅωฅ`)°。 このカエルめ!カエルめ!と読み進めました。笑 心優しいにょろにょろ様、イラストはラキです…
[一言] 途中、ラキがこのままにょろにょろ様になっちゃうのかと思ってしまいましたが、良きラストでした。 こんな伝承、どこかにありそうですね! 民話に詳しいみこと。さまならでは童話。面白かったです!
[良い点] 童話でありながら生贄のお話でちょっと驚きつつも、温かな終わりでホッコリしました! にょろにょろと書くと、蛇でも可愛く見えますね(あ、でも私はリアルの蛇も全然平気なタイプです) [一言] 私…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