暴竜の巣窟
短めです
【生態系厄災】で足止めされて、ようやく遠征の目的地である第五層に着いた矢先に急遽【ギルド】から依頼を斡旋され、休憩する間もなく第六層に潜ることになった〈夜の明け星〉こと俺と冴子さん。
〈雷獣〉に襲われたり、突烈風に吹き飛ばされて落下しそうになったり、【獣海嘯】に遭遇したり、群れを逸れた〈金翅鳥〉にばったり出会ったり。
様々な苦難に襲われたが、同時に色んな人たちに励まされて、遂にここまでやって来た。
〈変わらず時を刻む時計〉を確認すると、檀五郎さんと別れてから地上日では四日しか経っていないが、体感ではもう何週間も前のことに思える。
そんな俺であったが今、何処に居るのかと言うと。
「あれから下が第六層だよ。たくさんの〈冒険者〉が命を落とす、深部に至る為の最後の試練。……ここを乗り越えたら、そこから先は深部だ」
第五層と第六層の境目に到着していた。
境目といっても第五層と第六層は繋がっているので、下を見れば第六層の様子をいつでも覗い知れる。
だが景観はまるきり変わる。今はまでは円柱状の壁に従い落ちていた滝も、広さの違いから支えがなくなる第六層ではほとんどが霧散して消えてしまう。
そして、なによりも変わるのが。
「…凄い。本当に〈暴竜〉だらけだ。ここまで咆哮が聞こえてくる」
第六層の別名でもある、第六層の象徴。夥しいまでの〈暴竜〉が眼下の空を我が物顔で飛び回っているのだ。
なにかの拍子でここに来るのでは?そう感じずにはいられないほどの距離を、最強迷宮生物の代表格である〈暴竜〉が飛んでいるのだ。
こんな数の〈暴竜〉が一箇所に棲む迷宮遺跡なんぞ世界中を探しても、このリュウグジョウくらいだ、たぶん。
第六層を降りる際の恐怖は、第五層とは比べ物にならないだろう。
現に今も、俺の膝はこれから遭遇するであろう脅威に、震えて笑ってしまっている。
「危険度も桁違いで、死の脅威がより身近になるけども。ここで躓くようじゃA級にはなれないし、英雄には程遠い。……ここは深部の玄関。ですよね?冴子さん」
「にししっ、わかってるじゃん。どの道深部ではもっともっと危険な迷宮生物がうようよいるし、ここで慣れるしかないよ。危なくなったら私が助けるし、それに尊くんは十分に強い。流石に〈暴竜〉を相手取るにはまだ早い気がするけど、君と君の相棒なら大丈夫。現役のA級の私を信じなさいな」
「尊くんと私なら、きっとどんな冒険でもできるからさ。ここはその冒険譚の序幕なんだよ」
俺に全幅の信頼を寄せる生ける伝説の笑顔が眩しい。
何度も言う様に皆が皆、俺を買い被り過ぎてる。今はまだそんな称賛は似合わないし、実力に沿わない期待も重荷になるだけだ。
今はまだ、俺にはもったいない。そう、今はまだ。
俺はまだまだ〈冒険者〉になりたてのヒヨッコで、ここに潜れたのも冴子さんがいたからだ。
俺一人では絶対にここまで来れなかった。
俺の力はまだまだ弱く、殆どを冴子さんに頼り切っている。
だから、早く強くなりたい。
冴子さんと肩を並べて冒険できる〈冒険者〉に俺はなる。
偉大なる先輩方の称賛に相応しい英雄に俺はなるんだ。
俺はそう決意すると、眼下に広がる第六層を睨み付けた。
第六層"暴竜の巣窟"―――攻略開始。
区切りがいいので短めですがここまでにします。
こらそこ!サボりじゃないよ




