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高校を中退したので〈冒険者〉になって、迷宮遺跡《ダンジョン》に挑む  作者: 鬼宮 鬼羅丸
第一章 されど止まりし刻は、再び動く(上)
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海の底に眠りし遺跡

共通テストが終わったので今日から執筆再開です!

 "鼠返しの激流"を無事に越えた者のみ到達できる領域、第四層。そこは第三層とは全く異なる海の世界だった。

 深度的には第三層よりも遥かに深い筈なのだが明るい。海水自体が発光しているのか、澄んだ青色をしている。まるでブルーサファイアの中に入ったみたいだ。

 海水そのものが、もの凄く綺麗で透明度も高く、第四層全体の様子がよく見える。



 海の底にて光り輝く、半透明な膜に覆われた海底都市。


 まるで青空の様に澄み渡る海を悠々自適に泳ぐ迷宮生物モンスターたちの姿。



 第三層が地獄なら、第四層ここはさしずめ―。

「楽園か、な?」


「確かに綺麗だけど、ここはまだ楽園じゃないよ」


「ひぇえ!?」

 いきなり冴子さんの声が聞こえて素っ頓狂な声をあげる俺氏。まさか声が聞こえてくるとは予想できず驚いてしまう。


 この海は澄み渡っていて綺麗だ。海水は限りなく透明で、遠くにある物までよく見える。海流は穏やかで、海の底という点に目を瞑れば楽園だと感じてしまう。


「にししっ。驚いた?〈海神ワダツミ駕籠カゴ〉の力だよ。まぁそれは置いといて。…ここはまだ楽園じゃないよ。―ほら!」

 だが、それは何も俺に限ったことではない。迷宮生物モンスターにとってもこの環境は楽園たりうることを失念していたのだ。

 冴子さんが何かに気付き泳ぎを更に速める。視線を感じたので気配がする方向を見ると、そこには―。


「〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉!!」

 巨大なビーバーの外見をした水棲迷宮生物(モンスター)が、俺たちを追いかけていたのだ。本来、〈妖海狸アーヴァンク〉は川や池、もしくは湖に生息する迷宮生物モンスターで、海水には棲めないのだがリュウグウジョウに生息する種は全ての環境に適応できる。

 生命力も持久力も通常種とは桁違いで、より鋭く硬質化した齧歯は容易く人を切り裂く。体長も3メートルを超え大柄で、気性が荒い四層きっての捕食者でもある。海中での〈妖海狸アーヴァンク〉との遭遇、それは海中で身動きが出来ない生物にとって死を意味していた。


 海流はなく、どこまでも澄み渡る透明な海水。それはただ綺麗なだけでなく、捕食者からも見えやすい絶好の捕食環境なのだ。


「ここじゃ私はあまり戦えない!噛まれない様に注意してて!血を流したら迷宮生物モンスターがうじゃうじゃ寄って来るよ」

 〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉の泳ぎはとても速く、かなりのスピードで進む俺たちにみるみる近付いて来てる。


 このままじゃ都市に辿り着く前に、迷宮生物モンスターの餌だ。


 何か、助かる方法はないのか。


 水中では冴子さんの迷宮遺物レリクスは使えないし、まずそもそも身動きがしずらい。

 〈妖海狸アーヴァンク〉の弱点と言えば大音響だが、【リュウグウ種】には通用しない。

 強いて言うなら見た目通りに皮膚が柔らかいことくらいだけど、それが一体何の役に…。そうか!


「冴子さん。縄、外していいですか!!」


「馬鹿か!たけるくん!死にたいのか!!」

 即答で罵倒が返ってくる。普段ならご褒美ですとはしゃぐが今はそんな余裕がない。


「俺を信じろ!策があります!!!」


「―ッ!…もう!分かった。外していいよ、命を大切にね!」



 速攻で縄を外すと、冴子さんから距離を取った。

 ちらっと〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉の位置を確認しながらリュックの荷を解く。


 水中で思ったより細かい作業がしづらいがやるしかない!クソ!結び目どこだよ!


 ―っと。〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉が俺目掛けて突っ込んで来たので、水を思いきり蹴って体を横にずらした。

 埼玉の河童と呼ばれた俺の泳ぎを舐めるな!

 尻尾を回転させることでスクリューが如き加速を得ている〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉は、俺のすぐ隣を勢いよく通り過ぎると、急旋回し再び俺目掛けて突っ込んで来た。


 それを直前で再び躱す。その間も必死に紐の結び目と格闘をしていたのだが…よし!


 それを構えると俺は〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉目掛けて振りかぶった。

「俺の奢りだぁああああああああああああああ!!!!!」


 ぼんと鈍い音が響き、大量の水が濁流となって前方へと押し出された。急激な奔流には突発的な圧が加えられており、とてつもない濁流が勢いをそのままに俺へと肉薄していた最速の捕食者に襲い掛かかって―〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉は急激な圧力に耐え切れずに命を落とした。


 片やとてつもない加速スピードで膨大な運動エネルギーを秘め、片や水圧を伴う速い濁流。共にかなりの運動エネルギーを有するモノが最高速度で追突したのだ。しかも海水と生き物、質量が異なるモノ同士で。凄まじいまでのエネルギーが、〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉に流れ込み、結果内蔵をずたずたに引き裂き破壊したのだ。

 

 〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉は目が充血して文字通り飛び出して、口や鼻肛門と言った穴という穴から流血して絶命した。要するに海水の塊に最高速度で激突した衝突事故である。


 では何故そうなったのか。


 その答えは俺の右手にあった。


「やっぱりたけるくんは凄いよ!〈衝撃斧ブラストアックス〉を使うなんて考えたね!」


「ふべえッ」

 感極まった冴子さんに激突され呻き声が出てしまう。


 それはともかく〈衝撃斧ブラストアックス〉で、しつこいアイツを討伐したのだ。

 海中で振り回せば取敢えず衝撃派ができるんじゃないかと考え使った。


 衝撃波で獲物を狩るテッポウエビがイメージだったが、まさか、あれほど威力が出るとは…。予想だにしてなかった。


「本当にたけるくんは凄いよ。私なんて、もう水蒸気爆発を覚悟して〈切り開く咆哮(クラウ・ソラス)〉を使うしかないっと思ったもん」


「ひえぇ」

 冴子さんの覚悟を聞いて俺は判断を間違っていなかったと確信した。


「水中でも安定した威力を出せるなんて本当にそれ万能だね。私も欲しいくらいだよ」

「本当にそれは思います。これ、万能すぎる。何で誰もこういう使い方考えつかなかったんだろ」

 〈衝撃斧ブラストアックス〉にどれだけ救われたことだろう。

 今度から寝る時に枕元に置いておこう。最高の相棒だぜ。




「―ッいけない!血に集まってきちゃう。先に急ごう。ゴールはすぐ目の前だよ」


 感傷に浸っている俺を、冴子さんはその一言で現実に引き戻した。


 血の匂いにつられて迷宮生物モンスターが集まって来たら面倒だ。というか既に寄ってきている。

 俺と冴子さんは速やかに泳ぎ始める。


 〈妖海狸アーヴァンク【リュウグウ種】〉から逃げている時は周りに気を配る余裕がなかったので分からなかったが、海底都市は目と鼻の先にあった。



 半透明な膜に覆われた太古の遺跡。

 止むことのない嵐を突き進み、決して戻れない濁流を抜けた先に存在するそれは…とても神秘的でとても美しい。

 まるで夜に虫を呼び寄せる誘蛾灯の様な、怪しげな魅力を放っていた。

ついに明かされた主人公のプロフィール!

たけるは、埼玉出身でした。※高校は違います

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