表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第一章 されど止まりし刻は、再び動く(上)
27/39

天空の廃墟

ヤバいヤバい。冒頭の描写に躓いてから不貞腐れて……気付けばこんなにたってしまった!!

たけるくんは馬鹿なのか!?いや、馬鹿だった。こんな、右を見ても左を見ても〈暴竜ドラゴン〉しかいないような場所で大声を出すとか馬鹿過ぎるよ!」

 冴子さんは俺は大声ではしゃいだことに痛くご立腹であられる。


「ごめんなさい。悪かったと思ってますから」

 〈雷竜サンダードラゴン〉をほぼほぼ単独討伐を成し得た訳だから、少しくらいは調子に乗ってもいいじゃないか?そう思わなくもない自分がいたが、〈暴竜ドラゴン〉の巣のど真ん中と思われる場所で叫ぶ俺が100%悪い。

 ここは俺が謝り倒すの一択である。


「本当に悪かったですから。俺が悪かった、この通り」

 手を合わせて俺は頭を下げる。

 しかし、冴子さんはちらりと一瞥するだけで全然許してくれない。


「な、何でもしますから!」

 

「本当に?」 

 

 しまった。これは発言をミスったかな?何だか嫌な予感がしてきたぞ。

「ええい、本当ですよ」

 畜生、こうなったら自棄ヤケだ。何でも言うことを聞いてやる! 


「地上に帰ったアイス一本ね。もちろん君の奢りで」

「あ、はい。アイスですね。一本とは言わずに、それはもう死ぬほど買いますよ」

 アイスか。てっきりどぎつい要求が来るものだと、覚悟を固めていたのだが何だか拍子抜けだ。


 だがしかし、それは俺の思い過ごしに過ぎず。



「許してないから。二度目は無いから…分かった?」

 背筋が凍る思わずそっとするような声音で、冴子さんは俺に忠告した。

 その声音は普段の冴子さんからは想像もできないほど冷徹で、底冷えする冷たい声であり、俺はその言葉にただ頷くことしかできなかった。





 気を取り直して、”天空の廃墟”に向かった俺であったが。

 

 龍寓宮リュウグウキュウは忽然と住民が消え、生活感がそのまま残った古い遺跡という雰囲気だが、”天空の廃墟”はまるで生活感がなく、住民がいない都市という感じがする。


 計画的な都市でることは間違いない。


 だが、しかし。かつて住民が住んでいたという雰囲気がまるでなく、空気がどんよりとしていて、住民が居た(・・)形跡を示す遺構こそあれどもただそれだけだ(・・・・・・・)


 規模は明らかに”天空の廃墟”が上だが、”天空の廃墟”は死んだ都市(ネクロポリス)という表現が相応しい。

 陳腐でありふれた表現だが、これ俗に言う”ゴーストタウン”なのだな、と俺は思う。


 長い間、雨風に曝された遺構。かつて誇っていただろう栄光は見る陰もなく、今はただ朽ち果てるだけの古き遺跡を俺はあばいていた。




 何故同じ遺跡なのに、迷宮遺跡ダンジョン自体は劣化せず、都市等の遺構は朽ち果てるのか?

 ―そういうものなのか、あるいは……。後から作られた故なのか甚だ疑問だが、今はそれを置いといて迷宮遺物レリクスの捜索に集中する。


 地面を踏み締める度に、足の裏からふしゃりと言う音と、柔らかい雪を踏み締める感触が足の裏から伝わってくる。

 風雨で劣化した石畳の地面が、風化して結晶の様に朽ちているのだろうか。

 凍った雪を踏み締める感覚を味わえる石畳何ぞ、そうそうない。

 

 塩気を帯びた風がそうさせたのか?


 あるいは、迷宮遺跡ダンジョンの環境がそうさせたのか?


 ―っと。また、熟考してしまった。迷宮遺跡ダンジョンは本当に、人類を魅了してならない。


 まさか、地面の感覚一つにしても考えさせられるとは迷宮遺跡ダンジョンには恐れ入る。



『あまり壊し過ぎると【ギルド】がうるさいし、〈暴竜ドラゴン〉がひっきりなしに寄って来てキリがないからほどほどにね』

 と、冴子さんに再三に渡り注意されたので”〈衝撃斧ブラストアックス〉を使って遺跡を薙ぎ払い迷宮遺物レリクスを発掘する”という案はボツになった。というより最初から論外だ。


 迷宮遺跡ダンジョンを破壊するなんて畏れ多いし何かよくない気がする。

 ……てか、再三注意するということは冴子さんは俺がやらかすと思っていたという訳か。



 ―冴子さんは俺を何だと思ってるんだ???



