暴竜の巣窟は、浅いが広い
誰だよ、前回きりがいいとか言ったやつ!投稿にめちゃめちゃ日が空いたじゃねえか!
はい、私です。ごめんなさい。ゲームのし過ぎです。
「あそこでは"速さ"が生命線だよ。移動然り、戦闘然り。時間を掛けて〈暴竜〉の気を引き過ぎると、私でも手に負えなくなる」
眼下に広がる第六層を、二人で見下ろしながら冴子さんは降りる際の注意事項を述べる。
壁の様に流れ落ちる滝の丁度切れ目にある岩場に、俺と冴子さんは身を寄せ合って座っていた。
「リュウグジョウに限らず多くの迷宮遺跡に当てはまることだけど、深部への入口は試練がある。ここみたいにこうも顕著なのは逆に珍しいけどね。……リュウグジョウの試練は至ってシンプル、〈暴竜〉に屈するな。24種いる〈暴竜〉たちをやり過ごして第七層にたどり着かなきゃならないのさ」
冴子さんの言葉に、俺はごくりと唾を飲み込んた。
〈暴竜〉という、単純明快で物理的にも理解しやすい試練に俺は思わず涙が出てきそうになる。奇跡が即物として顕れるのが迷宮遺跡だが、危険までこうも即物でなくていいのに。
下から嫌でも聞こえてくふる〈暴竜〉たちの咆哮が恨めしい。
「だからさっき言った様に、第六層では"速さ"が重要になってくる。幸い私たちは二人しかいないからその点、心配はいらない。で、本来の第六層の攻略方法なんだけど……バラけて行くのが一番生存率が高いんだよね。集団で行って見つかりやすくなるよりも個々に別れた方が戦闘も必要最小限で済むからさ」
檀五郎さんも佐藤さんも言ってたことだが、第六層は襲われる危険性を避ける為、ある程度の人数がいると個々にバラけて潜るのだそうだ。
そうすることで、〈暴竜〉に狙われる可能性が格段と減り戦闘をより回避しやすくなる。逆に竜狩りを目的とするのなら、運搬や補給も大掛かりになるので物々しい人数になるらしい。
「……だけど、俺たちは二人一組で潜る必要があるんですね?俺の持つ装備が心許ないから」
俺の相棒〈衝撃斧〉は希少級で、戦闘に使えそうな迷宮遺物はそれしか所持してない。
流石に〈暴竜〉と殺陣を演じるには少々無謀過ぎる装備である。工夫次第では、どうにか出来そうな気もするが、寄ってたかって袋たたきにされるのがオチだ。
「その通り。〈衝撃斧〉は心強い武器だけど、それだけじゃ〈暴竜〉を相手取るのに不安だからね。ちょっと正規ルートから外れていこうと思ってるから、それで潜りがてら迷宮遺物を探そう。浅層より攻略は進んでないし何かしらあるよ」
「また、足しを引っ張ってごめんなさい」
何だか冴子さんの足を引っ張ってばかりな気がする。
「いいっていいって。まさかこんなに早く第六層に潜ることになるなんて流石の私も予想外だもん。本当なら第四層、五層の未踏破区域を探索して装備を整えてから潜ろうかなって思ってたし。それにどの道二人なら組んで行った方が楽しいじゃんか。
―っと、話がそれたけど、"速さ"が命綱なのさ。
だから戦うなら後腐れなく徹底的に殺ること。
私も徹底的に殺るから、だから出し惜しみなしで全力を出してね。私も迷宮遺物を使うから、私の指示に従うこと。いい?じゃないと巻き込まれちゃうから」
「りょ、了解であります!」
俺は敬礼をして心に刻む。戦闘になったら死力を尽くして、死ぬ気で戦うと。
冴子さんの迫力に圧され思わずに出てしまった敬礼だったが、冴子さんに笑われてしまった。解せぬ。
だが、クスクスと口に手を当てて小さく笑う冴子さんを見ることができたので良しとする。クスクス笑う冴子さんも、品があって大人の色気もあるから物凄く絵になるのだ。
「質問あるかね?」
と芝居掛かった口調で、冴子さんが話しかけてくる。
にやにやしながらの言葉であり、明らかに楽しんでの行動だ。
「いいえ、ありません」
俺も茶番に乗ると、冴子さんは頬を引き締めて、鷹の様な眼になった。何だか、雰囲気が凛花教官に似ている気がする。厳しい雰囲気のあるお姉さんもそそる。
凛としていて格好いい冴子さんも素敵だ。
「うむ。いい返事だ。まず間違いなく戦闘になると思うが、決して慌てずに落ち着いて冷静にいること。焦りは禁物だ。〈衝撃斧〉は思うに〈暴竜〉が相手でも一対一なら十二分に効果を発揮するから、自分と相棒を信じなさい」
「はい、了解であります」
「うむ。いい返事だね。じゃあ―行ってらっしゃい!!」
「へ?」
冴子さんは、にししっと笑うと親指を立てて俺の背中を蹴飛ばした。
途端に落下する俺。
「ほえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
無防備にも背中を蹴飛ばされた俺は、頭から真っ逆さまに落ちることを余儀なくされた。
あっという間に第五層の縦穴を抜けると、深さはないがリュウグウジョウで最も広い第六層に辿り着く。風が勢いよく風にぶち当たり、もの凄く痛い。痛すぎる。
とにかく痛い。
景色が切り替わり、第五層とはまるで違う光景が広がるが、痛すぎて余裕をもって見えやしない。
というか、割と最近似た様な状況にならなかったっけか?
