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捕縛(ヒーヨリミ伯爵家三男「貴族学園生徒」視点)

身の程知らずのカルテ伯爵令嬢が逃亡した。

王太子殿下に薄っぺらい言葉で意見を述べたり不自然な場所から現れたりと、おかしな女だった。

おまえが言うか?とか、なぜそこにいた!と何度突っ込みそうになったことか。

それにカルテ伯爵領内の大規模な犯罪組織を、領外の傭兵団と共に捕縛した話を他の学生たちに自慢げに語る。

あり得ない。

自分の領地がそんな犯罪組織の拠点にされ、自領の衛士隊も犯罪に加担していたため外部の力を借りなければならないほどだった、とわざわざ自分たちの恥を暴露するような女だ。

学業の成績はかなり良いらしいが馬鹿である事は間違いない。

そんな女の行動を理解することが出来ないのはわかっていたし、理解できなくてもそれほど害は無いと思っていた。

だが甘かった。

王太子殿下とその思い人に何かしでかし学園から逃亡した。

伯爵邸にも戻っていないらしい。

殿下は側近候補の私にも何があったのかは教えてくれなかったが、軽い話ではないようだ。

「必ずあの女を生きたまま私の前に連れてこい。手足を折っても決して殺すな!」

「そうです殿下、わたくしたちの手であの方に同じ思いを味わわせてあげましょう」

王太子殿下が憤怒の表情で叫び、その隣で殿下の思い人が静かに微笑む。

あの女を捜索するために集められた者たちに下された命令がこれだ。

いったい何をしたらこれほどの怒りを買うのか?

捜索隊にはあの女の顔を知っている者が同行する必要があった。

カルテ伯爵家の者たちは逃亡の手助けをする可能性がある、と王太子殿下はお考えになったようだ。

そのため顔を知っている学園の同級生などが近衛騎士に同行することになった。

私も同行を命じられた。

いい迷惑だ。

だが運良く他の集団や伯爵家の連中より早く見つけることが出来れば王太子殿下の覚えもめでたく、きっと正式に側近として採用されたときの序列も上がるだろう。

しかし生きたまま連れてこい、か・・・

確かに私も生きていてほしいと思う。

獣に食べられたり腐敗していては顔の判別など出来ない。

生きていたほうが見つけやすいからな。




そうして王都を旅立って一ヶ月

ついにあの女を見つけた。

服装などは上手く街に溶け込んでいるが、顔立ちが特徴的なので見つけることが出来た。

行方不明というのは嘘で伯爵家の手引きで逃亡しているのかと思っていたが、護衛や従者がいるようには見えない。

それなら楽に済みそうだ。

少し離れた場所にいる近衛騎士に手で合図し、同行していた近衛騎士の従者に女の背後に回るように指示する。

私は正面から近づき顔をしっかり確認した。

「間違いない!」

私の言葉を確認した従者が背後から女を拘束した。



あの女が魔力を放って抵抗したので周囲の注目を浴びてしまった。

私たちがその程度の攻撃に備えていないわけがないだろう。

やっぱり馬鹿な女だ。

「静まれ!我らは近衛騎士隊である。この罪人を捕縛するために来た。静まれ」

到着した近衛騎士の言葉に私たちを取り囲む街の住民たちが静かになった。

近衛騎士が従者に殴られて地面に這いつくばる女を見下ろす。

「おい、殺してはいないだろうな。王太子殿下から生きたまま捕らえよとの命令だぞ」

「魔力を放ってきやがったのでつい、頭を軽く殴っただけですから死んではいないでしょう」

「魔法でないなら魔法具が防いだだろう。まあよい、連れて行け」

従者が少女を担ぎ、私は近衛騎士と共に馬を預けている宿へと向かう。

今回の功績は出世の足がかりとして十分だろう。

女の手足を縛り上げ従者の乗る馬に固定する。

近衛騎士がいるため街の連中は遠巻きに見ているだけだったが、城門の門番は私たちの前に立ち塞がった。

「お待ちください騎士様、そちらの少女はいったいどう言う事でしょうか?」

「邪魔だ。どけ」

「いいえどきません。これはご領主様から命じられた我々の任務です。そちらの少女は意識がないようですが、何があったのでしょうか?」

近衛騎士が舌打ちしてから面倒くさそうに答える。

「我らは王太子殿下の命で罪人を捜索していた。この女がその罪人だ。理解したならどけ」

「何かのお間違えで「我らに逆らうか!王太子殿下がこの女を捕らえるように命じた。それを邪魔するということがどういうことか理解しているのだろうな」」

それでも門番は道を塞いだまま動かない。

「邪魔をするわけではありません。我々もご領主様に事の次第を報告しなければなりません。騎士章の確認と、少女を捕らえた理由などを確認させていただきたいのですが」

近衛騎士はいらだっているようだが、近衛騎士の身分を証明する魔力で虹色に光った騎士章を取り出した。

「我々から詳細を話すことは出来ない。知りたければ王宮に使いを出すようにポーリット子爵に伝えよ」

「・・・わかりました。そのように報告します」

門番が脇によけたので私たちは街の門を通過した。

順調にいけば六日程度で王都に帰れるだろう。

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