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高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第一章 されど止まりし刻は、再び動く(上)
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六層の不穏な影※リュウグウジョウ概略図あり

今更ながら前話から、第一章の第二部が始まったゾイ


あと、挿絵あります

「長旅でご苦労様でした。長旅でお疲れのところ大変恐縮はありますが何卒ご足労願いたく存じます」

 A(ランク)である冴子さんと、その仲間である俺にまで【ギルド】のお姉さんは恭しく接して腰を折る。


中継基地ポイント支部長が〈夜の明け星(イルミナティ)〉の皆様にお会いしたいと申しております。どうかこちらへ」


 深部の玄関と名高い第五層。それなりの旅路の末に辿り着いた感慨をぶち壊した【ギルド】職員の言葉に、冴子さんは目を細める。


「支部長が私たちにねぇ。…一体何ごと?」


依頼クエストでございます。詳しいことは【ギルド】支部長に直接お聞きください。私も知らされておりません故。【ギルド】支部長は、卿らのご到着を心より待ち望んでいました」


依頼クエストねぇ。こんな出来立てほやほやな冒険隊に、依頼する依頼主なんて普通はいないでしょ。誰が依頼主なの?文科省?それとも…企業?どちらにしよ、あまり信用はできないなぁ」


 【ギルド】職員の言葉に、怪しいの一点張りで取り付く島もない冴子さん。けれど仕方ないと思う。


 政府や企業、研究機関もしくは金持ちが、自身では迷宮遺跡ダンジョンに潜れない代わりに〈冒険者〉に依頼(・・)して、目的の迷宮遺物レリクスの採掘や迷宮生物モンスターの討伐等を代行してもらう制度を依頼クエストという。

 もっぱら政府やら企業やらが契約関係にある〈冒険者〉に出すのが常だが、【ギルド】が斡旋して仲介する以上、依頼クエストは透明性が高いことが求められる。


 それが依頼クエストだと言うのに、詳しい情報や依頼主を開かせぬようでは信用する方が難しい。


「依頼主については【冒険者協会(ギルド)日本総本部】の威信に懸けてクリーンであることを保証いたします。何分、機密に関わること故に私に知らされていないのです。…決して卿らに、不遜にも不利益を働こうなどと下賤な意図はございません」


「…はぁ。面倒ごとの匂いがする。そういうしがらみが嫌だからスポンサー契約結んでないんだけどなぁ」

 冴子さんは困った表情でこちらを見つめてくるが、俺を見つめられても困る。

 俺は首をぶんぶんと横に振りまくった。


「受けるか受けないかはたけるくんと話し合って決めるから。取り敢えず話を聞くだけだから。それでいい?」

「勿論でございます。さあ、ご案内いたします。どうぞ、こちらへ」


「ふぇ?」

 面倒ごとは御免だと、そういう意味も込めて首を横に振りまくったのだが、思い切り巻き込まれて思考が停止してしまう。

 身分が開かせないような方からの依頼クエストなんざA(ランク)冒険者の世界だろうに。




「到着そうそう呼び出してしまって済まない。申し訳なく思ってる」

「全くだよ。到着そうそう面倒ごとを待って来るなんてどういう神経してんだか。今回は〈夜の明け星(イルミナティ)〉の初遠征だというのにさ」

 左目に大きな傷のある厳つい【ギルド】支部長の謝罪に、開口そうそう嫌味を言う冴子さん。そんな二人を俺は、椅子に座り出された茶をすすりながら見ていた。


 品のある応接室に通されたが、まるでVIPになった気分だ。高級そうな木の机に、座り心地の良い革椅子。どれもこれもが高級そうで品があり、よくここまで運んだものだと感心させられる。


「まぁ、そう言わずに話を聞いてくれ。これは緊急性の高い機密の依頼クエストなんだ。依頼主はとある政府筋。最近の卿の報告や〈鮮血の銃皇(ゴア・ガン=カタ)卿〉の評価を参考に、【ギルド】から政府に推薦させてもらった」

 頰を掻きながら支部長は、少々申し訳なさそうに言う。


「アンタらのその強引なやり方が私はいけ好かないんだよ。上層部はなんだっていつもいつもそんなに強引なんだ。勝手に物事を推し進めて勝手に期待するだけして、……手前勝手に過ぎる」

 【ギルド】に対してあまりに辛辣で失礼な物言いだが、支部長は苦笑いを浮かべるだけで否定をしない。


「日本は世界をリードする迷宮遺跡ダンジョン大国だからなぁ。多少、強引なとこがあるのは我々中間管理職としても理解している。…卿が苦手意識を覚えるのも無理はない。その上で、だ。今回の依頼クエストは卿ら〈夜の明け星(イルミナティ)〉にとっても旨味のある物だと俺は思ってる」


