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高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第一章 されど止まりし刻は、再び動く(上)
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A級冒険者

「好きです!結婚してください!(仲間になってください!)」

 あ、やべ。本音と建て前を間違えた。

「にしししっ。いいねえ少年、会った瞬間に告白かぁ。私、好きよ?そういうの」


 俺の唐突の告白に名を知らないお姉さんは爆笑した。爆笑し、身体が揺れる度に零れそうな胸がぷるるんと上下する。童貞に毒過ぎるありがとうございます!


 じゃなくて!


「危ない所を助けて頂きありがとうございます!」

 俺は頭を勢いよく下げる。このお姉さんは命の恩人だ!礼を尽くさねばなるまい。


 それに装備といい、保有してる迷宮遺物レリクスといい恐らく高(ランク)の〈冒険者〉であるのだから猶更だ。より深い迷宮遺跡ダンジョンの神秘に挑む先達には自然と敬意を抱く。死を厭わず神秘の深淵に身を投げうった証拠なのだから。


「いや、いいっていいって。深部帰りでたまたま通り掛かっただけだからさ」


 深部、それは迷宮遺跡ダンジョン用語で深い階層を意味する。”潜る”という表現を俺たち〈冒険者〉はよくするが何も実際に地下に潜っているわけではない。確かに地下に広がる迷宮遺跡ダンジョンもあるが塔型のもあるし城の様に広い建物型のもある。

 千差万別の迷宮遺跡ダンジョンだが、階層があるということは共通している。階層を越すことを”潜る”と〈冒険者〉は表現する。ならば深部が何を意味するのかというと、深部とはより危険で最終階層に近い層を意味するのだ。このリュウグウジョウは十層構造であることが調査で判明している、ならばここでの深部は…。


「七層に行ってきたんですか!?」


「う~ん、惜しい。八層に潜ってたの」

 にししと笑うお姉さん。八層か、…八層!?


「八層って…ほぼ未到達階層フロンティアじゃないですか!お姉さん、ランク幾つですか!?」 

 まだ手つかずの区域エリアが多く調査の進んでいない、正真正銘探索中の迷宮遺跡ダンジョンの深奥だ。選ばれし者しか立ち入れない迷宮遺跡ダンジョンの神秘にお姉さんは触れていたのである。


「A級免許(ライセンス)持ちだよ。ほら」

 襟部分に手を突っ込むとお姉さんは胸の間からA(ランク)の証である金色の免許証ライセンスカードを取り出し胸を張って掲げて見せた。

「にしても少年…一人で陸に上がった〈陸神鰐グランガチ〉倒したんだ。その鎚?う~ん、斧?ま、それで。やるじゃん」


「う、上から降って来たから慌てて、無我夢中で戦ってたら勝ちました」

 タイプのお姉さんに褒められて俺はタジタジになる。俺の答えにお姉さんはふ~んと唸ると目を細めた。


「私は陽菜。神楽坂かぐらざか 冴子さえこ。少年、名前は?」


たける五百雀いおじゃく たけるでしゅッ」

 くっそお!噛んだ。肝心なところで噛んでしまった。恥ずかしいぃ。冴子さえこさんか、エロっぽくも大人っぽい良い名だなぁ、おい。


「にししっ。五百雀いおじゃく 尊か。いい名前だね。尊くん、一緒に【ギルド】に帰らない?お姉さんが送り届けてあげよう!」


 おお!いきなりの名前呼び、…尊い尊過ぎてどうにかなりそうだ。



 迷宮遺跡ダンジョンデビューした俺氏、美女との同伴決定!!



 こうして俺が冴子さんと一緒に【ギルド】に変えることが決定したのだ。








 小笠原諸島南西の沖合に位置するリュウグウジョウは、孤島に神殿状の入り口があり、地下に広がっている塔型の迷宮遺跡ダンジョンだ。【ギルド】会館は当然だが迷宮遺跡ダンジョンの外にある。

