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幕間Ⅱ  まだ見ぬ伝説たち

未だ登場予定のないA(ランク)たちについて触れます

 〈雷獣サンダービースト〉の魔の手から逃れた〈夜の明星(イルミナティ)〉一行。たけると冴子は、"母なる古樹(セフィロト)"を視界に収めつつ、第五層を降りていた。 


「ねえ、冴子さん。他のA(ランク)の方々ってどんな人たちなんですか?」

 手持ち無沙汰なたけるは、そう質問を投げ掛けた。 


「他のA(ランク)ねぇ。…日本の〈冒険者〉の話だよね?海外のA(ランク)には、あまりいい印象を抱いてないかなぁ(…けど、あれはどちらかと言うと国の所為だし何とも言えないなぁ)」


「え?そうですよ。何かあったんですか?」


「何でもないここだけの話。けど、改めて考えると日本のA(ランク)ってほとんどが〈先導する黎明(パイオニア)〉に所属してるから凄いよね。主力がA(ランク)のみの冒険隊とか世界中どこを探しても日本にしかないと思う」

 冴子の含むような言い様から、何かを察したたけるは慌てて話を別方向に誘導する。


「後方もB(ランク)の精鋭なんですよね?そこで冴子さんは〈冒険者〉を学んだ、と?」


「そ。色んなことをあの人たちから手鳥足取り教わったよ。冒険のイロハとか、できる女のあれこれとかね。…他のA(ランク)はね、基本的に善い人たちだけど、全員癖が強いかなぁ。ま、〈冒険者〉の頂点だから必然的に度し難くなるけど、ちょぉっとだけ、性格に難ありかな。―?どうしたの?私の顔なんか見て?」


 正確に難ありとか、どの口が言うんだろう?素朴な疑問で冴子の顔を見つめるが、話の続きをたけるは促すことにする。

「いいえ、別に。…なんでもないです。続けてください」


「むう、何か隠してるでしょ?ま、いいや。みんな、印象が強烈だったけど一際光ってたのは四人だね。〈先導する黒鬼(ブラックヴァンガー)卿〉は”英雄”が似合う傑物かな。とにかく豪快で、ノリと勢いを何よりも重視してて、とにかく死と隣り合わせの冒険を好む冒険馬鹿だ。食い扶持が無くて荷物に紛れて盗み食いする私を笑って許すくらい器が広い。それに、とにかくカリスマが凄い。A(ランク)6人を争いなく束ねるカリスマは、ちんけな表現だけど神懸かってる。君もわかるよね?」


「10年前のインタビューですね。未到達階層フロンティアから帰還した時の凱旋インタビューの」

 たけるは興奮気味に語る。たけるが〈冒険者〉を目指したきっかけも、突き詰めればそこに至るからだ。あの日、一人の男の言葉が間違いなく時代を動かした。歴史が変わった瞬間を、時代がうねりをあげたあの日の光景は、未だに脳裏に焼き付いて離れない。

 間違いなく〈先導する黒鬼(ブラックヴァンガー)卿〉は、歴史に名を残す偉人であるとたけるは強く確信している。


「その通り。あれはもう異次元だよ。たかだか一言二言で〈冒険者〉の数を4倍にしたんだから凄いよね。時代が違えば国を作って覇を唱えていただろうに。あれでもう70年は〈冒険者〉してるんだから驚くしかないな。―次点でインパクトが強いのが〈先導する黎明(パイオニア)〉所属の〈漆黒の死神(グリムリーパー)卿〉かな。〈冒険者〉の二つ名を制度を体現したみたいなヒトだったな。詳細は機密だから言えないけど、二つ名に相応しい迷宮遺物レリクスでばったばった敵を薙ぎ払うから”死神”って呼ばれるようになったおっかないヒトでね。まさか、結婚して産休で一時休養するなんて思わなかったなぁ。3年前から【ギルド】関連のバイトしてるみたいだね。…あ、花嫁姿がめちゃめちゃ似合てった!」


「産休…まさか。いや、でも。偶然だよね?うん」

 たけるの脳裏にある人物像が浮かんだが、もしかするともしかするのか?

