"にょろにょろ様"のおはなし
※挿絵があります。不要な方は表示をOFFにしてください。お手数おかけします。
太陽にほど近い場所に、その島はありました。
どこまでも青い海、白い砂、命あふれる緑の森。
島に住むラキとサーリは、仲良しの男の子と女の子。
ふたりはいつも一緒に遊んでいました。
村の守り神、"にょろにょろ様"といっしょに。
"にょろにょろ様"は、大きな大きなヘビでした。
とても陽気な神様で、村の大人たちとお酒を飲んで騒いだり、村の子ども達と笑いあったり。
皆と、いつも楽しく過ごしていました。
深い森に囲まれた村は、森の怪物たちに狙われましたが、いつも"にょろにょろ様"が助けてくれていました。
広い海に囲まれた村は、海の怪魚たちに襲われましたが、いつも"にょろにょろ様"が守ってくれていました。
だけど、ある日のこと。
"にょろにょろ様"は、何万回目かの脱皮に、失敗してしまったのです。
皮がうまく脱ぎ切れず、皮膚に穴が空いて、そこから病魔にやられました。
"にょろにょろ様"は、いなくなってしまいました。
それからです。
村は、いろんな脅威にさらされるようになりました。
木の実や獲物を求めて入った森で、怪物に追われ、魚を捕りたい海で、暴れる怪魚に嘆く。
困った村人たちは、"次の神様"を探すことにしました。
そして、大きなカエルの神様を選びました。
けれど、カエルの神様は、"にょろにょろ様"とは違いました。
"村を守るかわりに、人の子を差し出せ"と言いました。
村では話し合いが行われ、カエルの神様に守ってもらうお礼には、可愛いサーリが指名されました。
「そんなのダメだ!!」
サーリが大切なラキは、強く反対します。
けれど、大人たちは聞く耳を持ちません。
ラキは、"にょろにょろ様に帰ってきてもらえたら"と、思いました。
そんなラキには、昔、村のおばばから聞いた話がありました。
"島の奥地に湧き出る七色の綺麗な水には、イノチを与えるフシギな力がある"。
ラキは、仲間の子どもたちに手伝ってもらい、植物の弦を編んで、大きな縄を作りました。
その縄に、"にょろにょろ様"が最期に遺した皮を被せました。
まるで、"にょろにょろ様"が戻ったようです。
この縄と皮に、"イノチの水"を使えば、きっと"にょろにょろ様"は生き返るに違いありません。
村からそびえるように頭を突き出した"にょろにょろ様"の人形に、森の怪物たちが慄いている隙に。
ラキは森に分け入りました。
"イノチの水"を探しにいきました。
ラキがやっとのことで、"イノチの水"を汲んで戻ると、村は大変なことになっていました。
"にょろにょろ様"の人形に気づいた大ガエルが、怒って村の家々を壊し、人々を追いかけていたのです。
大ガエルは、"にょろにょろ様"のことがずっと嫌いでした。だから、人形を作った村人に、腹を立てたのです。
なんということでしょう。
村を守ってくれるはずの大ガエルは、森のどの怪物よりも、海のどの怪魚よりも、おそろしい存在でした。
大ガエルの目の前には、サーリ。
サーリが飲み込まれる!!
サーリを守るために大ガエルの前に飛び出したラキは、簡単に吹き飛ばされてしまいました。
そして。
手に持った"イノチの水"ごと、"にょろにょろ様"の人形の口に、すっぽりと。
入ってしまったのです。
次にラキが気がついた時、ラキはとても驚きました。
だってラキは、大きな体の"にょろにょろ様"になっていたのですから。
"にょろにょろ様"になったラキは、暴れる大ガエルを押さえつけ、締め上げ、やっつけました。
村は、静けさを取り戻しました。
"にょろにょろ様"が生き返ったと、村人たちは大喜びしました。
だけど、ラキは困ってしまいました。
どうやったら、元の姿に戻れるか、わからなかったです。
悲しむラキに、そっとサーリが近づきます。
全てを見ていたサーリには、かえってきた"にょろにょろ様"が、ラキだとわかっていたのです。
サーリは、"にょろにょろ様"になったラキの頬に手を当てて、言いました。
「ラキ、ラキ。あなただけを"にょろにょろ様"にはしない。私も一緒にヘビになる。さあ、私を食べて」
ラキはびっくりしました。
サーリを食べるなんて、そんなこと出来るはずがありません。
大ガエルからサーリを助けたのは、自分が食べるためではないからです。
「そんなことできないよ」
サーリ、君にはずっとずっと生きてて欲しいんだ。これからも、幸せに笑っていて欲しいんだ。
ラキはそう言って、ポロポロと涙をこぼしました。
すると。
涙は、ラキの、"にょろにょろ様"の体をつたって、お腹の近くに沁み込んでいきます。
ペリ
ペリペリペリ……
涙が流れ入ったその場所から。
"にょろにょろ様"の皮がめくれ、破れていくではありませんか。
お腹の部分は、"にょろにょろ様"が脱皮に失敗した場所でした。
ほころびた部分から、皮が裂け、"にょろにょろ様"の皮は、花びらのように細かく、散り散りに千切れていきました。
皮が、なくなった後には。
ラキが立っていました。
元の、人間のままの姿で。
植物の弦で作った縄が、ズドドンと地響きを立てながら、うしろに崩れ落ちます。
ラキとサーリは抱き合いました。
固く編まれた縄よりも、強く、きつく。
遠巻きに見ていた村人たちが、そろりそろりとふたりを囲み……。
何が起こっていたのか、すべてを知りました。
その後、村には、魔物よけとして、大きな縄が飾られるようになりました。
縄は、神様の縄として、今日も村を守っています。
でも、本当に村を守るのは、人々の想いです。
ラキは村長になり、サーリや村の皆といっしょに、"にょろにょろ様"のお話を伝えながら、頑張りました。
島の村は、末永く栄えたということです。
<おしまい>
お読みいただきありがとうございました\(^▽^*)/
企画のお題を聞いた時から書きたかったのに、「5/22に間に合わない」と思って、ほぼ諦めてて……でもやっぱり諦めきれずに、朝起きて何とか仕上げました。いつもの童話と感じが違うけど、お気に召していただければ幸いです。
カエルで海の守りはどうするつもりだったのか……。
注) お星様の下にイメージ・ラフがあります。
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