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高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第ニ章 されど止まりし刻は、再び動く(下)
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サイドストーリー 「残された者たちⅡ」

サイドストーリー第三弾です。

「あんの、バカノヴァアアアアアア!!!」

 リュウグウジョウの玄関口、【冒険者ギルド:リュウグウジョウ支部】のギルド会館から、職員による心からの怒号が鳴り響く。その声の主は、美人受付嬢と評判の佐藤 麗香である。手には、緊急高速電報が握り締められていた。

 事の発端は50分前にさかのぼる。




 特殊な力場のせいで無線機器が使えないので、層を跨ぐ情報の交換は物理的手段に依存する。リュウグウジョウでの三層の補給基地キャンプと四層の中継基地ポイントや、六層と七層を跨ぐ前線基地ラストキャンプの様にほぼほぼ面接しているならケーブルを設置して通信が行えるが、それ以外の場合はケーブルを設置することは現実的ではないので人力の伝達手段に依存する。

 情報量が少なく尚且つ機密性が低いのなら口伝あるいは手紙で伝達されるが、情報量が多く機密性が高いならUSBに保存され、それを目的の場所まで人力で運ぶことになる。【ギルド】は、人力による情報伝達網を厳格に構築していて、スピーディな情報交換や情報収集を可能にしていた。


 緊急高速電報は、【ギルド】の中でもより重要性が高く緊急性を有する情報・・のことであり、内容も当然機密性が高い。

 深部に潜っていた冒険隊に混じり護衛されていた職員が持ってきた封の中に、赤色のUSBメモリが入っていたことを確認して思わず麗香が顔を顰めたのも無理はない。緊急高速電報は、よくない知らせを伝えるものだ。最近なら第五層での【生態系厄災スタンピード】発生、……〈先導する黎明(パイオニア)〉の消息不明という情報が緊急高速電報で、麗香たちの会館まで伝えられた。


 凶報、それも麗香が特段目をかけているあの子(・・・)のだったらどうしよう……。そんな恐ろしい光景が、麗香の脳裏をぎった。

 USBメモリをパソコンに差し込み恐る恐る内容を読み進める麗香であったが、その表情からは恐怖が徐々に薄れて、変わりに無表情になっていた。そして、無表情から徐々に表情が険しくなっていき片眉がぴくぴくと痙攣し始めて――。


「あんの、バカノヴァアアアアアア!!!」


 とうとう怒りが爆発してしまった。

 



 そして場面は冒頭に戻る。

 

「な! ん! で!? D(ランク)が、深部に潜ってんのよ!! そもそも【ギルド】の方から六層に潜ることを進めるなんてありえないでしょ!? 大体、私が担当なのに勝手に推し進めるなんて上はどういう了見よ!!!」

 バックヤードでブチ切れているのだが、麗香の怒りの剣幕は凄まじく怒髪天を突くたるやとロビー全体に響き渡っていた。あまりの剣幕に、〈冒険者〉はおろか同僚たちでさえ声を掛けられずにいる。

 同期だからという理由でリツこと立花りつかが、麗香の舵取りに宛がわれたのだが、はっきり言おう。

「いつになく荒れてるわね。はぁ……」


 取り敢えず無難且つ少々信じ難い話題を振るも。


「【忌龍キリュウ】相手に生き残ったのは凄いことだし、自信を持つのはいいことじゃない」


「だからって勝手に七層に潜る馬鹿がいる!? 二つ名がついてちょっと偉業を成し遂げたからって調子に乗るにも程があるでしょう!!! 名前だけでなく物理的にも爆発したいの!!? たけるくんはまだ新米冒険者ルーキーなのに」


 怒れる麗香の制御は、立花にすら無理だと。


あの(・・)忌龍キリュウ】相手に戦って獲物認定マーキングまでされたのに新米冒険者ルーキー呼びはないでしょう。遭遇した時点で伝説クラス、生き残って英傑。おまけに詳細不明とは言え、神話級ゴッズを武装してるんだから――A(ランク)率いる冒険隊に相応しいベテランの仲間入りじゃない。肉弾戦、世界最強が付いてるのに麗香は過保護すぎるよ?」

