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聖女(エリアレーゼ「薬師の聖女」視点)

この森特有の植物が存在する。

今日はそれを採取しに来た。

私は魔法薬の素材を取りに来たのであって、厄介ごとを拾いに来たのではない。

ああ、もう考えるのはやめよう。

魔力とは見るのではなく感じるのだ、と本に書いてあった。

いやそれは今関係ない。

「お嬢ちゃん、私と一緒に来るかい?」

エイリーンと同じくらいか・・・

私も一応肩書きは神の加護を受けた聖女だ。

ここで見捨てて加護が取り消されても困らないが後味が悪い。

服とは言えない服

素足

その他諸々

明らかに森へ採取をしに来る格好ではないし、胸元に見える焼き印

確か聖典に神はすべての罪をお許しになる、とかなんとか都合の良い言葉が書いてあったはずだ。

「ほら、これ食べるか、水もあるよ」

私は携帯食と水袋を地面に置いて少し後ろに下がった。

少女は動かない。

その視線は地面ではなく、とてもおびえた表情で私を見ていた。

「ほら怖くない怖くない」

私は弓と腰の剣を脇に置き、手を振って武器を持っていないことを見せた。

まあ私の主武器は腰の魔法薬だけどね。

この魔法薬は簡単に言えば猛毒で、お肉ごとダメにしてしまうから狩りの時には使わないけれど、対人戦なら人肉を食べる習慣はないので問題ない。

まあこの少女が襲ってくることなどないだろうけれど。

遠くから微かに人の声が聞こえてきた。

それと同時に彼女のおびえ方がひどくなる。

ああ面倒くさい。

「選びなさい。私、シュバルト教の聖女エリアレーゼと共に来るか、あの声の者たちのもとへと帰るか」

しばらくの沈黙の後、少女が口を開いた。

「聖女ってなんですか?」






少女は私の十歩後ろを歩いている。

服の代わりにマントを、靴の代わりは採取用の麻袋を巻いてやった。

餌付けもした。

少しは警戒心が和らいでいると思う。

しかし追いかけてくる者たちから自分の力だけでは逃げられないから仕方なくついてきている、みたいな感じだ。

その瞳には私への恐怖と警戒心が感じられる。

私は元はただの薬師だが、一年前の件で救済の神を信仰するシュバルト教の聖女になった。

この辺では名が知られているはずなので、聖女エリアレーゼと名乗れば少しは警戒心が和らぐのではないかと思ったが全く効果がなかった。

まあ、あの聞き方は私の名前を知らなかったのではなく、聖女そのものがわかっていないみたいだ。

そうだとすると・・・普通ではないな。

教会で洗礼を受けていない可能性すらある。

まあ今はこっちが優先かな。

「この先に川がある。そこで水浴びして少し身ぎれいにしようか。そのままだと街に入るとき問題が起こるかもしれないし。目立たない方が良いだろう」

少女は反応を示さなかった。


川に着いたのだが、水浴びをするように言ってもマントを脱ぐのを嫌がった。

この少女くらいの歳になると野外で裸になるのは恥ずかしいのかもしれない。

だが詮索されると困るので、明らかに襲われましたみたいな格好で街に戻るわけにはいかない。

ああ面倒くさい。

私は濡れて困る装備を外してから少女を抱えて川に飛び込み、嫌がる少女を服ごと洗った。



肌に触れて確信する。

強い緑の魔力・・・私にどうしろと言うんだ。

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