第一章エピローグ リュウグウジョウの底から
一章堂々完結ですぞ!!
「―痛ッ。あ、頭が痛い」
目を覚ました時に、真っ先に頭痛がガンガンきた。
次に手足のだるさが襲い掛かる。最高に悪い目覚めだ。
「回復痛だ。〈生命の秘薬〉を馬鹿みたいに飲んだらしいからな。しばらくは痛むぞ、〈超新星〉」
「〈生命の秘薬〉? ――ッ、あれ?」
〈生命の秘薬〉なんか飲んだっけな?冴子さんと”天空の廃墟”に行って、それで――。
「記憶が混乱してるみたいだな。まぁ、無理もない。【忌龍】相手に生き残れただけ儲けもんだ」
【忌龍】? 日本五大最強龍の、あの【忌龍】……。ああ、くそ。そうだ。
軽くあしらわれたのにかかわらず手も足も出なかった。
「…冴子さんは?」
「〈無双の乙女卿〉なら、今【ギルド】で兄ちゃんの神話級の申請をしていらっしゃる。迷宮遺物でも先をこされるたぁ、やっぱしお前さんは英雄になるべき器みたいだな。俺の慧眼に間違いはなかったぜ」
「英雄なんて、……俺はまだまだですよ。【忌龍】の慈悲があったから長く戦えただけで、誰かが助けてくれなかったら死んでました。……ッそうだ! あの飛空艇は、どうなって!?」
【忌龍】の龍の息で飛空艇が吹き飛んだことまでは覚えてるが、それから先の記憶が全然ない。
「そんな謙遜すんなや。ああ、それと被害に関しては気にする必要はない。竜狩りを生業とする以上、飛空艇の喪失には慣れてる。3隻失ったのはデカいがもう2隻飛空艇が残ってるしな」
――? なんでこの人はさっきから自分のことみたいに話してるんだ? ていうか、何故ここに辰巳先輩が? 見た感じここは【ギルド】の病室なのだが、一体どうしてここにいるんだろう。
「あ”あ”、そういえば詳しく自己紹介をしたことがなかったな」
辰巳先輩は、しまったと自らの禿頭を叩くと竜の頭蓋骨を模したネックレスを掲げて見せた。
「俺は辰巳、〈紅鬼〉と呼ばれてる。そして、第六層を根城に活動する竜狩り専門の討伐隊、〈龍狩り師団〉の団長でもある。恩に着るつもりはないが、兄ちゃんの命の恩人だな」
「どうして”天空の廃墟”に来てたんですか?」
辰巳さんについて歩きながら、俺は辰巳先輩に話しかけていた。
「なんでって、そりゃあ〈暴竜〉が大群で”天空の廃墟”から飛んで来たら何かあるなと思うのが【ギルド】だからな。飛空艇を唯一討伐隊で保有してて尚且つ竜退治を専門としてる俺らに依頼が来るのは当然だろ?光の光線は卿の象徴だからな。すっ飛んで来た」
「ごめんなさい。その、船を3隻も。それに犠牲になった人も」
非常に高価な飛空艇を3隻も失わせてしまったのだ。それにあの爆発を見るに、乗組員だった人も…。
「さっきも言ったが飛空艇の損失は損失のうちに入らねえよ。…好き好んで暴竜の巣窟に巣食って竜を相手する変態が俺らだ。浅部で死ぬならまだしも、〈暴竜〉のいる第六層で龍の最強種【忌龍】の手にかかって死ねるなら本望だ。重傷者は出たが死人は出てないから兄ちゃんが気に病むことはない」
「…でも」
「くどい。いい加減にしろ。謙遜もそこまで来ると嫌味だぞ。3隻の損失が無駄になるだろ。俺たちの命よりもA級一人の命の方が価値は高い。それはA級にスカウトされた兄ちゃんにも言えることだ。少しはそのことを自覚しろ」
いつまでもぐじぐじ言う俺を、辰巳先輩はだぁーっと頭を胸倉を締め上げた。
「兄ちゃんは誰もが羨むA級の片腕に選ばれたんだ。それをラッキーだとか、実力じゃないだとかほざくな。英雄の器じゃねえだァ? 嘘をつくな。【忌龍】相手にあれだけ戦ってて何をふざけたこと言ってやがる。――あれを相手にどれだけの人が無念を抱いて死んでいったと思う?それを五体満足に戦い抜いた癖に、否定をするな。兄ちゃんのそれは謙遜がじゃねえ、逃げだ」
俺の目を真っすぐに覗き込みながら、辰巳先輩は静かに怒鳴り声をあげる。
顔と顔がくっつきそうな超近距離で、辰巳先輩の爛爛と煌めく瞳がよく視える。
真っすぐな想いが、ダイレクトに届き俺の心を熱く震わせた。
「それに〈冒険者〉が謙遜するもんじゃない。先人たちの犠牲の賜物が、先代から紡がれた尊い価値の積み重ねが今の俺たちを作ってる。謙遜は先代から繋がれてきた誇りと魂に泥を塗る愚かな行為だ。それとも何か?卿と紡いできた冒険は、簡単に否定できちまうような薄っぺらいモノなのか?」
辰巳先輩の気迫に呑まれ声が出ないが、はっきりと否定できる。
俺の冒険は、―冴子さんと紡いだ冒険は短いが誰かが否定できる物じゃない!!!
