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7 アリシアの趣味

さて、12歳以降、すっかり地味に影薄く生活しているアリシアの趣味は読書だった。


書庫や図書館に居れば、洗礼前後ですっかり変わってしまった両親や、何でも欲しがる面倒な妹の相手をしなくて済むから気が楽だったのだ。


アリシアは聡い。


「加護」=「金」=「権力」=「アリシア」


その図式を子どもながらに肌で感じ取っていた。


チャールズとの婚約が決まった後も、アリシアとのつながりを持ちたい貴族は後を絶たない。


自分の背後にあるものを見て大人たちは狂う。そんな姿を見るのにうんざりしていた。



「私は、女神様なんて見たこともないし、自分の意志でそれを使うことも出来ないのに。」


アリシアの持つ加護は、精霊の加護に比べ特殊だった。


精霊の加護を持つ者は、教会で人の怪我を治したり、騎士ならば驚くほどの怪力を持っていたり、または炎や水を操ったりなど自分の能力の一部として加護を扱える。わかりやすく目に見える「常人にはないすごい能力」というやつだ。


しかし、アリシアの女神の加護は、そういった類のものではない。


目に見えない。そして結果は出ている。因果関係があるのかないのか良くわからないがあるらしい、という微妙なやつだ。


アリシアは、まるで自分は前に本で読んだ異国の置物のようだと思う。

その置物は、小型動物の手に金貨を持たせた形をしており、飲食店の店内に置くと商売繁盛すると信じられているそうだ。


アリシアは、読んでいた本をぱたんと閉じた。


今は社交シーズンで王都に家族と滞在しているため、アリシアは何も予定が入っていない日の昼間はいつも王立図書館に来ていた。


さすがは国の図書館だけあり、蔵書量が半端ない。


地味な服装で影もすっかり薄くなっているアリシアは、貴族とわかる品の良さはあるものの、特に人の目を引くこともなく読書を満喫できている。本音を言えばくだらない客人など相手にせず毎日でも来たいくらいだ。



ここの図書館は建物の中央に庭があり、そこには樹齢100年ほどの大きな木がある。


良く晴れた日は庭に出て、その木の下でぼーっとするのが好きだった。


今日も良く晴れた気持ちの良い日だったので庭に出ると、木の下には先客がいた。



「あら、マックスさん。ご機嫌よう。今日は何の本を読んでるんですか。」



アリシアが話しかけた先には、ビン底眼鏡をかけボサボサの髪をしたうだつの上がらないオッサンがいた。




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