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高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第ニ章 されど止まりし刻は、再び動く(下)
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リュウグウジョウの奥底で待つ者

満を持して投稿。これよりくそ長い二章が幕を開ける

 日本最後の未踏破ラスト迷宮遺跡ダンジョン、〈蒼海宮殿〉リュウグウジョウ第六層。小笠原諸島南西の沖合に浮かぶ島の地下奥深く、人類に残された最後の秘境に潜って数か月。

 最初の予定では第五層の探索の後に帰還するプランだったが、色々あって第六層にも潜ることになった俺と冴子さん二人だけの冒険隊〈夜の明け星(イルミナティ)〉は、現在()前線基地ラストキャンプにて療養をしていた。


 正確には俺だけだが、それでも休養を兼ねて談笑していたところに凶報が舞い込んだ。

 


「大変だ!未到達階層フロンティアに潜った捜索隊がたった今帰ってきた!!〈先導する黎明(パイオニア)〉は、〈先導する黒鬼(ブラックヴァンガー)卿〉率いる冒険隊は、消息不明だ!」


 A(ランク)率いる伝説の冒険隊がリュウグウジョウ最後の未到達階層フロンティア、最終階層である第十層に潜っているのは有名な話だ。未踏破ラスト迷宮遺跡ダンジョン踏破クリアをかけて莫大な予算が投資されたのを俺はニュースで見た。盛大なパレードが行われ、華々しく遠征に臨む彼らの雄姿は俺の瞼にばっちり焼き付いている。


 それが、消息不明だと?


 

「……嘘」

 と漏らしてしまった冴子さんの気持ちがよく分かる。全くもって信じ難い。性質タチの悪い冗談か何かか?



 だが現実は無情で残酷だ。



「〈無双する乙女(カーリー)卿〉、卿はいっらしゃいますか?!」

 慌てふためく【ギルド】職員と。装備に惨い損傷がある〈冒険者〉が、切羽詰まった表情で冴子さんを探すその様子が、凶報が真実であることを何よりも物語っていた。


「ここだよ。………私はここにいる」

 

「ああ、卿。ご歓談の最中さなかに大変申し訳ないですがご同伴願いたく存じます。〈超新星アルヴァノヴァ〉も、一緒に来てください」

 








「ここにいるA(ランク)を呼べと、某は申したのだが…。贋作を呼ぶとは一体どういう了見だ?誰が盗人を呼べと申した?小汚いコソ泥の匂いが臭くてかなわんわ」

 【ギルド】職員と〈冒険者〉に連れられ【ギルド】支部の一室に入った俺と冴子さんだったが、入って早々心無い罵声が浴びせられ俺は面食らう。


「…〈先導する黎明(パイオニア)〉が消息を絶った(・・・・・・)のに、捜索隊が帰ったと聞いてまさかとは思ったけど。―やっぱりアンタたちが絡んでたわけね」


 冴子さんが忌々し気に睨み付けるは、全身黒装束に仮面で顔を隠す不審者である。

 絶えず炎を纏った錫杖を右手で地に付け、左ひじを手摺に載せて頬杖を付きながら足を組む。控え目に言っても、挑戦的で威圧的な態度を放っていた。声が中性的で、服装もあり見た目からは性別が全く判別つかない。


「まぁ、A(ランク)が都合よく来るわけではあるまいて、コソ泥を呼んだのはこの際どうでもいい。よくはないが些末なことだ。問題は……」 

 不審者の声が低くなり、

「何故、貴様の様な餓鬼がここにいる?」


「―ッ」

 ジャキンと金属同士が擦れ合う音が、首元で聞こえる。

 咄嗟に〈衝撃斧ブラストアックス〉を掲げたのだが、何とそこに不審者が手に持つ錫杖が突き刺さったのだ。いつの間にか立ち上がり、気が付けば目の前にいて、気が付いたら〈衝撃斧ブラストアックス〉に衝撃が来た。何となくの行動だったが、ファインプレイだったみたいだ。

 …なるほど、辰巳先輩が言う様に俺も随分と人間ニンゲンを辞めている。俺も少しずつ化け物じみてきているな。A(ランク)に近付いたと喜ぶべきなのかな?う~ん、わからん!