下から吹き付ける強烈な上昇気流と相まって余計に痛いぞ。
五層は、まだ浮島とかがあって幾らか軽減されるが、第六層は遮蔽物が少なく直で風がぶち当たるのだからマジで痛い。
その上昇気流が、命綱なしの自由落下の勢いを減速してくれているのだが、それはそれこれはこれだ。
「うひょおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
上から冴子さんのうきうきした絶叫が耳に届くが、俺は知らん。知らぬのだ。
と、そうだ。ヘルメットにゴーグルをつけていたな。
ヘルメットにつけていたゴーグルを下ろすと―、
視界が一気に開けた!!
「おおおお!!!」
風邪がぶち当たり痛いが、視界はクリアだ。
眼下を悠然と飛ぶ暴竜の鱗が一枚一枚ありありと見える気がする。
見上げれば、第五層の縦穴がもう小さくなっていた。
第五層からは見えなかったが、眼下に青々と広がる海のど真ん中にぽつんと島が一つ浮かんでいて、その島に古いが大きい宮殿が建っている。
―そうか!あれが。
「あれが、”忘悠の城”…!リュウグウジョウの深部、第七層の入り口か!!」
「尊くん!掴んでえ!」
冴子さんの叫びが聞こえると同時に、目で追えないまでに速い糸が伸びてくる。
反射で思わず掴むが、いよいよもって俺も化け物染みてきたな。そう自虐?していると。
「両手で掴んで気合入れて!!!」
「ふんす!!!」
間髪入れずに両手で、全力で糸を握り締める。
「ふぐぅ!!」
両腕に凄まじいGが掛かり、腹の底から息が叩き出される。
そして、弧を描がきながら前方の小さな浮島に近付いていく。まるで空中ブランコである。
微妙に高さが足りずこのままでは崖にぶち当たるが、冴子さんの〈天蜘蛛女帝の冠〉が糸を巻いているので、島に着く頃には丁度いい高さになっていた。
両膝を柔らかく使い、芝をクッションに衝撃を往なしながら着地する俺に対して冴子さんはと言うと。ドゴオオンと凄まじい轟音を立てながら両膝と両手を同時に付いて、地面を抉らせ土砂を巻き上げながら着地した。
流石はA級。やることなすことの一々が、常人のそれとは規模が違う。
マジで本当に体の作りが根本的に違うんじゃないかな?ていうか、マジで同じ人間か?
俺の目標も一応A級なんだが、冴子さんや檀五郎さんを見ているととてもじゃないが成れる気がしないぞ。
しかし、俺のそんな気を知らないで冴子さんは、一人説明を続ける。
「海のど真ん中に建ってるアレが”忘悠の城”だけど、あれ自体が迷宮遺物でさ。上とこの層の上昇気流の正体で、近付きすぎると風圧で身体がバラバラにされちゃうからここに避難したワケ。それにあの城の近くは〈龍〉の巣だしね。ここを基点に前線基地に向かおう」
……はあ。
―何だかどっと疲れたが、とにかくッ。
第六層での俺と冴子さんの冒険が開幕じゃい!!
いつのまにやらブックマーク登録件数は10件を超えて、ついには、なんととなんとなんとおおお!!!!
評価まで付きました。私がエタることなくここまで続けているのは一重にこの作品を読んでくれる物好きなみなさんのかげです!
絶対にエタらせないので、これからもよろしく!
※何よりこの話を、他ならぬ作者である私自身が読みたいので。(笑)




