36 ヴァイオレットの恋8
「待たせたね。みんなお腹が空いてるだろう?」
セオドアが少し汗ばんだ額を腕で拭いながらやってくると、ヴァイオレットはほんのりピンクに色づいた白く華奢な首をぶんぶんと横に振った。
「そんなのっ、全然ですわっ。セオドア兄様は気を使い過ぎですわ。」
セオドアが来た途端、ヴァイオレットは俯き加減に頬を染め、先程のジェームスへのケンカ腰の態度から打って変わって恥じらうおとなしやかな乙女になっている。
ぎこちない手つきでテーブルに並べた本日の昼食は、ヘレフォード家の料理人が腕を振るった数種類のサンドウィッチ。スモークサーモン、ハムとチーズ、仔牛のカツレツ、フルーツのサンド。どれもとっても美味そう。
ちなみにヴァイオレットは、いつか手料理を食べて貰いたいと絶賛練習中だそうだ。ふふっ本当にいじらしくて可愛い。
「3人とも、学園はどうだい?楽しんでるかい?」
セオドアが品の失われない手つきでサンドウィッチを取りながら和かに話す。
「とても楽しいですわ。Sクラスの授業はレベルも質も高くて取り組み甲斐がありますわ。」
セオドアはそれはよかったと穏やかに笑う。
「ジェームスは生徒会にいるんだったね。なかなかに忙しいだろう?」
「まあまあだね。セオドアがいた頃よりマシかもね。」
その会話にヴァイオレットがとても驚いた顔をする。
「セオドア兄様、生徒会にいらしたの?知らなかったわ!」
セオドアは在学時に1年間だけ頼み込まれて書記をやっていたという。数年がかりの学内改革を行なっていた時期だったため毎日遅くまで仕事をしていたと笑いながら話していた。
「ヴァイオレットとアリシア嬢は生徒会には入らないの?忙しいけれどとてもやり甲斐があるよ。」
私は図書委員なのでとアリシアが話す隣で、ヴァイオレットは下を向いてもごもごしている。
「わ、私は、生徒会は・・」
ヴァイオレットが言葉に詰まってると、ジェームスがとんでもないことを言い出した。
「そうなんだ、ヴァイオレットもとてもやる気なんだよ。僕としても是非優秀な人材を入れたいと思ってるし。セオドアも応援してやって欲しい。」
ねえヴァイオレット?とジェームスはそれは甘やかな笑みを浮かべた。
「え・・?」
突然の話にヴァイオレットが口をぱくぱくさせているとセオドアが本当に嬉しそうな顔で笑った。
「そうなんだね。ヴァイオレットなら大丈夫だよ。僕も応援するよ。」




