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急転

たまに黒髪の男が部屋にやってくる日がある。

その日はいつもと違うふわふわな服を着て、机に向かって書き取りの練習をする。

男はマリルレーゼ先生と小声で何かを話し、しばらくすると帰って行く。

なぜこの部屋に来るのかはわからない。

だがあの時の子供たちの話に似たような話があった。

商品を売ろうとするときは、なるべく高いお金で買って貰えるようにきれい磨いたりするそうだ。

そして私のことを貴族ではなく奴隷のようだ、とも言った。

もしかして私は貴族ではなく奴隷なのだろうか?

それであの男は私を奴隷として買う、それか売るために様子を見に来ているのかもしれない。

わからない。

わからないけど苦しい。

宿題が終わって寝るまでの時間に色々考えてしまう。

「怖いよ・・・神様、お父様、お母様、私を助けて」

私は物語に出てきた優しい存在に祈った。




六年が過ぎた。

先週私は誕生日を迎えて十二歳になった。

「私はおまえを甘やかしすぎたようだ。これから行くところで頭を冷やして心を入れ替えなさい」

たまに部屋に来ていた黒髪の男が私の腕を掴み、私を城外に連れ出した。

わからない。

わからないけど謝らないときっと叩かれる。

「申し訳ございません。あなた様のおっしゃる通りです」

私はそう言って頭を下げた。

すると男はきびすを返して城の中に消えた。

これからどうしたら良いのだろう。

わからないので門の前で頭を下げたまま待った。

許されていないので頭を上げてはならない。

「おい、行くぞ。こっちに来い」

私の腕を若い男が掴んでいた。

「あ、あの・・・」

「いいからこっちに来い。いくぞ」

そう言って若い男は私を引っ張る。

昔会ったあの子たちが言っていた。

塀の外には人さらいと言う怖い人たちがいて、私みたいなのは無理矢理連れて行かれるかもしれないと。

もしそうなったら大きな声を出して助けを求めろって。

「助けて!」

私はつかまれていない方の腕を門を守る使用人に伸ばしたが目をそらされた。

「お、おいなに言ってる」

腕を掴む力が更に強くなる。

そのまま門が見えないところまで連れて行かれ、馬車に押し込まれそうになった。

中には私より少し年上の女の人が乗っていた。

彼女もこの人にさらわれたのかもしれない。

逃げないと。

私は体の中から魔力を引き出し男にぶつけた。

「ぐはっ」と男がうめき、つかまれていた腕の力が緩む。

マリルレーゼ先生のように魔法は使えないが、魔力の扱いは練習して出来るようになっている。

私は若い男の手を振りほどいて走った。


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