 たけるが一人、顎に手を当てぶつぶつ悩むのを、冴子は面白くなそうに見つめる。

 

「どうかしたのたけるくん?」

「え!?いや、何でもないですッ続けてください!」

 冴子の若干不機嫌そうな声音に、たけるは慌てて思考を止めて冴子の話しに集中する。


「ふうん。変なの。続けるよ、…〈殲滅する枢機(カーディナル)卿〉。やんごとなき家柄のご令嬢だけどアレもある意味怪物だよ。生まれ持っての豪運に、異能スキルが合わさって運命すら捻じ伏せる。無差別に破壊を齎すから、”カーディナル”ってついたみたい。〈先導する黒鬼(ブラックヴァンガー)卿〉もそうだけど、私が真っ向から戦って捻じ伏せられるのは彼女だけだった。代々高名な〈冒険者〉を世に輩出した旧家の娘だからか知らないけど”英雄”にお熱でね。50以上も年上の明陽こうようさんにいつも猛アタックしては撃沈する暴走乙女(笑)って感じ」


「あの、〈殲滅する枢機(カーディナル)卿〉が暴走乙女………」

 性別不明の破壊神。武装のあまりの強力さから、戦略級兵器認定されていて国外に出ることを条約で禁止されている嘘みたいな本当の逸話で有名な御仁である。それこそ、〈冒険者〉になりたてのたけるですら有名な話であり、筋骨隆々の鬼神だとか様々な噂があった。

 それがまさか、暴走乙女だとは誰が思おうか。 


 だが、冴子の暴露はまだまだ終わらない。


「一番癖が強かったのが”ショタ喰いの聖女”〈奇蹟の聖女(ナイチンゲール)卿〉かな。医療系の迷宮遺物レリクスで、死と生を自在に掌る魔性の女って感じの人だった。迷宮遺跡ダンジョンの底で死ぬのが夢で、迷宮遺物ダンジョンにすべてを捧げたらしいよ。その反動か知らないけど、ものすごく性癖をこじらせてて迷宮遺物ダンジョンから帰還してはショタを食い漁ってたらしくて、〈冒険者〉じゃなかったら今頃、刑務所かもね。お気に入りのショタ君がB(ランク)にいてね。いつも囲って甘やかしてた。深部にいた時も人目をはばからずに発情してたから…変な通り名が付いた筋金入りの変態だね」 


「ず、随分と濃い人たちですね。中々にクレイジーだ」

 〈無双する乙女(カーリー)卿〉神楽坂 冴子。〈鮮血なる銃皇(ゴア・ガン=カタ)卿〉井上 檀五郎の二名しかA(ランク)に逢ったことがないたけるであったが、何となくA(ランク)は少しおかしいと覚悟していた。が、冴子の話を聞く限り想定した二回りはヤバそうだ。


「そうだよ?だって〈冒険者〉の頂点に立つんだよ。私も人のこと言えないけど。迷宮遺跡ダンジョンに取り憑かれたロクデナシが〈冒険者〉になるんだ。動機が金銭欲だとかハーレム王だとか不純な理由でも、…それでも迷宮遺跡ダンジョンの放つ魔力に囚われて〈冒険者〉以外の道を考えられなかった同じ社会不適合者には変わりない。そんな掃き溜めの頂きに君臨するのがA(ランク)だ。私を含めてみんな、何処か壊れてるさ。いや、むしろ壊れてなきゃA(ランク)にはなれない」


「確かに。…俺もあの日から〈冒険者〉以外の道が考えられなくなりましたしね。俺もどうせ死ぬなら、迷宮遺跡ダンジョンの中で死にたい」

 

 きっと〈冒険者〉以外の職業に付けたとしても、〈冒険者〉以外に生きる道を見い出せなかったのが、〈冒険者〉だ。迷宮遺跡ダンジョンの放つ魔力に魅了されたこそどうせ死ぬなら迷宮遺跡ダンジョンの中で死にたい。

 他の同業がどうかは知らないが、少なくともたけるは、そして冴子はそうだ(・・・)