何をうだうだしてたのだろう。
俺は〈冒険者〉だ。
迷宮遺跡に魂が捉えられ、身も心も何もかもを―すべてが迷宮遺跡に魅了された変態。―〈冒険者〉になる以外の道を見つけられなかったロクデナシじゃないか。
何故、自信を失っていた?弱い事は最初から分かっている。
経験が足りない。
実績も足りない。
知恵も武力も足りない俺が何を一端に落ち込んでいた?
―敵う訳がないじゃないか。傲慢になるのも大概にしやがれ!
「俺は五百雀 尊。日本の〈冒険者〉、A級が一人〈無双の乙女卿〉が片腕」
辰巳先輩の言う通りだ。俺は、生ける伝説直々にスカウトされた新米冒険者なんだ。
今は有象無象に毛が生えただけでも、いつかは。
現在は路傍に落ちてる原石だとしても、未来は違う。
―光り輝く宝石になって見せる。何故なら、俺は!!
「リュウグウジョウを踏破し、生ける伝説に肩を並べる…いや、伝説を超える男だ!」
辰巳先輩の眼を真っすぐに見つめて俺は思いの丈をぶちまけた。
辰巳先輩は俺の言葉を吟味するように睨み付けていたが、不意にはにかむと俺の胸倉から手を離す。
「―ふっ。良い目をするようになったじゃねえか。もう心配いらねえな。〈無双の乙女卿〉ならこの扉の向こうだ。顔を見せて安心させて差し上げろ」
「ありがとうございます!」
俺は辰巳先輩に礼を述べると、扉を開けようとしたのだが肩を掴まれ止められた。
「俺はA級になれる器じゃないが、お前よりたくさんの伝説たちの雄姿をみてきた。兄ちゃんの輝きはA級の方々と比べても何ら劣らない。…期待してるぞ。―それと上を見るのは結構だが、足元を疎かにしてぽしゃるんじゃないぞ」
「は、はい。ありがとうございました!!」
がばっと頭を下げるが、辰巳先輩は苦笑しながら片手をひらひらと揺らした。
「なぁに。あれだけ卿が尊くん凄いってはしゃいでるのに、肝心のお前があんな体たらくじゃあ卿に申し訳ないだろう?それだけだ。後は同じ冒険隊同士、水入らずで話すといい。積る話があんだろ。……あばよ」
そう言って去る辰巳先輩。
本当に辰巳先輩にも頭が上がらないな。
迷宮遺跡に潜ってから、たくさんの人たちに助けられてばかりだ。先生然り、佐藤さん然り、檀五郎さん然り、辰巳先輩然り。それに当然、――冴子さん。
A級になって、不動の伝説を築きあげて恩返しをしないとな。
「ふぅ。息を吸って吐いて…おっはようございまあす!!!!!」
俺は勢いよく扉を開けた。
「うるせえぞ、坊主!!!」
個室を予想しての奇行だったのだが、まさか普通のカウンターだとは…。普通に怒られたじゃないか。
「尊くん!!!」
あ、次どうなるかわかったぞ。流石に俺も学習する。
俺が両腕を広げた瞬間、真紅の塊が突っ込んで来た。
「ぐっ。おはようございます。冴子さん、今起きました」
〈海神ノ蒼鎧〉を身に付けているというのに、それでも衝撃が来たぞ。
「おはよう!元気?怪我はない?記憶は大丈夫?どこか変な所はない?」
怒涛の勢い飛んでくる安否確認。ここまでくるとマシンガンだな。
「大丈夫、大丈夫です。冴子さんが〈生命の秘薬〉をくれたお陰で何とも。回復痛で少し頭が痛みますが問題ありません」
「あ、あの。ごめんね。〈生命の秘薬〉出し惜しみして。あ、別に勿体ないとかそんな理由で出し惜しみしてたわけじゃないの。〈生命の秘薬〉に慣れて怪我に対する忌避間が薄れたら困ると思って………。本当にごめん」
〈生命の秘薬〉という単語を聞いてしゅんとなる冴子さん。
確かに【忌龍】戦で何本か〈生命の秘薬〉を渡された時、あれ?となったが無我夢中で直ぐに気にならなくなったし、俺はそんなことを一々気にしない。