「……ほう、今のを止めるか?成程、餓鬼呼ばわりは取り消そう。それなりには出来ると見た。なれば、貴様はこの場にいるに相応しい。某は、〈深淵宗〉が一人。仮名を〈焔燕エンビ〉と申す。貴様、特別に名を覚えておいてしんぜんよう。名乗るがよい」

 錫杖を降ろすと〈焔燕エンビ〉は、鷹揚に宣う。


「〈夜の明け星(イルミナティ)〉所属、〈超新星アルヴァノヴァ〉。D(ランク)です」


「某等は地上に出ぬが故分からぬが、其の名しかと覚えたぞ。座主に奏上奉らねばな。それはさておき、そこな腰抜けでは些細事が曲介して伝わろう。座主より仔細を伝えるよう命を拝した故、某が言伝を語る。遠路遥々、六層まで来たのだ。しかと、聞けよ?貴様たち」 

 

「座主?」

 耳慣れない単語に俺はぽつりと呟いてしまう。何故に仏教用語なんだ。

 見た目と言い物言いといい、仏教徒が集団で冒険隊を組んでいるのかな?

「前に話した性格極悪のA(ランク)のことだよ。コイツは、それの手下。実力は確かだけどあまりかかわらない方がいい」

 俺の疑問に、冴子さんは耳を近づけて小さな声で囁いてくれた。


「聞こえているぞ。話の腰を折るでない痴れ者が。某も暇ではない。直ぐにでも深部へ戻らねばならんのだからな。―まず一つ、黒鬼殿の率いる冒険隊は消息を絶った。これは紛れもない事実だ」

 錫杖で捜索隊の一人を指し示し、

「そこな捜索隊にも言うたが座主と黒鬼殿は友誼を結び、黒鬼殿は【門】をくぐられた。某等の拠点と【門】は離れているが故詳しくは知らんが、そこな捜索隊が第九層へ来たと同時に黒鬼殿より使いが来た。そして、そこな者どもが余計なことをした所為で座主は今、手を離せん。……もとより、【門】より先は【鍵】無き者には入れぬが故、某等に黒鬼殿がどうなったかは知る術がないがな。余計な事に変わりないが」

 〈焔燕エンビ〉の言葉に、捜索隊員は下を向く。

 〈焔燕エンビ〉の言うことに心当たりがあるのだろうか?俺にはさっぱりわからん。


「次に黒鬼殿の身に何かあった様だ。この地の奥底、迷宮遺跡の深淵にて黒鬼殿の身に何か災いが降りかかっているらしい。それが何なのか皆目見当が付かぬが、使いによると黒鬼殿は手がいると申している。―使いが某等の所に来た時には既に日数が経っている。深部日で5週間は過ぎてると仮定しても問題あるまい。座主は御身に宿す権能故に【門】を超えれぬ、未知・・に襲われた程度で死ぬ御仁ではないとはいえども早急に何やらするが良いではないのか?」

 〈焔燕エンビ〉の口から語られる内容に言葉を失うが、少しだけひっかかる部分がある。そう、少しだけだ。喉に小骨が刺さった感じの小さな違和感。

「まるで自分が動向しない見たいな言い方ですね」

「当然だろう。某の仕事は言伝のみ。後は貴様達でどうにかせい」

 

「そ、そんな。どうして―」


「―どうして?まさか、小僧。貴様、某に同行せよと申している訳ではあるまいな?己が眼で深淵を覗く為に、地深きここに来たのではないのか。其れとも、…よもや冒険の露弾きを某に頼むつもりか、戯けが。己の冒険を他人に委ねるでないわ。某の任はそこな捜索隊の護衛と言伝よ。用が済んだ以上、某はとくと去ぬぞ」

 俺は〈焔燕エンビ〉の言葉にはっとする。人を取って食った様な言動に辟易していたが、よくよく考えると目の前の不審者もまた、俺の先輩なのだ。


「己が眼と耳で確かめよ。例え其れが深部での、A(ランク)が消息を絶ったやも知れぬとしても、だ。〈冒険者〉が冒険をしないで何になる?深部に潜らずして深部の仔細を知ろうなど言語道断。識りたければ潜るしかあるまいよ」

 

 そうだ。待ち人の捜索にしろ、未知の探索にしろ。どちらにしろ、深部に潜らねば知ることが出来ない。深淵に何が眠るのか、どのような危険が潜んでいるのか、それは挑む者しか分からない。

