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幕間Ⅰ  影の鼠

幕間その1

 何も見えない真っ暗闇の中を、闇に同化して進む怪しげな影があった。

 左目に当たる部分が、不気味な真紅の光を灯している他に特徴がなく。そもそもの話として光源一つない暗闇故に見えないが正しい。


 不意に影は立ち止まった。そして、


「…Meine Güte!……これは驚きました。予想よりも随分と早いお目覚めですね。そうは思いませんか?闇夜にこそこそ隠れているみなさん」


 穏やかで深みのある、されどどこか狂気を孕んだ男の声が暗闇に木霊する。

 

「………。どうされましたか?この様に動揺などして。暗闇に紛れた程度で、…端くれとはいえ〈冒険者〉の私の目を誤魔化せると、本気でお思いで?いえ、―そんなことよりも」


 隠れている場所を見抜かれただけでなく、動揺していることを見抜かれて動揺をする彼ら(・・)


 しかし、影はそんな様子に気を配る様子なく、独白を続けた。


「見慣れない人たちだとは思いましたが、体型から察するに日系人でござりますね?見慣れない二つの集団が、今現在ここに潜っていますが。…あなた方は、会社(・・)の人間ですね。――Oh…あなたは、もしや。……だとすると、わざわざこんなところまでご苦労なことですね」


 しかし、と声の主は若干だが語調を荒げ、少しばかり不穏な雰囲気を漂わせる。影の首元が碧く光り、赤い左目が怪しく揺らめいた。


「まだ私を諦めていないのですか?quite persistent.……流石にこの私でも少々、いえだいぶかなり煩わしく思います。そろそろ諦めて欲しいのですが。私は、【鍵】を見極めるのに忙しい。私の悲願を叶えるに相応しい器か否かを判別しているのでござります。卿もお強くなられて、少年の方も憧れに満ちた眼差しをしていました。あれは恐らく私と同類(・・)ですね」」


 声が1つから2つになり、2つから4つへと増えていく。

 形容し難いおぞましさと、どろどろとした威圧感を前に彼ら(・・)は思わず後退りをせずにはいられない。


「「「「おやあ、どちらに逝かれるので?わざわざ、ここまで私が出向いたのです。だというのに、もうお帰りになっては…忍びないですね。丁度、下の層で新たな迷宮遺物レリクスも手に入れたばかりですし。そこを動くな、………お前たちには実験台になって貰おう」」」」



 形容し難い悪意が、彼ら(・・)に襲い掛かった。






「「「「ふむ。流石に四人に増えたのは、やり過ぎましたね。思ったよりも歯応えがござりませんでした。これでは、まるで練習になりません」」」」

 

 袖に着いた血がひたひたと、ゆっくりと地に落ちる中、影はわらう。

 実際嗤ってしまうほど拍子抜けだったのは事実だ。研究職だということを加味しても、驚くほど手応えがなさすぎた。それだけ影が強い訳でもあるが、やはり四人に増えたのは少々過剰であったらしい。


 碧い光が収まり、影が一つに戻る。


「Ich kann es kaum erwarten dich zu sehen.逢える日が楽しみです」



 影の名はノーレンス。

 迷宮遺跡ダンジョンが秘める神秘に魅了され、神秘を暴かんとする外道の研究家。【ギルド】が有する機密を強奪せしめ、自身が発掘した迷宮遺物レリクスの無申請所持が日常茶飯事の狂人である。


――人は彼を、”悪魔に魂を売った外道(ビザール)”あるいは、”異端なる先駆者(スピリリオス)”とそう呼ぶ。

 



キーパーソンの一人、重要キャラでっせ

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