「あははは。気にしてませんよ。そんなこと。…そんなことよりも、俺の方こそ申し訳ないです。【忌龍】の足元に及ばなかった」
「ううん。そんなことないよ。【忌龍】に遭遇して、たったの二人であれだけ戦えたんだから尊くんも凄いんだよ」
辰巳先輩に言われた時も心に来たが、冴子さんに言われると更に心に染みるな。
おかけで心の整理がついた。
冴子さんにはちゃんと伝えよう。辰巳先輩には黙っていた俺の野望を。―――二人で叶えたい夢を。
「冴子さん。俺、必ず強くなります。今よりもっともっと強くなって。たくさんの迷宮遺物で武装して。……そしたら、【忌龍】を討伐しましょう。不動の神話を、不敗伝説を破ってアイツを地に着けてやるんです!」
最強たる【忌龍」の討伐。それを以て俺の、俺と冴子さんの不動の伝説とする。
後世にも伝えられる神話を作るんだ。
今は無理でも、A級になった未来なら、きっとやり遂げられる。俺はそう信じてる。
「にしししっ。いいねぇ、それ!尊くんの申請書も通ったし、絶対にリベンジだね」
「はい!」
【ギルド】に斡旋された政府の依頼を終え、これからの話に妄想を膨らませる俺と冴子さん。
だが、そんな平穏を破るのは、
―――いつだって冒険の知らせであった。
「大変だ!未到達階層に潜った捜索隊がたった今帰ってきた!!〈先導する黎明〉は、〈先導する黒鬼卿〉率いる冒険隊は、消息不明だ!」
「……嘘」
冴子さんが思わず零すのも無理はない。
〈冒険者〉ブームを巻き起こした稀代の〈冒険者〉が消息不明、その言葉が齎す衝撃は余りに大きい。
【ギルド】が秘密裏に知りたがっていた噂。その噂の真実は、余りに衝撃的過ぎた。
―――side???―――
眩く輝く空。
眩く煌めく大地。
辺り一面が黄金に覆われた、黄金の世界。
「何とよもや……、まさか【番人】相手にあそこまで善戦するとは思いませんでした。素晴らしい、実に素晴らしい」
リュウグウジョウの奥深き地に眠りしは、誰も訪れたことの黄金郷。
「存外、3000年の止まりし刻が動き始める瞬間は近いのかも知れません。これはうかうかしていられないですね」
変わることの無い黄金の世界に、突如として黄金の風が吹き荒れる。
うねり曲がりすべてを巻き込むその風は、色々な物を飛ばしてかき混ぜる。
高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡に挑む
―第一章 されど止まりし刻は、再び動く(上)―完結
to be continued
謎の男登場です(笑)
さてさて。サイドストーリーという名の番外編が無ければ余計に文字数を消費することがなく、私の目標である一章を10万字に抑えるを達成せしめたと私は強く思っています。サイドストーリーをらカウントしなければ余裕で10万字に収まってるし、…どう思います?
などと思っていた時期がありました。作者の謎の拘り故に様々なエピソードをカットし駆け足に駆け足でダッシュした第一章。割とあっさりしてないでしょうか?ごめんなさい。
【忌龍】戦とかもっとボリューミーに書きたかったのに、すごくあっさりと終わってしまったし読者の皆様には謝罪と感謝の念しかいだきません。ありがとう(*´ω`*)
もうこれっきりで作者の拘りは綺麗さっぱり消え去るので、二章以降はのびのびと変にカットせずに書いていきたいと思います。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
4/1より二章開幕予定(もうすでに開幕してます)
――先に宣言しておく。二章はクソ長い