「ほう」

 冴子さんが興味を抱いたのか、小さく息を吐いた。そういう俺も興味津々だ。


「卿の単独ソロでの攻略功績に、〈超新星アルヴァノヴァ〉の場合は、〈鮮血の銃皇(ゴア・ガン=カタ)卿〉と卿、A(ランク)両名による称賛。二人という少人数でありながら〈夜の明け星(イルミナティ)〉は、日本の主翼足り得ると政府は期待している。【ギルド】としても卿が汚名を返上して有り余る名誉を獲得すると確信している。今回の依頼クエストを完遂すれば政府とパイプを作れる上に、上層部に貸しが一つ作れる。悪い話じゃないだろ?―それに今回の遠征で、卿らは我々(ギルド)の想定を遥かに上回るペースで、第五層に到達せしめた」


 

 足を組み、支部長は不敵な笑みを浮かべて依頼クエストの詳細を言い放った。

 


「よって今回の依頼クエストを卿らに斡旋することを我々は決定した。依頼詳細は国家戦略に係わる故に伏せさせてもらうが、ある噂(・・・)があり、早急に第六層に行ってもらいたい。第六層で何やら宜しくない噂があり、その噂の真偽を大至急確認する必要がある。噂の詳細は伏せるが、卿らには前線基地ラストキャンプに文書を届けて欲しいんだ」


「ろ、六層に降りるんですか!?俺がッまだD(ランク)なのに」

 支部長の言葉に、俺は思わず食い付いた。【ギルド】中継基地ポイント支部、支部長がそう言ったんだ。それすなわち【ギルド】の総意と言っても過言ではない。


「それだけコイツらの上がたけるくんを評価してるってことだよ。アイツ相手にあそこまで戦えた奴はそうそういないって言ったでしょ。たけるくんは凄いんだよ。それはそうと、確かに美味しい話だね」


 冴子さんが俺を褒めつつ美味しい話だねと言うが、その点に関しては俺も同意しかない。

 俺の〈冒険者〉としての名を売るこの上ないチャンスかも知れない。こんな機会をみすみす逃すなんて勿体なさすぎる。秘密が多すぎるのが少々きな臭いけども。


「お?受けてくれるか」

 好感触な返事を得れて目に見えて明るくなる支部長。机の反対側から上半身を乗り出してまで食い付いてきた。

 だが冴子さんは、そんな支部長を苦笑いを浮かべながら片手で制し、俺を見やる。


「気が早いっての。たけるくんはどうする?私たちの目標である第五層にはもう到達したし、私の最初のプランじゃ境界線まで行く予定ではあったけど。受けて六層に降りる?それとも境界線までで引き返す?」


 冴子さんが俺の目を見つめて質問するが答えは勿論決まっている。当たり前過ぎて聞くまでもない。というか、冴子さんもそんな瞳をして質問するのはやめてほしい。なんというかズルい。


「受けます!絶対に、そんで六層に行くんです!」


「―カッ!そうだよな!やっぱし男は勢いと根性と度胸だもんなぁ!依頼クエスト受理してくれて嬉しく思うぜ」

 支部長がにかっと歯を見せると、俺の肩をばんばん叩いてきた。

 このおっさん地味に力強いから、痛!痛い!痛いから!


 ボルテージが上がってきたのか、支部長は肩を叩く力を強めて、バシバシととても肩を叩いているとは思えない様な音になってきた。


「こら!たけるくんから離れろ!この筋肉バカ!!」


 冴子さんが俺を引っ張り、肩叩き地獄から救出してくれる。


「アンタら、汚いよ。本当に。人の気持ちにまで漬け込んで!貸し二つだから」



――――――――――


とある会話



「よろしかったので?まだ隠していた事実があるのに、それを伝えなくて」

「不必要に警戒心を煽る必要はない。それにどのみち勘付かれてる。流石は、A(ランク)だ。勘が鋭い」

「ですが、やはり。あの件を隠すのは少しばかり」

「気が引けるってか?馬鹿野郎。それこそ無駄な心配って奴だ。A級(現在の伝説)と"未来の伝説"の組み合わせだ。そう簡単な死ぬかよ。【筺】を開けるかもしれない、英雄の卵だぞ?



 それに言わない方がいいに決まってる」





「伝達隊が壊滅した、何て凶報はよ」








挿絵(By みてみん)





 未だ見ること叶わぬ深部の深淵。そこに至るに必要な試練は計り知れない。

 そこに至るための覚悟も計り知れない。

 覚悟があろうとも、決して屈しない不屈の信念があろうとも。


 力の無い者は死ぬだけだった。

リュウグジョウ概略


第一層&二層 草原と古代遺跡


第三層 大嵐の大海


第四層 海底都市 補給基地キャンプあり


第五層 浮遊諸島 中継基地ポイントあり


第六層 〈暴竜ドラゴン〉の巣窟 前線基地ラストキャンプあり


第七層 忘悠の城 前線基地ラストキャンプあり


第八層 常闇の宝物殿


第九層 黄金色の世界


第十層・最終階層 詳細不明 (未到達階層フロンティア



前線基地ラストキャンプは、その役割状二層に跨がっている。

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