 たけるの心の底から吐き出した呟きに、冴子は顔をほころばせた。


「そう、それだよ。私もそうだけど、私が会ったA(ランク)は海外の人たちもだけど、みんなが迷宮遺跡ダンジョンにすべてを委ねてた。決して戻れないとしても気にしないで死地を踏み越えて、迷宮遺跡ダンジョンの深淵の奥底で眠る神秘を追い求める求道者だったの。神秘を見るためなら死んでもいいってみんな壊れてた。だから、私のことを〈先導する黎明(パイオニア)〉のみんなは優しく受け入れてくれた。どんな宝物よりも価値がある深淵の【価値】に魅了されてぶっ壊れた人たちだから、私のことをとても理解してくれた。叱られはしたけどね?……だから、A(ランク)に君を馬鹿にする様な人は居ないよ」


 何が何でも迷宮遺跡に潜りたいA級(生ける伝説)だからこそ、超新星アルヴァノヴァの冒険に対する熱意を好ましく思う。迷宮遺跡ダンジョンにすべてを委ねるほど狂っているからこそ、迷宮遺跡ダンジョンの中で死にたいという願いを理解できる。

 彼ら(・・)

 世代も性別も、何ら共通点がないが迷宮遺跡ダンジョンの抱く神秘に、果てしなく深い深淵の先にある真実《答え》に魂が恋焦がれてる点では同類の変態なのだから。―好みこそすれいとう筈がない。


「むしろ、君が目指してる未来図なんだから会う機会があれば存分に絡むといいよ。みんな絶対に君のことを気に入るからさ。めちゃめちゃ絡んでたくさん刺激を受けなさいな。……一部を除いて」


「一部を除いて?!凄い気になります」


「……この先深部に潜ることになれば嫌でも遭う(・・)からいずれ話すよ。A(ランク)の中で一番の性格破綻者。度し難いを地で行く、エゴイズムの権化。最悪な人だよ」





 未だ逢うこと叶わず全貌や詳細が謎に包まれた、この世で最も迷宮遺跡ダンジョンの深淵に踏み入れた英雄たち。

 ―生きて帰れるかも分からない旅路に嬉々として臨み、死に誘うトラップ、致命的な迷宮生物モンスターをものともせず、…時には死すら薙ぎ払い冒険の活路を切り拓く人間ヒト外見ガワをした怪物。神話級ゴッズまでの迷宮遺物レリクスの武装を許された、〈冒険者〉の遥か頂きに座す彼らであったが、いつの世もA(ランク)にはたったの36人(・・・)しか至れぬと謂う。


 迷宮遺跡ダンジョンの奥深くで、深淵を照らし〈冒険者〉の行く末を見守らんと輝く32の【迷宮の導べ星(ポラリス)】だが、たけるのお目通り叶ったのは未だ2名しかいない。いや、たった2名にしても、"生ける伝説"の呼び名が相応しい御仁であったのだ。



 未だ見ぬ彼らがどれ程の傑物なのか。


 たけるは胸を踊らせてならない。


 

 今いるリュウグウジョウ。その未到達階層フロンティアに潜り、最前線で未知に挑む彼らの勇姿が易易と脳裏に浮かぶ。

 まだ見ぬA(ランク)たちとの出合いに思いを馳せて、たけるは歩みを進めるのであった。



 ――すべては迷宮遺跡ダンジョンの為に。そして、魂が沸き立つ真の大冒険をする為に。



 彼らがどう言った人物なのか、迷宮遺跡ダンジョンの奥底に何があるというのか………。それを知れるのは、迷宮遺跡ダンジョンにすべてを委ね挑む者だけだ。

天蜘蛛の巣糸(ウェブスレッド)〉の最大ランクである〈天蜘蛛の女帝の冠(クイーンスレッド)〉の絶対数が少ないのと、とある理由からA(ランク)にはどれだけ多くても32人しかなれません。世界中数千万いる〈冒険者〉の中から厳選された、人外級の怪物がA級冒険者(生ける冒険者)なのです。


補足情報

32人のうち12人が日本の【ギルド】に所属していて1席空席なので、4割近いA級冒険者が一国に集中している状態です。その中でも、更に〈先導する黒鬼(ブラックヴァンガ―)卿〉率いる〈先導する黎明(パイオニア)〉は6人、つまり日本の全A(ランク)の半分、全体の5分の一が属してることになります。世界最強の冒険隊って別名ある理由、おわかり?

※戦力過多も甚だしい。そりゃ他国の【ギルド】が優先して援助されるわ。

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