 知りたければ、〈冒険者〉なら冒険して自分で知るのが道理に違いない。A(ランク)の消息が知りたいなら自分の足で訪れて自分の眼と耳で確かめろ、暴言に思えて中々の真理だ。


「ああ、それと。一つこれは某からの忠告だ。貴様と小娘が潜るかは知らんが、心して聞け。がいる。某すら気に入った以上、あのが見逃す道理はないと知れ。ではな、小僧。深部で逢うのを心待ちにしている」

 〈焔燕エンビ〉はそう言うと、扉を開け放つ。

 焔の残滓が後を引き、火花の帯を描きながら〈焔燕エンビ〉は部屋を去った。




 さきほどまで一緒にいた【ギルド】職員はいつの間にかどこかに消え、部屋にいるのは俺と冴子さんのみになった。


 冴子さんはしばらくの間目を閉じて、喋りかけづらい雰囲気を放ち熟考に耽ける。


 ………。


 ……。


「ねえ、たけるくん」

「ねえ、冴子さん」

 俺と冴子さん。意図せず二つの声が重なった。もしかすると、もしかして―。



「同じこと考えてるって顔だね、たけるくん。いいの?君はまだD(ランク)だよ」



「冴子さんこそ、いいですか?立場があるでしょう。A(ランク)が率先して規則を破ることになって。…まぁ、俺の階級が低いせいですが」



「問題ない。規則ってのは破る為にあるんだよ?尊敬する人からの受け売りさ。〈冒険者〉の憧れは、誰にも止められない……君が言ったことだけど中々どうして確信を突いてるじゃん」

 冴子さんはにひると悪い笑みを浮かべる。多分、俺も今悪い顔をしてるんだろうな。


「行きますか?二人で」



「うん!行こうじゃないか!前人未到の第十層、リュウグウジョウの最終階層へ!!私とたけるくんなら楽勝だよ!!!」




 俺の今の階級はD(ランク)だ。冴子さんからはC(ランク)相当の実力はあると大小判を押されたが、未到達階層フロンティア挑戦に必要とされる実力はB(ランク)であり全然足りない。


 まだ見ぬ神秘、まだ見ぬ光景も眠っていることだろう。だが、そして同時に。


 まだ見ぬ危険や、人知れぬ脅威が牙を研ぎ澄まし待ち構えているかもしれない。

 

 想像を絶するような危険が、具体的な脅威となって俺の命を奪おうとしてくるだろう。



 それを思うと、怖くなる。死んでしまうかもしれない。―そんな、一抹の不安が脳裏をよぎると震えが止まらなくなる。




 だけど、それ以上に




 ――ワクワクする。




 誰も経験したことのないような、俺の魂に刻める大冒険が待っている気がしてならない。


 俺と、冴子さんの二人なら紡げる筈だ。


 二人だけの英雄譚サーガを、後世に語り継ぐに相応しい不動(オリジナル)神話ミソロジーを。



「助けに行きましょう!A(ランク)、不動の伝説たちを俺たちの手で!」



 俺たちの冒険は止まらない!!!!










――――――――――




「―ふっ、手の掛かる雛鳥だ。添え木がしっかりすべきだろうに共に萎えおって。余計な手間がかかったわ。にしても、貴様等もしがらみが多く面倒よな。こんな七面倒なことをせずとも、直に言えば済むのに要らぬ企みを弄さねばならんとは、…同情するぞ」

 扉を背に寄り掛かる人物は、()()()()()()()()呆れ果てた。


「申し訳ございまん。わざわざあんなことまで頼んでしまい。この埋め合わせは【ギルド】の方で必ずします。……ところで何故、貴方程の方がこの様な雑事を引き受けてくださったんですか?”天上”に近い貴方が」


「なぁに、別段深い理由などない。雛鳥の旅立ちは見ていて気分が良い。―――絶望に歪むカオを拝めば猶更、興が湧く。そうでなくとも、な。其れだけのことよ」

 そこまで言うと踵を返し、今度こそ去った。



謀略もいいが、――ほどほどにせねば身をむしばむぞ。

 去り際にそう捨て台詞を残して。

第二章はリュウグウジョウ完全攻略まで書き上げるつもりですので、そこんとこ( `・∀・´)ノヨロシク

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