 呆れた声音で麗香をなだめる立花の言葉に、麗香は苦悩の表情を浮かべ頭を悩ませる。

「…………そうだけど経験が伴ってない実績は危険じゃない? 確かに立派になったけど〈冒険者〉になって一年も経ってないだもん。新米冒険者ルーキーが夢破れて失うのは希望だけじゃない、――全て(・・)よ」

 苦悩の末に麗香が吐き出した言葉は何処となく悲しみと憂いを帯びていた。濡れた瞳とその表情に、思うところがある立花は思わず黙り込んでしまう。


「希望志し野望、目標、夢、富、名声。迷宮遺跡ダンジョンが奪うのはそれだけじゃない。迷宮遺跡ダンジョンはすべてを食い尽くす。命までも全部」


「まだ、あのことを振り切れてないの? あれは仕方のないことよ。彼ら(冒険者)が〈冒険者・・・〉で私たちが【ギルド】職員である以上、それは避けては通れない悲劇jy―「そうだとしても! あの子はッ〈超新星アルヴァノヴァ〉は早く死んでいい〈冒険者〉じゃない!! あの子は英雄になりたいって、英雄譚を聞かせてくれるって約束してくれた」」


「もともと猪突猛進の気があったから、〈無双の乙女(カーリー)卿〉と一緒になってほしくなかったのよ。……こんなことになると思ったから。出来れば〈紅鬼レッドキャップ〉の下で経験を積んでから、自由に冒険してほしかったけど。――そうね、彼は〈冒険者〉、迷宮遺跡ダンジョンに挑む者。私たちじゃ彼らの冒険は止められないし、がとびっきりの冒険譚を聞かせてくれるのを待つことにするわ」

 電報をゆっくりと畳み麗香はそう言った。やっと麗香の機嫌が直ったと胸を撫で下ろす立花であったが、麗香はだが、と言葉を続ける。

「黙認した五層のギルマスと、けしかけた焔燕エンビさんは今度地上に出たら絶対に落とし前を付けて貰うわ。それに、卿とたけるくんが凱旋に戻ってきたら真っ先にお説教ね」

 どこか黒い笑顔に立花は頬を引き攣らせるしかない。


迷宮遺跡ダンジョンへの憧れは誰にも止められない、か。わかってはいるけど、私はいつまで経っても慣れそうにない、……慣れたくないわ。だから、無事に帰ってきて冒険譚を聞かせてね」





 〈冒険者〉が迷宮遺跡ダンジョンで何を成し遂げれるのか、それは誰にもわからない。


 〈冒険者〉が迷宮遺跡ダンジョンで何が出来るのか、それは誰にもわからない。


 地図も、羅針盤も、終わりすらあるかわからない旅路の果てに何があるのか、誰にもわからない。果てがあるのかすらも、わかるはずがない。

 だが強いて言うならば、何かに挑んだ者のみ何かを成し遂げる。旅路の果てに何があるのかは、旅路の果てに、終わりなき冒険に身をやつさなければわからない。


 だから〈冒険者〉は、迷宮遺跡ダンジョンに挑み続けるのだ。

 何かを成し、何者かになる為に。迷宮遺跡ダンジョンがその深奥に隠す神秘を追い求める為に。

 あるいは、迷宮遺跡ダンジョンに眠る冒険を求めて。



 恐れる者に偉業は成し遂げれない。

 怯える者は何かを成し遂げることは出来ない。

 何物も恐れず、何者にも怯えず。何か一つに身をやつし、すべてを委ねる者のみが偉業を成し遂げることが出来るのだから。



どうしてこうなった!?

たけるきゅん、熱心なファンがいて良かったね♡


ちょっとした蛇足的エピソード



に遭遇しなければいいのだけれど。混ぜるな危険のノリで危ない気がする」

「あははは、はは。(確かに……ないとは言えない。アァ胃が痛い)」


的な会話があったとさ。たけるきゅんの命運や如何に!?

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