 俺と冴子さんは今、階層を跨ぐ巨大ゴンドラに揺られていた。荷台部分には冴子さん監修の下、解体した〈陸神鰐グランガチ〉が載せられている。


 まさか、〈冒険者〉になって二日目にこんな大物を持ち帰れるとは思わなかった。

 運がいいのか悪いのか。これが迷宮遺跡ダンジョンの恩恵だとすると何だかワクワクする。巨大ゴンドラに揺られながら俺は冴子さんと迷宮遺跡ダンジョンの話をしていた。


「なるほど、共鳴岩ハウリングストーンを鈍器にしたのかぁ。その発想はなかった。すごいじゃん、尊くん。考えたねえ」


「ほんとは一層の密林がうざったくて…そん時に思い付いたんです。共鳴岩ハウリングストーンで作った鈍器なら楽に伐採ができるんじゃね?って。だから〈衝撃斧ブラストアックス〉て名付けたんです!」


「にししっ。それでアックスか!いいね、尊くん。最高だよ。創意工夫大いに結構。ハングリー精神がない奴は〈冒険者〉として大成しないからねぇ」


「えへへ。あ、お姉さんの使ってる迷宮遺物レリクスも凄いですね!〈大翼狼マルコシアス〉の肩を消し飛ばした奴です」

 褒められて気恥ずかしくなった俺は話題転換も兼ねて冴子さんの武装について訊いたのだが、しまった。〈冒険者〉に武装を訊くのはマナー違反だった。

 冴子さんを怒らせたらどうしよう?


 俺は心配するのだが、冴子さんは俺の心配を余所に笑顔を浮かべて答えた。


「これ?これはねぇ…ここの第六層をソロで探索中に偶然隠し部屋を見つけてね。そこを攻略クリアしたら見つけたの。神話級ゴッズ迷宮遺物レリクスで私の主武装の一つ、名前は〈切り開く咆哮(クラウ・ソラス)〉よ」

神話級ゴッズ褒賞品ドロップアイテムって、…〈意思持つ道具(リビングウェポン)〉ってことじゃないですか!?絶対に売っちゃダメなやつ筆頭の!」

 存在そのものが国を揺るがしかねない神話級ゴッズの中でも所有者にしか扱えないのが〈意思持つ道具(リビングウェポン)〉だ。本人にしか扱えない為、所有者が死んだ後に回収され国宝として厳重に管理されるという。


「そうだよ?〈意思持つ道具(リビングウェポン)〉さ。だから詳細は機密、ヒミツだよ。たけるくんも秘密にしとかなきゃダメだからね」

 ウィンクしながら言う冴子さんに俺はただ頷くことしかできなかった。顔が熱い。だから俯く。決して赤くなった顔を隠す為ではない。もう一度言おう!赤くなった顔を隠す為じゃない!


たけるくんはまだ新米ニュービーだよね?」

「え?は、はい」


「なら【ギルド】と揉めちゃダメだからね。スポンサーを斡旋して調整までしてくれるんだから…。私みたいにフリーランスだったら物凄く大変なんだから」


「???」

 突然のアドバイスに俺はただ困惑する。スポンサーも何も、俺はまだ駆け出しだからスポンサーとはまだ縁がない。そんなことよりも…。


「あ、あの。冴子さん」

「ん?なに尊くん?」

 俺は顔を上げ冴子さんの目を見つめると意を決して叫んだ。


「俺の仲間になってください!」


 駆け出しの俺が、A(ランク)相手に何を言ってるんだと思われるかもしれない。俺ですら図々しいと感じてる。

 だけど、冴子さんから漏れ出たのは溜息でも、嘲笑でもなく。




「……え?」


 困惑だった。

迷宮遺物レリクスの分類について


迷宮遺物レリクスは、その規模と特性、既存の文明に及ぼす影響の程度から、存在するだけで国家の在り方を揺るがす神話級ゴッズ。既存の文明社会に新たな概念を齎す伝説級(レジェンダリ―)。学術的にも価値が高く、技術を革新しうる秘宝級レガシー、極めて希少で価値の高い、あるいは冒険に有用な希少級レア、ありふれてはいるが日常に変化を齎す一般級ノーマルの五等級に分類される。当然、神話級ゴッズが最上級であり、100億から数兆円規模で取引されることがある。一般に知られている有名な神話級ゴッズ迷宮遺物レリクスといえば〈死者を蘇らせる籠(ハデス・クレイル)〉とか〈不滅の剣(デュランダル)〉や、〈一撃滅殺の槍(グングニル)〉などが挙げられる。


神話級ゴッズ迷宮遺物レリクスは、彷彿される神話をモチーフに名付けられる。

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