 まあ、いいや。


 建物の中をちらっと覗いたりして、何かないかを隈なく探す。


 直感に従ってツルハシでここだというところを掘り返したりしてるが何も見つからない。めぼしい迷宮遺物レリクスを粗方、〈暴竜ドラゴン〉が持って行ったのではと嫌な想像がよぎるが…無視だ無視。


 生活感がまるでないのだから迷宮遺物レリクスが見つかり辛くても仕方ない。

 ヘソクリ代わりに迷宮遺物レリクスを仕舞ってはいやしないだろうか、と庭と思しき場所をほじくり返しみたり、とにかく虱潰しに徹底的に探す。


 なにせここは手つかずの宝の山なのだから。


 夥しい数の〈暴竜ドラゴン〉が巣食うこの第六層でも、さらに〈雷竜サンダードラゴン〉のテリトリーが近い魔境故に放置されていたのだから、根気よく探せば必ず見つかる。


 そんな風に己を鼓舞しながらずっと探す俺。流石に心が折れそうだ。



 ちなみに冴子さんは今何をしているのかというと……。

 遠く離れた場所で、苦悩する俺をさかなに優雅に茶を飲んでいた。あくせくと迷宮遺物レリクスを求めて東奔西走する俺を見て楽しんでいる訳だ。

 ……俺が言うのもなんだが中々にいい性格をしてらっしゃる。檀五郎さんといい冴子さんといい今の所、出会って来たA級ランクにまともな人はいないな。

 

 まともな人格者だとA(ランク)にはなれないのか、はたまたA(ランク)になったからまともじゃなくなったなのか。



 うぅむ、解せぬ。




 閑話休題。とにかく!俺は諦めらないぞ!!




 〈暴竜ドラゴン〉がよって来ないか彼らのご機嫌を伺いヒヤヒヤしながら探索を進めて来た俺。

 熱中するあまり時間の感覚を失いどれくらい時間が経ったのか、てんで検討が付かないが俺は祭壇と思しき場所に来ていた。

 この遺跡、あるいは都市か。都市には広場がたくさんある。

 

 噴水もあり少ないが緑もあることから広場は住民たちの憩いの場だと俺は考えたのだ。

 緑に関しては数千年という年月のせいという可能性も無きにあらずだがこの際度外視しておく。


 生活感がまるでないこの都市で、唯一"憩い"という生活感を感じさせる広場。これは怪しいと俺の親愛なる第六感がささやいてくるので、すべての広場をしらみ潰しに探し回った結果。


 …怪しげな窪みを見つけ今に至る。



「…隠された祭壇。怪しい。絶対に何かある」


 祭壇と思しき箇所にこれ見よがしに複数置かれた小物。

 正解を引けば当たりが出てハズレを引けばトラップが発動する。ある種の定番のギミックだろう。


 俺は祭壇をくまなく調べることにした。

 

 まず祭壇に鎮座きているのは、精巧な球体と短剣を模した土偶だ。触ってギミック等が発動したら怖いので触れずに見分するが特に怪しい点は見受けられない。いや、そもそもが怪しいが……それは置いといて。


 次に祭壇周りだが、見慣れぬ情景を描いた彫刻装飾レリーフが彫られていた。

 神話や伝承は〈冒険者〉にとって必須の教養であり俺自身が好き故に、マイナーな神話からマニアックな伝承まで古今東西ありとあらゆる民族の神話と伝承、伝説を頭に入れているのだが……この彫刻装飾レリーフの情景は初めてお目にかかる。



 一体何を描いているのか、皆目検討がつかないぞ。


 構図的に何らかの存在を讃えた絵だということは察せるがそれ以外はさっぱりわからん。ギミックに関連する彫刻装飾レリーフなのだろうが、これじゃあお手上げだ。

 

 文字も書いてあるがさっぱり読めない。




――悩む必要はない。




 ひたすら考え続けるが、脳裏に誰かの声が響く。

 

 誰の声だろう。霞がかった思考の最中に、妙に心に響く声が割って入ってくる。



――己を信じろ。答えはわかってるんだろ?


 答えは分かっているのか?本当に?




――自分を信じれない奴がどうして英雄になれる?自分を信じれない奴に冒険が務まる訳がない。


 俺は…、俺は――、俺ならばッ



 俺は短剣を手に取る。すると、ガコンという音がして祭壇のある空間全体が大きく揺れはじめた。

 選択をミスったかと、身構える俺であるが、そんな警戒は無意味に終わる。



 祭壇が二つに別れ中から、和を彷彿させる鎧を載せた台座が姿を顕したからだ。


 蒼い鎧。右肩には龍を模した装飾が施され、胸装には荒々しい波が描かれている。国宝の如き緻密な細工で全身を彩ったその鎧は、まるで博物館に展示される国宝の様であった。


 ぱっと見ただけでは博物館の一品といわれても何の違和感も感じないだろう。しかし腹部にあたる箇所に、蒼い宝石が嵌め込まれていて海原の如く蒼光が波打ってる様子が、この目の前の鎧が迷宮遺物レリクスであることを示している。


