王都
何日も馬にくくりつけられたまま運ばれた。
家に帰りたいと言っても見向きもされなかった。
さらにうるさい、と言われて口の中に布を突っ込まれた。
なぜか魔力も使えない。
この三人の男の人が私を誘拐した理由はオウタイシデンカという人の命令らしい。
オウタイシデンカが何なのかはわからない。
だけどきっと悪い人だ。
あとは、えっと・・・
何か、何か考えないと、考えないと・・・
何か考えていないと何かに押しつぶされそうだ。
怖いよ師匠・・・
何日経ったのかわからない。
高い塀で囲まれた白い建物の前で私を馬から下ろし、白い服の男の弟子のような人が手足の拘束を外した。
ここは以前いた城や奴隷として売られた先の太った男の屋敷とは違うようだ。
だけど塀は太った男の屋敷より高く、周囲に武器を持った大きな男の人たちがいっぱいいる。
きっともう帰れない。
白い服の男は「来い」と言ってこちらを見ることなく建物の中へ入っていく。
立ち止まったままでいると後ろから背中を押された。
「行け」
私は足を踏み出した。
こんな事はいつものことだ。
師匠との生活は夢で、これが普通なんだ。
逆らえば叩かれる。
出来なければ叩かれる。
よく解らないけど叩かれる。
でもわかっている。
どちらにせよ叩かれるが、言われたとおりにした方が痛くない・・・
これをきれいにしろ、と白い服の男が女の人たちに言った。
女の人たちに隣の部屋へ行くように言われたのでおとなしく従う。
そこはきれいな浴室だった。
「おとなしくしてください」
服を脱がされる不快感に少し抵抗してしまった。
なのに女の人たちは私を叩かない。
おかしい。
きっと今日は機嫌が良いのだろう。
「あら、こんな所に大きな痣が、衣装は胸元が隠れる物を用意して」
扉の近くにいた女の人が浴室から出て行った。
犯罪者として押された焼印は、師匠が魔法薬で治してくれたから薄くなっている。
体を洗われ、その後布がいっぱい使われた貴族や富豪が着るような服を着せられた。
こんな服を着るのは太った男に売られる前にいた城で、部屋に黒髪の男が来る日だけだった。
これからどうなるんだろう・・・
泣くときっと叩かれる。
私はあふれそうになる涙を必死にこらえた。
女の人が扉を開け、部屋に白い服の男が入ってきた。
この人たちは私をどうするつもりなのかわからない。
とにかく今は逆らわずおとなしくしていよう。
白い服の男が「これなら問題ないな。行くぞ」と言って歩き出した。
私も後ろをついて行く。
そして連れて行かれた部屋では金髪の青年と髪のない男がソファーに座り、金髪の青年の後ろに茶髪の青年と武器を持った男が立っていた。
金髪の青年がこちらを見て不気味に笑う。
私は震える足を叱咤して壁際によって目を伏せた。
白い服の男は金髪の青年たちの方へと歩いて行ったが、こういった場合は呼ばれるまで相手の視界に入らないように待っているのが正解だ。
「王太子殿下、娘は今後別邸で謹慎させますので何卒寛大なお心で罪の減刑をおねがいいたします」
「安心しろカルテ伯爵、王族に毒を盛るなど首切りの刑が妥当なのだが、王は伯爵が見せた誠意に一定の理解を示され、私に寛大な心を示すようにと仰った」
「王太子殿下、ありがとうございます」
「うむ、それでカルテ伯爵、東方の言葉に目には目を歯には歯を、と言う言葉があるらしい。我らが飲まされたものと同じ物を用意した」
私は目を伏せたまま周囲の様子をうかがう。
金髪の青年と髪のない男が話している内容は私の事ではない。
なぜここに連れてこられたのか、これからどうなるのかが全くわからない。
怖い。
怖いよ師匠・・・
そう思った瞬間、バン!と大きな音とともに入口の扉が開いた。