 隠し部屋と思われる部屋のギミックを解いてから突如として出現した謎の迷宮遺物レリクス。まるでギミックを解いたご褒美と言わんばかりのこれは、―まるで……

 


褒賞品ドロップアイテム……、迷宮遺跡ダンジョンからの贈り物だね、たけるくん。やったじゃん、ひょっとしなくても伝説級(レジェンダリー)以上は確実な品さ」


「やっぱり見てたんですね」

 横から声が掛かったことに思わず、肩がビクっとなりそうだったが気力で抑え、俺はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべている冴子さんに抗議の意も兼ねてジト目を送る。


 しかし、そんか俺のささやかな抵抗なんぞ目にも止めずに冴子さんは、ただただ目を輝かせて俺が発見した迷宮遺物レリクスを見つめていた。


「そりゃあ最初から見てたさ。それで君が隠し部屋を見つけたもんだから、私はゆっくり見物でもしようかなと思ってぶらぶらしてたら、いきなり揺れたんだもん。たけるくんがぽしゃったかなって心配になるよ。それよりも、この鎧だよ。たけるくん、触れてごらん。私の予想が正しければこれは―」


 俺は冴子さんの言葉が終わる前に、迷宮遺物レリクスに手を触れた。途端に鎧は意思を持ったかの如くうごめき、俺を飲み込む。

 俺の身体に張り付いた鎧は、俺の身体をひとりでに這い再び鎧となるが、その見た目は変化していた。

 宝石はより青々と輝き、無骨な見た目をしていた左肩の装甲は、水を纏い水を渦巻かせる。


 他の細やかな見た目は、俺からは見えないがさぞかっこいい姿となっていることだろう。


「……〈意志持つ道具(リビングウェポン)〉。俺の、初めての神話ゴッズ迷宮遺物(レリクス)!」



「正真正銘君だけの遺物だね。おめでとう。まさか、神話級ゴッズを見つけるなんて予想外だよ」


 今はまだ効能は全然分からない。これがどんな規格外の力を秘めているのかまったく分からない。が、これが俺の初めての神話級ゴッズの武装だ。


 なんかこう、心に込み上げてくる物があり俺は感動に打ち震えることしかできない。



「〈海神ワダツミ蒼鎧ソウガイ〉と名付けよう!」

 迷宮遺物レリクスの発見者に命名権があるのだから。







 

「地上に帰ったら申請書とか登録証とかの雨あられだね」




 なんで毎回毎回俺の感傷にケチをつけたがるんだ冴子さんは?

 正直だいぶかなりイラッと来たが惚れた弱みと言いますか、敬意を払うべき偉大な大先輩なので許すが。




「――っ!!」

「――!」


 イマイチ締まらないなと。そう一人で愚痴っていたのだが、何やら空気が変わったことを俺は感じ取った。

 


 何かがおかしい。



 目配せをしあうと俺たちは祭壇の外に駆け出した。




 〈火竜フレイムードラゴン〉に、〈雷竜サンダードラゴン〉、〈雷狗竜リンドウルム〉などなど。数えるのが馬鹿らしくなるほどたくさんの種類の〈暴竜ドラゴン〉が、一斉に"天空の廃墟"から我先にと飛び去っていく。


 まるで強大な捕食者が現れ、逃げ惑う獲物の様だ。





 事実それは正しいのだろう。



 俺は姿を見ていないのにも関わらず、理不尽な天災・・がこの場に君臨したことを肌でひしひしと感じ取っていた。鳥肌が立ち、冷や汗が止まらない。


 あの冴子さんですら固唾をのんで緊張している。



「―ッ!だから【生態系厄災スタンピード】が…!」


 姿を顕した天災・・に冴子さんは悪態を吐く。




 漆黒の瘴気を身に纏った、生ける死の象徴。

 

 真紅の光を灯す鋭い瞳で、上空から獲物を睥睨へいげいする目線。節くれのない二本の長い枝角と、頭部を囲う様に半円を描く角を二本生やす、貫禄に満ちた重厚な気配を漂わせる圧倒的強者。



 自身が何人足りとも敵わぬ最強と自覚しているのか、天災・・はゆっくりと翼をはためかせその巨体を堂々と地に降ろす。



 二つ名持ち(ネームド)の中でも飛び切りヤバい最強。


 俺も何度か【ギルド】の資料や、リュウグウジョウの攻略本で見かけた最強の存在、それが。





「「【忌龍キリュウ】!!」」


 

 


 第六層はおろか深部最強の個として名高い、正真正銘の"生ける天災"である。



 

 こんなのにばかり遭遇するとは。……嗚呼ああ、俺はなんて豪運なんだッ畜生めェ!!!



 


 ――己が信じる道を取れ。



    己が心を信じよ。



     己を讃えよ、己を研鑽せよ。




 声高らかに己が武を喝采せよ。




 

  いさおしは傲れる蛮勇に与えられん――


 

 

1章クライマックスです。駆け足でごめん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